ざまあラントは発展中
運営を通じて怒られたり消されたりしそう
「正直、当時はどうなるのかと思っていたよ」
こうつぶやいたのは、ここアキルノー辺境領の領主。
この地は五か国と接した、特にどこの国にも属していない場所だが、
十年前までは山々と深い森が広がる、ただの未開地だった。
◆
そう、十年前。
周辺諸国で「底辺令嬢が幸せをつかむ物語」が大流行した。
領主が知る限り何十種類も出版されたその内容だが、大体こうだ。
平民もしくは下位貴族の娘が学院へ入学するところから始まる。
彼女は貴族の不文律など何一つ知らず、色々と騒動を巻き起こす。
苛立つ上位貴族の令嬢達は苦言を呈したり冷遇を繰り返したり。
しかし娘を面白がったり愛らしく思ったりする上位貴族令息達、
時には王子までもがそれを手助けしたり擁護したりと構う。
苛立ちが頂点に達した上位貴族の令嬢達は、娘を害そうとするが、
貴族令息達の助力もあって大逆転、娘は晴れて玉の輿となる。
一方の令嬢達は悪事をばらされ、ひどい場合は一族ごと没落の道、
ましな場合でも令嬢は家族から縁を切られて辺境へと送られる。
まあ架空の物語としては痛快なのだろう。そこまではいい。
だが実際にそれをやらかす貴族達がわんさか湧くとは思わなんだ。
渦中の人物と思われる令嬢達が追放の憂き目にあい続ける。
本当に悪事を働いたかは、おそらく関係ない。
周辺五か国で「辺境」と言えるのはこの地しかない。
十年間に渡りこの地へは毎年のように追放令嬢がやってきた。
大抵美人だが顔つきはキツい令嬢達が、十年間で百人近く。
おかげでこの地についた異名が「ざまあラント」である。
修道院は三年で満杯となり、第二修道院を建てる事となった。
◆
領主としては新住民を放置するわけにもいかない。
誰か送られて来る度、追放令嬢達とは必ず顔合わせを行っていた。
しかしながら。
優秀なのである。誰もが。玉石混交どころか玉しかいないときた。
元が上級貴族、書類仕事も領地経営も高い水準でこなす実力がある。
考え方も洗練されており、むしろ領主が助言を乞うほど。
歯に衣着せぬ物言いは有難くさえある。
こんな素晴らしい令嬢達がなぜ追放されたのかさっぱり分からない。
最年少の十三歳から十五歳までは修道院で活動してもらっているが、
それ以上の令嬢達には共に辺境の発展に尽力してもらった。
開拓。治水。農産畜産。流通。辺境は物凄い速度で発展を遂げる。
辺境の貴族達と結ばれる令嬢も現れ、うち一人は領主の妻となった。
今ではこの地は観光でも栄え、近隣諸国も無視出来ない存在だ。
かつて彼女達を追放した連中は歯噛みしているかもしれない。
そうでないかもしれない。が、彼女達はもう気にも留めていない。
この地での幸福、それこそが相手への最大の「ざまあ」なのだ。
と、言っても東京の多摩地域にゆかりないと分かりませんね




