生きた伝説―前編―
ウェス…ブリッグハウス将軍視点です。
「おい、ブリッグハウス将軍だぜ…」
「あぁ、本当にいたんだな…」
遠巻きに言われるこの台詞も大概聞き飽きた。そして、その後に続く言葉もわかっている。
「生きた伝説…か」
「どうした、やけに浮かない顔をしている」
「閣下」
いつの間にか隣に立っていたのはルグレスの元帥閣下だ。将軍職に就いている俺ですら気配がなかなか読めないところを見ると、他のやつらは全くわからないだろう。
長い黒髪に赤い目。それだけでも目立つ容姿なのに、人形のように白い顔には表情が全く無い。身体もまだまだ発展途上のくせに、人を殺すことには異常に長けている。それもそのはず、俺の『生きた伝説』という馬鹿げた二つ名を凌駕するほどの家名を持っているのだから。
「マサイアス閣下、こんなところで何を?」
「暇だから手合いに来た。丁度いい、相手をしてくれないか。他の奴らは私の相手にならない」
「…陛下から許可は得てますか?」
「取っていないが、まぁいいだろう」
無表情に言い切った子供…もとい元帥の言葉を反芻する。つまりは、天使の様なアレクサンドロ陛下に無許可で俺と手合いをするという事か。陛下の閣下に対する執着を知っているからこそ、断りたい。しかし、さっさと鍛錬場に出てしまった以上は誰かが相手をしなければならない。あいにく、いつもくっ付いているミカエリスがいない。となると、やはりここは俺が相手をしなければならないのか。
後で呼び出されて、陛下にネチネチ嫌味言われるんだろうか。多分…十中八九、その場には、あの女顔の宰相もいるはずだ。内密に提出を要求される始末書程度ですめばいいのだが。
いつもは皆の鍛錬を見ているだけの元帥自身が鍛錬場に上がっている事を聞きつけた軍人が俄かに集まりだし、あまり広いと言えない場内を熱気と言う名の興奮が包んだ。こんな風に熱気が包むと言うのも、案外悪くはないのかもしれない。とは言え、それが元帥と俺の手合いというのが気に食わないが。
「準備は出来たか?」
「ふー…閣下、一応手加減はしてくださいよ。いくら問題が解決した直後だとは言え、何が起こるかわからないですからね」
「善処する。と言っても、お前は私に手加減はするなよ。もしも手を抜いたら、私は全力を出す」
「…怖いですねぇ。じゃ、行きますよっ!!」
『生きた伝説』
俺がそう言う風に呼ばれるのには理由がある。
と言っても、それが格好いいかと言えばそうでもない。
いつしかその二つ名だけが一人歩きし、『ブリッグハウス将軍』は『生きた伝説』とくっ付いているのが常になった。
ウェストン・カールリッジ・ブリッグハウス
俺はルグレス帝国の中でも力のあるブリッグハウス家の四男として生まれた。
家は伯爵位を持っていて、皇帝の覚えも良く、帝国内にも莫大な財産を持つ有力貴族の一柱だった。三人の兄と、二人の姉に囲まれた俺は、早くから家の貴族然とした態度と考え方に共感できずに、幼い頃より市井の子供達と遊んでいた。当然、それを良く思わなかった両親や兄姉達に事ある毎に叱責を受けたが、俺には何故叱られているのか全く理解出来なかった。
汚いから、貧しいから、卑しいから。お前とは住む世界が違うんだ。
そんな事を言われても、俺と一緒に遊んでいる子達は俺を仲間にしてくれるし、住む世界が違うとも言ってこない。むしろ、そんな事を言っているからいつまでも同じ所で停滞しているのだとしか思えなかった。
いつも遊んでいたおかげで、勉強は全くやらなかったと言っても過言ではない。とは言え、出来が悪いかと言われればそうでも無い。教えに来る家庭教師のひけらかし顔がどうにも好きになれずに、頻繁にフケては父にばれて、大目玉を食らうのが常だった。
