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婚約破棄された料理好き令嬢ですが辺境で現代知識を使って店を開いたら大繁盛。今さら助けを求めてきた元婚約者にはゴミ箱へどうぞと塩対応し浮気相手も撃退しつつ現婚約者と幸せになります

作者: リーシャ
掲載日:2026/05/06

 どうもこんにちは、婚約白紙され済み令嬢ことペルメローズ。只今辺境にて料理のレシピを使い絶賛お店を経営中。

 幼い頃からちまちま現代知識を用いて色々してきただけあり、周りからは好感度が高く人気者になっていた。知識は勝つ。

 周りも優しくて婚約していた事実を感じさせず、婚約破棄されたけれど腫れ物扱いもない平和。好感度をどしどし稼いだお陰。


 婚約が白紙にされた理由は婚約者のデビーのせい。好きな子ができたから、その子と付き合いたいから婚約を白紙にして欲しいと頼み込まれて、両家の話し合いの末に婚約はなかったことになった。


 しかし、デビーは親たちに許されることなく勘当されたらしい。親の決めたことを勝手に変更させたのだから、コントロールできないと判断されたのなら勘当もやむを得ない。彼が後先考えずに当主の意向をガン無視したのが悪いのだ。


 貴族子女子息たちは初めから自由なんてないのに、どうしてあそこまで好き勝手にできたのか、できると思っていたのかわからない。確実に言えるのは、向こうの育て方が大失敗していたってこと。


 そうやって客達を相手にしていると扉カラカラカラン!と音がして元婚約者が太々しく現れて驚く。よくもここに顔を出せたものだなと呆れる。はぁとため息を隠さない。一気に疲れた。


 ペルメローズの態度に気づくほどの頭の良さがないらしい相手は、こちらへソソソ……とにじり寄ってくる。

 何をしにきたのかは色々パターンを予測していたから、驚きはしない。どうせどうにかしてくれとか、とりなしてくれとかくだらないものだろう。


「なぁペルメローズ!た、助けてくれるよな?」


「いえ、助けませんが」


「っえ」


 男は元婚約者デビー。二人がどんな理由で婚約を白紙にしたのか、もう忘れたのか?そんなわけがない。本人が自ら進言して婚約はなかったことになったのだから。

 婿入りのくせに、結婚する前からこちらの親にも伝わるほどの浮気の噂をばら撒かれる失態を、コツコツと演じていたのに。

 好きな人ができるのも、その人と添い遂げたいと恋に患ったことを許さない、こともなかった。好きにしろと思うだけ。密かに心の中で思っておけばいい。


 しかし、彼は気持ちを周りに隠すこともせずに恋をした相手と、婚約がある身で腕を組んだり距離が近いまま話したりと、貴族としてのマナーを置き去りにやらかしまくる。

 そんなに嫌ならこちらに早く言って、婚約を解除してから付き合うべきなのだ。キープして相手もろとも、恋愛ごっこの恋人たちにどちらの当主も怒り心頭になった。


「なぜ、私が、あなたを、助けなきゃ?」


「ぼ、僕たちは婚約者だったろ?」


「あー、そっちの縁を無理矢理頼ってくるの?それって腐り落ちてそこら辺に落ちてるかも。拾ってゴミ箱に捨てておいて」


「な!?」


 シッシッと追い払う。お店の人に申し訳ありませんと謝ると客たちは気にしてないよと温かい言葉をかけてくれた。しかし、こびり付いた汚れはなかなか取れないって言うし。


「おい!無視するな!」


「営業妨害するの?兵士を呼びましょうか?どうなの?」


 告げると相手は喉をグッと詰まらせる。どうやら兵士の厄介にだけはなりたくないみたいだ。

 自分が押しかけている自覚があるだけに、何も言えなくなる。ムカッとなる。よくもまあ、ここまで偉そうに言いつけられるってもんだ。


「ぐ。だが金は払うからなにか食べさせろ。こっちは客なんだからな」


 彼は知らないらしい。お店の店主は出禁設定が可能ということを。出入り禁止とできるので彼が客としてきても入れるわけもないし食べさせるわけがない。腕を組み高らかに声を張る。


