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追憶

ラインハルト視点です。

「閣下、お疲れのご様子ですが、大丈夫ですか?」



俺の絶対的な上官であるマサイアス元帥の眠そうな顔を見て、思わず声をかけた。


最近、閣下は多忙であられる。

ザフィーラ国と帝国内の反乱勢力が手を結んだ事による鎮圧作戦、その後にアイギス王国に侵攻した陛下への従軍、侵攻道中のアイギス国王の暗殺に到るまで閣下は全て自ら赴いていらっしゃる。


いくら元帥と言えど、まだ閣下は13歳。俺よりも15も下の、下手をしたら街角で遊んでいてもおかしくない年なのに、閣下は元帥という軍の最上位に君臨している。




俺が軍に入隊したのは15歳の頃。入隊した頃は、前皇帝の圧政が国内を蝕み、民が軍の隊員を見る視線が厳しく、恐怖に満ち満ちていた。

そんな時期に入隊した俺は、自分の力に思い上がった若造にすぎなかった。新兵だった俺は、上官の命令に絶対服従、現場では自分の力を誇示し、結果、俺は同期兵の中でも出世は早く、いつの間にか少佐へと昇格していた。


俺が出世したのと同時に、軍の中で密かに囁かれている噂があった。

なんでも、軍内発のクーデターが行われるかもしれないという物騒極まりない噂話だった。


俺の当時、直属の上官だった准将から秘密裏に噂の検証をするようにと直命された。一体どこからクーデターなどという不穏な噂が出たのか…。検証を進めるに従って俺を混乱に陥らせたのは、全く掴み所の無い話の連続だった。

軍ではなく大臣家の連名で皇帝を廃し、自分達で国を治めて行こうとしているとか、クーデターではなく革命が起きようとしているとか。果ては、皇太子殿下が暗殺者を使って、皇帝を亡き者にしようとしていると言った噂まであった。



全く事実がわからない。



結局、噂の域を出ず、心配をするような事ではないという報告をした。

だがしかし、皇太子殿下の噂に関しては皇帝の耳に入ったらしく、激しい審問が行われた。皇太子は事実無根だと言い張ったが、疑心暗鬼になった皇帝は周囲の反対の声も押し切って、処刑の勅命を下し、皇太子は牢に繋がれた。


その一報を聞いたアレクサンドロ王子は、周りの人間が見ていられないぐらいの哀しみ様だった。


元々兄弟仲が良く、皇太子はアレクサンドロ王子を良く可愛がり、王子は皇太子を慕っていた。

そんな王子が、兄の皇太子が処刑されるという一報を受けたのだ。王子の哀しみようは酷く、周りの人間を寄せ付けず、レイエス家の三男坊であるルーカスという女のような子供しか側にいられないような状態だった。



