序章 復讐の始まり
桜が咲き始めた四月始め。今からちょうど一年前に初めて彼女ができた僕は、突然の「別れよう」の一言で夢のようだった毎日は終わりを迎えた。
その時は笑って誤魔化してみたが、家に着いた途端に怒りや悲しみを筆頭に自分でもよくわからない感情が渦巻いていき、気が付くと泣いていた。
大の男が声を出して泣くなんて思ってもみなかった。
みっともないだなんて思わなかったし、そんなことを考える余裕なんてなかった。ただただ悲しくてどうしていいのか分からなくて、考えれば考えるほど彼女の笑顔を傍で見ることができないということが辛かった。
そして、悲しみは怒りへと変わっていき、ついには憎しみになった。
これは僕の、彼女に送る復讐の日記です。
高校生活三年目、春。
うららかな春の日射しを浴びて、気持ちよく学校に通ってくる三年生などいるわけがない。
県内でもトップクラスの進学校であるこの学校で、三年生を目前に控えた春休みを遊び呆ける人間など進学を諦めている人か余程の余裕がある人だけだ。
この学校の三年生は毎月始めに実力確認テストが実施され、その点数によって毎月のクラスが変わる少し特殊な学校だ。もちろんそのクラスによって授業内容が多少異なり、その学力に見合ったことしか教えてもらうことができない。そのため、スタートである四月から成績の良いクラスに入り、できるだけ周りと差をつけたいと思う学生が多いのだ。
僕にとってはどのクラスだろうとやる人間は自分で勝手に勉強して勝手に実力をつけていくものだと思っているため、クラス毎に能力に見合った授業をやったとしても無意味だと思っている。やる人間はなんでもやるし、やらない人間は自分からは何もしない。そういうものだ。
しかし、周りからの視線がある。できるだけ良いクラスに行き、それをステータスにしたいのだろう。まるで、学力だけで人を判断されているようで僕はこのシステムがあまり好まない。いや、つまりは僕の凡庸すぎる頭では常に中ぐらいの成績しか出せず、このシステムの恩恵を授かれてないがための僻みなのだが。
ともあれ、そんな面倒な学力テストを明日に控えている三年生だが、僕はそんなテストよりも別れた彼女のことで頭がいっぱいだった。
時間が経つのは早いもので別れてから一週間は経っていたが、そう易々と忘れられるものでもなく、もはや考えれば考えるだけ怒りが募るばかりであった。
どうやって彼女を不幸にさせてやるか。
しかし、考えてはみても良い案が思いつかない。いじめや変な噂を流すなども考えてみたが、彼女はそもそも通っている学校が違う。そういったことをするのは難しい。つまり、直接手を下すことは現実的な方法ではない。ならば間接的に彼女の信頼を落としていく他ないだろう。その為には、僕と彼女の関係を知っている人たちに僕たちが別れたことを教え、どのような経緯で別れたかを知ってもらう。
僕と彼女の関係を知っている人は多くないが、その中の一人である久坂部さんが運の良いことに今日、僕の隣の席に座っていた。
善かどうかはわからないが、急ぐに越したこともないだろう。早速僕は久坂部さんに話しかけることにした。
「久坂部さん、ちょっと良い?話があるんだけど後で聞いてもらってもいいかな?」
学年随一の悪女で知られている久坂部さんへの相談は、きっと実のある話になってくれるだろう。
僕の新学期のスタートは、彼女への復讐のスタートして幕を切った。
パッと思いついたので書いてみようかな、と。
作者は何故かこういう話の相談を受けることが多くて、いろいろ見聞きしたことをお話しにしてみたら面白いんじゃないかなぁ、なんていう出来心です!
あぁなので、ある意味実話系かもしれませんね。生々しい話も考えているので苦手な人や不快感を感じる人もいるかもですが、ご了承ください><;