「そう。じゃあ前払いしてね」


 金額を告げると相手は顎を落としそうな顔つきであんぐりと、口を開けた。ぼったくりな金額を提示したからだ。

 貴族子息のときならば払えたのだろうが、今は平民落ちしていてここへ来るほど困窮してそうな男には到底払えるわけもない。


「な、な、そんなの払えるわけがないだろ!?」


「なら、あなたは客じゃない。前払い以外認めない。どうせお金に困ってるから食べたあとに財布がないとかお金が今はないとか言って、無銭飲食する気なんでしょ?やらせないから」


 男はギクっとした。やはりか。彼は食べた後にお金がないと言い、婚約者だったのだから皿洗いするから、許せとかなんとかで無銭飲食で踏み倒すつもりだったに違いない。

 自分ではなくても簡単に心理が丸わかりなところがダメなのだ。やれやれと首を振る。


「あなたねぇ、私じゃなくてもあなたの物言いで無銭飲食するってわかるんだから……出て行って」


「客だぞ!?」


「私を雑に扱って婚約をなくした人にどうして料理を振る舞わないといけないの?どこの世界線にそんなバカがいるの?」


 デビーはぶるぶる震えて、でも出ていかない。お腹が空いてもうここしか縋る場所がないのだろう。流石は好きな子ができたという理由で、婚約破棄を告げたクズな思考を持つだけある。

 呆れ果てているとキッチンからのしのしとした重い足音が響く。痺れを切らせたみたい。厨房から顔を出したのは、筋肉質な胸板を曝け出す服の着方をしている男。


「迷惑な客が来てるのか?」


「ひ」


 元婚約者がビビるのも仕方ない。なんせ、出てきたのは大男と差し支えない大きさの男のだから。


「だ、誰だ、この、方は」


 もし、もやしみたいな相手が出てきたらこいつとか言ってたんだろうな。彼の人への対応を知っていたから余計に相手を白々しく感じる。

 今までペルメローズに威圧的にしていたのに、彼が出てきた途端に態度を下手にさせた。つくづくなんて小心者で卑怯なんだろうか。


 デビーが出ていくと鼻で笑う男。彼は今現在の婚約者でありお店経営を手伝ってくれている人、ラタウ。

 彼はとても頼り甲斐がありうちの両親が公認している人。逃すなよと、念押しされているくらい親族からはお気に入りにされている。


 天然な性格なのに人懐っこいのだ。自分的にもとても自慢の彼。あんなナヨッとした元婚約者なんて記憶が殆んど消えてしまっている。両親もそんな子もいたわね、と黒歴史扱い。

 もう彼の親とも交流は断絶しているが、手紙くらいは送って回収するように脅しつけておくべき、かもしれない。


 そうしないとまた来るかもしれないし。婚約者に迷惑をかけたくないから、両親にも手紙を送ろう。どうやってここを知ったのだろうか。

 名前を覚えていたら探すのは容易だけど、次にタカリに行こうとはならないと普通は思うんだが、余裕のない思考は叩き出される結末も思い浮かばなかったみたい。


 無銭飲食しに来たと両家に事実を書き記しておく。警備や警邏にも無銭飲食をさせろと言い来る大人が現れたと被害届を出しておこう。

 ここら辺をきっちりしておかないと後々、なにかトラブルが起こった時に証拠として強力なものになる。そうなればレッドカードで退場させられるだろう。

 後日、丁寧な手紙と彼の家からの執事が非常に肩身の狭そうな顔をして、謝りに来た。

 執事に謝らせてどうしたいのか。対応は丁寧にやっているが、執事が謝ったところで相手の誠意を感じ取れることもない。単に管理不足。

 執事は悪くないがイラついた分、相手に怒ってますよとアピールは忘れない。執事はビクッとなりながら低頭したまま、すごすごとあちらの家に帰っていく。馬車を見送るとフウと息を吐いた。