俺は、そんな王子の様子を伺ってこいと言われて登城し、女官に王子のいらっしゃるという場所を聞き、王宮の庭に赴いた。その時、子供特有の声が聞こえた。



「兄様、明日処刑かー。意外にあっさり決着ついたよねー。」


「お前の父親は馬鹿なのか?愚かなのか?」


「どっちもー!更に言えば阿呆ー!」



思わず俺は耳を疑った。この声は…。


きゃらきゃらと笑い声が聞こえたそこにいたのは、アレクサンドロ王子とレイエス家の子供…

そして、王子より小さい長い黒髪の子供…。そこまで見ていた時に、その黒髪の子供が俺に気付いた。


こちらを見ていたのは、珍しい深紅の瞳。



「…アレックス、知らない人間がこっちを見てる。」


「えー?誰?ここに入れる人間っていないはずなんだけどー。」


「他人がいるなんて鬱陶しい。アレックス、どうする?」


「うーん…あ、クリス。殺すのはちょっと待って。」


そこまで言われて、クリスと呼ばれた黒髪の子供から、間違えようのない静かな殺気が漂っていたのに気付いた。

何の感情も感じられない紅い瞳。表情は全くない。

幼いはずなのに、その無表情、無感情のせいで、やけに老成している感がある。


蛇に睨まれた蛙状態の俺は、その紅い目に見つめられ、冷や汗と身体の震えが止まらなかった。軍に所属していても、今まで感じたことが無かった死への恐怖だった。



「ねぇ、君誰?その格好見る限り軍人なのはわかるんだけど、名前は?」



王子に問いかけられるが、恐怖から口を開くことが出来ない。それに気付いたルーカス様は、クリスという俺を殺気で捕らえている子供に近づいて、話しかけた。


「クリス、殺気を解け。話出来ないだろ。」


「そうそう。話聞いたら殺させてあげるから、少しだけ待ってね、クリス。」


「わかった。」



そう言うと、俺を拘束していた殺気が解かれた。その瞬間、俺は膝を着いて荒い呼吸を繰り返し、汗を滝のように流していた。

何なんだ一体…。そう思うが、思考が身体と付いていかず、気が付くと目の前にアレクサンドロ王子が立っていた。



「ねぇ、名前は?って聞いてるんだけどー。」


「ら…ラインハルトと申します…王子…。」


「ラインハルト、何?」


「え?」


「だからー、ファミリーネームだよ。下の名前!」


「あ…ミカエリスです…ラインハルト・ミカエリス。」


しまった、と思った時にはもう遅かった。いつもは偽名を使っているのに、口が滑った。


「ふぅん。ね、ルーカス知ってる?」


そこでルーカスと呼ばれたレイエス家のお子を見やると、椅子に優雅に腰掛けていた彼は、黒髪の子を膝に抱え頭を撫でながら、美しい顔をほころばしていた。



「ミカエリス将軍家の長男だろう。知ってる。だが、軍に入隊していたのは知らなかった。確か、先代の事件で没落寸前だと言う話だな。せっかく指折りの軍人揃いの一族だったのに、あの事件で一気に失脚だ。ま、仕方ないがな。」