ただ、戦史や軍略関係の勉強は好きだった。数学や理系の勉強も進んでやりはしなかったが、特に苦ではなかった。ただやはり貴族が習う素養や、貴族感だけは理解し難く、最後には全く手をつけなかった。
いつしか俺はブリッグハウス家の落ちこぼれと呼ばれるようになった。有力貴族であるブリッグハウスの名を掲げるのを恥ずかしいと言い切った父により、何も知らないまま、俺は最も最下層の軍に入隊されていた。
ナバレル皇帝が帝位に就いていた頃、軍の立場は非常に悪く、皇帝が無茶を要求するために実際に虐げる側の軍人は民に恨まれ、常に肩身の狭い思いをしていた。それでも貴族連中や皇帝の要求は留まる事がなかった。
国と民の板挟みになった軍人が次々と辞めて行く状況を見かねた当時の元帥以下幕僚達は、嫌な仕事を新人等の下っ端に押し付け、更にはその辞表すらも受け取ってもらえないと言う有り様だった。
―軍人になんかなるもんじゃない――
それが俺が入隊した頃、国中で当たり前のように言われていた。
有力貴族である為、そんな状態を知っているはずの父が俺を軍に放り込み、それから一切の繋がりを絶った。
なる程、出来損ないの四男坊を厄介払いするのに軍は最適だったと思う。一応は軍所属と言う事でブリッグハウス家のメンツは保たれるし、どこで死んでも国で埋葬してくれる。最悪、戦争で死んだとしても、国からは伯爵家にとってはした金だが、幾らかの金が出る。
俺が死んでも、損はしない。父親の判断は偉く冴えていたと思う。
ただ、俺は生半可にガキの時分、街で遊んでいたわけじゃない。ブリッグハウス家の出来損ないは出来損ないだが、街の中ではガキ大将と言ってもいい位には強かった。また、家中では俺が一番デカく、剣術では三人の兄達を差し置いて俺が一番強かった。
その頃実は、遊んでいる時に街で出会った剣聖と呼ばれた人に手解きを受けていた。後に師匠と仰ぐ事になるその人の剣は、例えるならば水の様に姿を変えるものだった。
強く、しなやかで、それでいて他を圧倒する力を持っていた師匠に憧れて、がむしゃらに師匠を相手に剣を振った。
それのおかげかもしれない。軍に入隊してからは、いくら扱きのような訓練があっても、周りが脱落する中、へこたれずにずっと付いて行く事が出来た。
軍の中で、ブリッグハウス家の者だと言う事は全く考慮されない。むしろそれで良いと思っていた。
父が俺を出来損ないと呼びたいのならそうすればいい。軍では皆が平等に俺を見てくれる。ただのウェスとして扱ってくれる。それでいい。
昇進試験の類もあることはあったが、俺はそれを受けずにいた。昇進試験だなんて言うと崇高なものに聞こえるが、当時はコネが日常茶飯事だったし、コネが無い下っ端でも試験官や上官連中に賄賂を贈れば自動的に取り上げられる仕組みになっていて、実際俺や他の実地に出ている奴らより遥かに実践経験の無い者がスイスイと少佐や中佐になって行く。
別にそれで問題が無いのならば、俺も関知しない。威張り腐った奴らと言うのは、俺が嫌う貴族連中とどこか酷似している。人を人と思わないような見下した目を持っている。
だから俺や仲間の何人かで鍛錬と称して、如何にも使えない口だけが異様に達者な上官を引っ張り出すと、案の定何も出来ぬまま腰を抜かし、あげくに自分で躓いて怪我をした。そこまでは良かった。そこまでは。
「ブリッグハウス以下、アタマ自治区の盗賊団一掃作戦に参加するように」
アタマ自治区。