「へーぇ。ミカエリス将軍か。聞いたことあるかも…。うーん…確かアルナージ村事件だよね?ねぇ?ラインハルト?」


ぎりっと歯軋りをして目の前の人物を睨み付けた。当の本人は、全く意にかえさない風だ。



「あれは…っ!父は止めたんだ!それなのに、あのクソ野郎は父をたばかって軍法会議にかけたんだ!あの誇り高い父が、虐殺だなんてそんな事、するはずがない!!」




俺が入隊する2年前、将軍である父がアルナージ村における虐殺行為で、軍法会議にかけられた。


アルナージ村はルグレス帝国の左端にある人口100人にも満たない、小さな村だった。

だが今現在は存在しない。その村は滅んだから。



反乱軍の掃討作戦中だった父の部隊は、吹雪による悪天候の為道に迷った。その時、近くにあったのがアルナージ村だった。

地方とは言え、ミカエリス将軍の名は浸透していて、厚く迎えられたらしい。吹雪が止むまでの間、少しだけ世話になることになった。


だがそこで、父の部下だった男が問題を起こす。

村長の若い娘を数人で襲ったのだ。


それを知った村長と父は、すぐさま駆けつけたのだが時既に遅し。彼女は無惨にも犯され、しかも首に紐を巻かれて息絶えていた。

悲惨な光景に村長の悲鳴が重なる。それを聞いて我に返った父は、すぐさま彼等を捕らえようとした。しかし、多勢に無勢、逆に父が拘束された。

彼等は村長を刃物で脅し、村人を村の中心に集めさせた。


そこで行われたのはまさに、地獄絵図の光景。

血に酔った若い兵は、笑い声を上げて村人を殺傷し、また違う若い兵は女を暴行、また違う兵は家屋に押し入り金品を略奪していた。


長く続いた悲鳴が止み、それと同じく雪も止んだ。

それから数時間後、父は合流した部隊に発見され、同時にアルナージ村は消滅した。



ヴィネガントに戻った父は、それから暫くして逮捕された。父の罪状は『虐殺行為及び、略取婦女暴行、それを煽動容認した罪』だった。


全くの濡れ衣であった。だが証言をしたのは、当時父の部下だった男。

将軍である父に逆らえず、虐殺行為を行ったと。


疑われぬように、他の部隊が来る前に、自分を拘束するように命令されたとも証言した。



結局反論は全く受け入れられず、結局父は軍から追放され、虐殺行為の罪で処刑された。

それから、帝国におけるミカエリス将軍家の名前は地に墜ちた。

俺の母は、心労から身体を病み、幼い俺や妹達を残し亡くなった。子供だけではどうすることも出来ないため、遠縁の親類に引き取られたが、そこでは殴られ蹴られ邪険にされた。

俺はまだいい。妹達に手を出されるような事はあってはならないと、必死に庇うと、更に酷い折檻が待っていた。


痛みと餓えに耐える毎日。ある日、空腹で目が覚めた。すると、隣で寝ているはずの妹達がいなかった。嫌な予感がして、急いで起きて探しに出かけた。結局朝になっても見つからず、呆然としているところに、俺達を引き取った叔父が現れた。


「お前はもう出て行け。」


「待ってください!俺はいいです。でも妹達は…」


「あぁ、あの子達は娼館に売り払った。年も若いし、顔も悪くなかったしな。結構高値で売れたぞ。」


下品な笑い声を響かせながら、男は俺を屋敷から追い出した。

追い出された俺は、妹達を必死になって探した。見つけ出した妹は、既に店に出され客を取らされていた。なんとか連れ出そうとして、店の大人に見つかり、その都度殴られた。

結局、妹のうちの一人はそのまま病気にかかり死んだ。幸いな事に、もう一人の妹は父の無実を信じていた田舎の商家に引き取られた。俺も一緒に来ないかと言われたが、父の無実を晴らしたいと軍に入る事を理由に断った。


入隊するということは、軍から追放された父が持つミカエリスの名前は使えない。そのために名前を変えた。両親から貰った名前を捨てるのは忍びなかったが、俺には父の無実を証明するという目的がある。その事を母の墓前に報告し、そのまま軍の門をくぐった。


嫌な命令にも背かず、チャンスがあればモノにする。そうして、虎視眈々と出世していく中で、俺は父を処刑に追いやった男を見つけ出した。

その男は軍から除隊される事もなく、あろう事か俺の上官になった准将だった。何故事件に関わったこの男が准将にまで昇進したのか。探ってみると、この男の後ろには元帥がいるらしい。


そういえば、父と元帥は仲が良くなかった。当時のその元帥は、皇帝に取り入ってその地位を得たと陰では言われていた。それを良しとしなかった父は、声高に批判していなかったか…。