あそこは昔から帝国に組み込まれた事を良しとしない地域で、未だに帝国の法令が届かずに、自治区扱いになって長くもっぱら反乱軍のアジトと称されている。また、アタマ自治区には窃盗と残虐行為を厭わない非道な盗賊団の存在も確認されている。確実に帝国内でも最も治安が悪いその地区は、帝国内でも問題視されていて、いくら軍と言えどおいそれと手出しが出せない地区だった。
まぁ、そこに行けと言う事は要するに、俺達に死んでこいと言っているようなものだ。
「面白い。盗賊団を残らず捕まえて帰って来たら、俺を将軍にしてくれるか?」
俺がそう言うと、馬鹿にしたように笑いこけた幕僚の幹部達は、必ずやしてやろうと言う言質を取った。
それで俺はやってやろうじゃないかとニヤリと笑い、仲間達と共に軍宿舎を後にした。
噂に違わず、アタマ自治区の治安は桁外れに悪かった。街には女子供の姿は無いし、人相や風体の悪いゴロツキ共が胡乱気な目で俺達帝国軍の軍服を見ている。
全く人気のない街なのに、どこか狂ったような覇気がある。それをゾッと思う気持ちなんぞ、とうの昔に無くしていた。
この時の俺は、ある種箍が外れたような気分だった。破れかぶれでもない、何というか…ここで死んでもいいし、生きて帰ったとしても将軍職が待っている。今考えれば、アタマ自治区の狂った空気に当てられていたとしか思えないのだが、若気の至りというやつだと言われれば、そうだとしか答えようがない。
突入時は、無鉄砲にも敵地に一人で突っ込み、敵を一人残らず殲滅させ、戦略を練って行動しなければいけない時には、ネズミ一匹逃がさないような完全な包囲網を敷いた。
盗賊団との一進一退の攻防が続く中、それでもジリジリとだが先が見えてきた。たがそんな矢先に、何も知らない、わからない帝都からやってきたクソ野郎が、俺達を統括する上官になった。
地位だけが無駄に高いその男が、軍幹部からの回し者である事は容易に判断出来た。それまで笑っていた幹部連中が、困難だと思っていたアタマ自治区の盗賊団征伐があまりの順調に行っている事に焦ったのだろう。なんと言っても、保身だけを考えているような連中だ。机上の戦略は出来ても、実際の現場の状況は知らない。このまま盗賊団が一掃され、俺が生きて帰ったら将軍職をやらなければならない。それを危惧したのであろう事はバカでもわかった。
面白みが無い奴らが上にいると、本当につまらない。
新しく来た上官の男は、無能の一言に尽きた。
不適格な指示、無謀としか思えない突入のタイミング、その場を弁えない無責任な言動。様々な失態を繰り返した上官は、威張りくさる事『だけ』は優秀だった。
下っ端を完全に見下し、なまじ俺はブリッグハウス家出身だと言うことで因縁を付けられるだけ付けられた。別に俺はブリッグハウス家の出身だからと言っても、既に父親から絶縁を言い渡されているし、何を言われても平気だったのだが、頭の弱い上官は事ある毎にいちゃもんを付けて回った。
そのしつこさに、とうとう腹に据えかねた俺の同期の男がその上官を殴った。驚いたと言うもんじゃない。何故気にしていなかった俺ではなく、こいつが殴るのだと。
俺が唖然としていると、今まで激戦を共にしてきた連中までもが、管轄長をたこ殴りにしていたので、我に返って俺は慌てて止めた。
ボコボコにされた上官はボロボロになりながらも、怒りが収まらなかったのだろう。最凶だと言われ、今まで手が出せなかった最重要拠点に俺と、上官をボコった連中が行かされる事になった。
「お前ら、何でそこまで?」
「当たり前だろ!今までずっと泥水すすってきた俺らがお前を擁護してやらなくて、誰がお前を擁護すんだよ!!」
「そうだ、お前は伯爵家の人間だからと言っても、ほとんど俺達と生死を共にしてんだよ。だから、実家の親兄弟より俺達の方がお前を知ってるんだぜ?」