点だった疑問が全て一本の線で繋がれた。



父は元帥に嵌められたのだ。そのために、准将を使って父を(おとしい)れた。

俺の復讐心は煮えたぎっていたが、所詮は少佐、まだまだ立場は弱い。鬱々とした日々を送っているときに、俺はアレクサンドロ王子に出逢い、全てを話していた。




「へーぇ…あの元帥がねぇ。まぁ確かに、あのオジさんは元帥の割に軍の事知らなすぎるよね。あれじゃあ有事の時、いち早く逃げ出しちゃうよねー。」


「ミカエリス将軍は敵が多かったはずではないのに、あっさりと処刑された理由はそれか。確かその准将は元帥の甥ではなかったか。」


俺の知らなかった情報までサラリと言った子供を凝視する。そういえば、レイエス家の中で神童と呼ばれている子がいなかったか。まさか、この子がそうなのか。


「ふーん…。ねぇ、ラインハルト。そいつらに復讐したい?」


「勿論!!あいつらは俺達家族とミカエリス将軍家の名前を汚した!!決して赦しはしない!!」



俺の慟哭。そう、赦しはしない。それだけで生きてきた。どんなに殴られても、どんなに辛くても、俺にあるのはあいつらへの復讐心。


あいつらを俺のこの手で殺してやる。



「じゃあ、僕らの言うことよぉく聞いて。君に復讐の機会をあげる。」



皆に天使と称されるアレクサンドロ王子の笑顔は何故か、背筋が凍る悪魔のような気味の悪い笑みだった。



それから暫くして、軍事クーデターが発生した。

俺が調べた時はそんな気配も微塵も無かったのに、統制の取れた軍内部の行動は決して短い間で組まれたものではなかった。明らかに、隠されていた今回のクーデター。


先頭に立ったのは事もあろうに、今や第一継承者となったアレクサンドロ王子。隣には、ルーカス様とクリスと呼ばれていた子供。

俺は、クーデターが起きた際、この三人の護衛を務めていた。といっても、ほぼ役目らしい役目はなかった。呆気ないほど簡単にクーデターが成功したのである。



「さぁってー。父上は投獄したしー、残りの小うるさい人達も皆死んだしー。これから、ルーカスとクリスは忙しくなるねぇ。」


「?王子…いや、皇帝陛下。どういう意味でございますか?」


「んー?それは内緒。あ、ラインハルト、君の復讐だけど、もう少し待ってくれる?これで一気に片が付くからねー。」


ニコニコと笑う陛下の顔をただ見ていると、ルーカス様とクリスが、宰相と元帥、それに下官を何人か連れて部屋の中に入ってきた。


「陛下、この度はお喜び申し上げます。」


「我ら軍としても、この様な形であの愚王を玉座から降ろすことになりました事、誠に遺憾ではありますが、新しいアレクサンドロ皇帝陛下に置かれましては…」


「あぁ、そんな思ってもいない口上いらないから。それより、君ら二人を宰相と元帥から罷免する。」


俺は驚き、思わず陛下を振り返って見た。陛下はというと、別に悪びれることもなく平然としていた。罷免された面々を見てみると、明らかに顔色が変わっている。


「何を仰います、陛下…。我らを罷免して、新たに誰を宰相と元帥に任命すると?」


「宰相はルーカス、元帥はクリス。これは決定。異論は許さない。さて、クリス、この二人を牢に入れてきて。あ、ラインハルトも一緒に行って。」


「わかりました。」


クリスはそれだけ言い、素早く宰相と元帥の動きを封じ、牢へと繋がる地下道へと歩を進めていた。


「クソガキ!離せ、このっ!」


「アレクサンドロは何のつもりなんだ!わし等を罷免なんぞして、このガキが元帥!?ふざけるな!」


聞くに耐えない罵詈雑言がクリスに浴びせられているが、それを庇うほど俺にも余裕が無かった。目の前には、憎き俺の敵。剣を握る手に力が入る。

このまま…。


その時、赤い瞳が俺を見た。


「ラインハルト、待て。まだ早い。」


「どういう意味だ。まだ早いって何だ!」


「お前の気持ちは知ってる。だからもう少し待てと言っている。陛下もそう申していただろう。」


「煩い、黙れ!!」


そう言って、俺は元帥に切りかかった。


はずだった。だが刃の切っ先はおろか、剣は柄から抜かれることすらなかった。

クリスが、俺の喉元に素早く一撃を浴びせ呼吸を奪い、そのまま俺の剣を奪っていた。

激しく咽せ、呼吸をしようと喘いでいると、元帥は俺の正体に気付いた。


「お前…ミカエリスの(せがれ)か。死んだと思っていたが、まさか軍にいたとは。しかも少佐!ははっ!お前の父親は嘆くであろうなぁ!!」


その言葉に驚いたのは、宰相もだった。


「ミカエリス将軍の?子供達は既に死んだと報告を受けていたぞ。それがなぜここにいる?」



…どういう事だ?すぐ下の妹は死んだが、もう一人の妹は生きているし、俺も死んではいない。誰が報告をしたんだ?