「おいおい、気持ちわりぃ事言ってんじゃねぇよ!いいか、ウェス。お前はブリッグハウス伯爵家の人間じゃねぇ。ウェスって言う、俺達と同じ軍人なんだよ。それに、お前の戦略眼は確かだ。これから行く拠点を落とせばお前は将軍だ。間違ってもこんな下らねぇ事でグチグチ言うんじゃねえぞ」
「くぁー!!くぁーっこいぃー!!」
「うるせーぞ!!おい、ウェス、わかったら返事!!」
仲間達の熱い言葉が胸に染みた。今までこんな風に言ってくれた奴らはいなかった。伯爵家の末っ子で、子供の頃は貴族の子息達と上辺だけの会話をし、下町に遊びに行けば、伯爵家の人間だとどこか一線を引かれていた。
軍に入った時も、破れかぶれの気持ちと、どこか苛立った気持ちを持って任務に当たった。それが結果として成果を上げているのは否定しないが、相変わらず冷めた気持ちがあるのもまた、事実だった。
仲間達との付き合いは可もなく不可も無く。それなのに、こんな自分を見ていてくれた連中がこんなにもいた事に感激すると共に、今まで無碍にしてきた本気の気持ちを伝えていなかった事に辟易する。
だからこんなにも熱い言葉を貰った今、目頭が熱く感じるのかもしれない。それを目敏い奴らに見せるつもりはないが、今まで第一線をくぐり抜けて来た猛者揃いだ。バレているだろうが、それでも冷やかす者は誰もいない。
こんな奴らを、今ここで失うわけにはいかない。最凶であり、最重要拠点だと理解しているからこそ、甘い気持ちで突入したら生きて帰っては来れない。
一分の隙もなく、完璧に。
ネズミどころか、空気すら漏らさぬ程の綿密さで戦略を立てなければ。
豪快に笑いながらも、死地に赴こうとしている奴らの目には、生への諦めと言う物がない。だからこそ、俺も笑う。
全員無事に帰ってくる。
ニヤリと笑った俺を見て、連中は不敵に笑んだ。
決行は月の無い深夜。
一気に方を付けなければ、人数で劣る俺達に勝機はない。
黒尽くめの服を着込み、手で合図をして、音も立てずに潜入していく。
見張りの首をかき切り一瞬で仕留め、拠点の内部へと侵入していくと、金品を抱えた驚く程の人数がそこにいたが、全員が酩酊状態であるか、薬物でラリっているかだった。
出口を完全に封鎖し、入り口に近い奴らから躊躇なく排除していく。なまじ今まで死地をくぐり抜けた奴らばかりだ。腕の方も確かなのばかりが揃っている。たまに手強い奴がいても、躊躇いと容赦を無くした俺には、全くの雑魚だと言っても過言ではない。
怒声と剣と剣が弾き合う音、死に往く人々の断末魔だけが部屋中を席巻する中、ただひたすら前だけを見据え続けていた。
盗賊団の重要人物だと思しき奴らを生かしておかねばならないので、それはそれで面倒だったが、それでも俺達には一人の死者も出ずに捕縛は成功した。
息を切らした面々が捕縛した男共に近付くと、強引に立たせて拠点を後にする。
俺達の様子を離れた場所から監視していた部隊が突入し、そいつらを引き渡すとようやく一息が付けるようになった。
しばらく独りにしてくれと頼むと、気を抜くなよと忠告した何人かが入り口に残って俺の様子を垣間見ていた。
累々と死体が転がっている部屋を、ただ目の中に見るとも無しに映す。
特に感慨は沸いてこない。
自分達が奪った命と、血塗られた手。後悔はしていない。誰一人欠ける事無く、この拠点を落としたと言う実感も無い。
一種の達成感に伴う喪失感。
多分その言葉が正しいのだと思う。虚無感まではいかないものの、何かぽっかりとした穴がどこかにあることを漠然とだが感じていた。
ただ黙って部屋の中央に佇んでいると、キィンと言う寒気のような殺気を感じた。
「ほぅ…なかなかやるもんだな…」
自分の背後から聞こえた声に全身が総毛立った。瞬時に反応した俺は、躊躇う事無く、声のした方向に剣を向けた。
「おや、まだまだ青臭いなぁ。僕ちゃんや…」
くつくつと笑う木霊のような声はするものの、一向に声の主が見えない。油断する事無く周囲に気配を張り巡らせると、吹き抜けになっていた天井のシャンデリアに独りの男が腰掛けていた。
「おっ、ようやく気が付いたか。ここが落ちたと聞いたで、急いで見に来てみれば…お主等だけで落とすとは大したものだな」
「貴様…何者だ!!」
「ほうほう、威勢のいい若者は好きだ。うちの孫の婿に是非とも欲しいのぅ」
そう言うと、高いシャンデリアからふわりと音も立てずに着地した男は、肩に長剣を担ぎ、如何にも場慣れしていそうな雰囲気を醸し出していた。
「ワシの名前はクリストファー。主の名前はウェストン・ブリッグハウスだろう?」
「………」
「そう睨むな。別に何もせんて。しかし、ここを落としたとなれば、アタマ自治区に跋扈していた盗賊団は一掃されたなぁ。と言うことは、僕ちゃんは帝都に帰れば将軍か」
ぎょっとして思わずクリストファーを睨むが、一向に気にしている様子はない。そればかりか、入り口で隙無く構える奴らに飄々と手まで振っている。
「今の皇帝に仕えるのは、お前にとっては残念かもな。それよりだったら、次代の坊やに忠誠を誓った方が良かろう。これはワシの忠告だ。大人しく聞いておけよ、僕ちゃん」
「誰が僕ちゃんだ!!」
「まぁまぁ、そんなに短気になるな。…しかし本気でうちの孫はどうだ?まだ赤子だが大した器量になると思うのだが…」
「遠慮する」
「それは残念だな」
なおもくつくつと笑うクリストファーと名乗った白髪の男を見る。
何なんだ、この男。
全く隙が無い。一分の無駄もないしなやかな動きで、歩いているこの男。いやに帝国の事情に詳しい。自分が将軍職を得るかもしれないという話ばかりか、次代皇帝の事まで持ち出した。この男は一体、何者なのか。
クリストファー。
どこかで聞いたことのある、その名前。
帝国に詳しいクリストファー。
そこまで考えて、脳裏に一筋の可能性が出て来た。いや、まさかそんなはずはない。
だいたい、先代の皇帝が亡くなってから以降、行方知れずだったはずだ。それなのに、今目の前に立っているはずがない。
「皇帝の狗…」
クリストファーと名乗った男は、ピクリと眉毛を動かしたが、それだけだった。飄々とした笑みを崩さず、現れた時と同様にあっと言う間に姿を消した。
噂でしか聞いた事の無い先代皇帝の狗、クリストファー・マサイアスに会って呆然としている中にも、着々と事態は動いた。
帝都に帰還し、そのまま将軍職に就けるのかと思ったら案の定約束は反故にされ、ますます危険な地域に派遣された。それでも死ぬ事無く毎回帰還する俺にも、部下が出来、その部下達にも恵まれ、軍の中でも着々と地位を上げていく。
遂には功績がナバレル皇帝直々に認められて、軍では最年少での将軍に任命された。
そんな俺にいつしか『死地から必ず帰ってくる男だ』という噂が立ち、それが派生して、ブリッグハウス将軍は『生きた伝説』と呼ばれる事になるのだが…
将軍の任命式は城で行われる。
将軍にしか許されない正装である城の軍服を着て、登城する際に、俺は人生をかけるべき人に出逢う事になる。
自分の一生をかけて護る人に出逢えるなんて、そうそうあるもんじゃない。
伴侶を選ぶよりも出逢える確立が低いその人に、俺は逢えた。
俺達のルグレスの未来を託す事になる、その人。
アレクサンドロ王子に逢ったのは、まさにその任命式だった。