そう考えていると、クリスが口を開いた。



「ミカエリス将軍に関することは、アルナージ村事件の件も含めて既に陛下が検証済みだ。それから、ミカエリス将軍家の子供達が全て死んだと報告したのは、私の手の者だ。」


「なんだと!?」


「そんなバカな!!あの事件に関することは、既に全て抹消されたはず!それを一体どうやって検証したと言うんだ!!お前いい加減な事を言うな!!」


そう。記録は全て抹消されていた。俺が調べようと思ったのに、裁判記録はおろか、当時関わった人物全てがあの裁判が終わった直後に不審な死を遂げて、誰にも話を聞くことも出来なかった。

ただ一人残ったのは、証言をした男だけ。それでは調べる事も出来ずに、ただ歯がゆい思いを抱えていたのが現実だった。


「レイエスが全ての裁判記録と証言、及び事件前後のミカエリス将軍の行動全部を含めて、総合的に判断した。裁判記録は見つけたぞ。と言っても、レイエスでなければ判別出来ないほどの念の込めようだったがな。」


「なんだと…っ。」


「愚かにも程がある、宰相。いや、元宰相か。自分の屋敷に裁判記録を隠すとは。」


「なっ…!?何故それを知っている!!」



感情が全く感じられない赤い瞳を見ながら、俺はそのやり取りを黙って見ていた。

まさかとは思ったが、宰相も絡んでいたとは…。父はこいつらに太刀打ち出来るわけがなかったのだ。最初から父を陥れようとしていたのだから。

元帥、宰相が話した内容は俺を混乱の極地へと陥らせた。



父は宰相の娘が、皇太子へと嫁がせる事への反対をしていた。既にナバレル皇帝は政務を放棄して長く、宰相が権力を掌握していた当時、ますます宰相の力が強くなることを案じた為だ。

それを忌々しく思った宰相は、元帥と画策し、あの事件を起こさせ父を失脚させた。



それが全ての真相だった。



「お前達は処刑される。処刑日は明後日。公開だ。」


ではな。と言い残し、長い黒髪を翻したクリスは、俺を伴い、そのまま牢を出て行った。


呆然とクリスの後をついて行った俺は、執務室へ向かう長い廊下の途中で崩れ落ちた。

父が処刑され、母が死に、妹までも死んだ時にも流されなかった涙が、堰を切ったように溢れてきた。


それをクリスはただ黙って見ていた。


大分経って俺が落ち着くと、側にはクリスが座ってこちらを見ていた。


「もう平気か。」


「あぁ、大丈夫だ。悪い、陛下の所に行くのが遅くなるな。俺を置いて先に行っても良かったんだが。」


少々バツの悪い思いをして、目の前の子供を見た。不思議な子供だと思う。

俺より小さな、陛下よりも小さい人形のような整った顔をしている子供が、俺の行動を縛する程の殺気を放ったばかりか、呼吸を奪う一撃を入れたのだ。どう考えても、普通の子供ではない。そういえば、クリスの事は名前しか知らない事に今更ながら気付いた。


「そういえば、お前名前なんて言うんだ?今まで陛下やルーカス様の呼び方を聞いて、俺もそのまま使っていたが、ちゃんと名前聞いておかないとな。」


無表情なまま首を傾げたクリスの、長い黒髪が顔にかかった。それを指で払ってやる。嫌がる素振りを見せずに、黙ってされるがままだ。調子に乗ってそのまま髪を梳き、頭を撫でた。

見た目通り、サラサラで絹糸のような艶やかさだ。



「クリスティン。クリスティン・マサイアス。」



思わず手が止まった。




長くなったので、分けます。

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