 どうしてあんな息子が誕生して、ごく最近まで好き勝手生きていけたのか薄っすら予想する。

 甘いのか放置したのか、両方か。可愛がるだけ可愛がって躾を怠ったに一票。


 ラタウが見送ったこっちを眺めながら帰ったんだなと言うので、頷く。彼にも迷惑をかけてしまった。謝ると気にするなと優しい顔をして、近寄ってくる。


「どうだった」


「すごく頭が低かった」


「だろうなぁ」


 くつくつと笑う彼は愉快と言いたげだ。トラブルは彼の耳にも届いているのだから、その渦中の男が突然元婚約者が来たというのだから笑う以外にあるものか。


 ペルメローズももし、彼に同じようなことがあって、今になって元婚約者が来てしまったらついつい楽しんでしまうのは、想像に難しくない。


「ペルメローズ、大丈夫か」


「うん。平気。別に好きじゃなかったから。向こうは好意ありきで来たけど。最後まで思い込んだから、今も何でそうなってるのか知らなさそう」


 二人でふらふらと笑った一ヶ月後、今度は元婚約者の浮気相手が来た。何で頼るのがうちなのか頭の中が謎だ、ブラックボックスだ。


「ねえ!あなたのせいでこうなってるんだからお金ちょうだいよっ」


「んー」


「これは強烈だな……身なりもボロい」


 彼は苦笑して、婚約者のペルメローズの前に立って不審者を睨みつける。因みにんーと言ったのはペルメローズだ。出し難いバカな女が来てしまったと目を眇めて、どうしたものかと悩む。

 デビーの浮気相手は自分と無関係。赤の他人、顔見知りでも何でもないのに。やれやれと手が動くし、ため息も深い。

 具体的に言えば、元婚約者の浮気相手なんて己からすると縁遠い無関係な相手なのだ。

 元婚約者の浮気相手と町で出会っても知り合いでもないし、顔見知りでもない完全なる他人。そんな無関係であるはずの己に、なぜ会いに来たのか考えたくもない。


 スリルもミステリーもいらないから、ソッとしてほしいんだけど?


「警備を呼んだ」


 ペルメローズが呼び出せる魔法をやっておいたからと彼に伝えると、相手もゆるりと頷く。元婚約者訪問で不安になったので、一応復習しておいてよかった。

 二度目があるかと思いきや、こっち方面でやってくるのは流石に予想できない。いくら転生者でも無理。相手の女を見ながら二人とも不気味な顔で対応に当たるしかない。

 いつ、刃物を出してくるのかわからないような精神面をしている。


 何なのだこの女は。この女とは過去に会ってないのに。浮気が発覚したのはうちお抱えの探偵を使ったことだ。なので、直接的な面識はない。

 だというのに二人して何なのだろう。不幸になったから責任を取れと言いに来たのはわかる。

 分かりたくないけど。こういう展開や心理は小説、ドラマなどで散々見たことがあるもの。

 精々そんな人に出会わなければいいんだけど、あいにくたった今出会ってしまった。全く関係のない第三者として。本当に無関係だ。

 彼らが浮気していたから婚約関係を解消、破棄するのは誰しもやること。別に不思議でもない。

 ペルメローズでなくてもやる。それなのにさも、やったことが悪いとばかりに責められてしまう。

 被害者へ加害者が押しかけてくる。これは法律を守る街に住む己たちが、身を守るためには異常な心理を携えた女をいかに早く、どうにかするかにかかっている。


 下手をして刺されでもしたら嫌だしなぁ。


 一人だけで色々考えたが、やることは身を守ることだけだ。


「お金?いくら欲しいの?」


「そうねえ……一億は最低値よ」


 そんなわけあるか!と内心バカにしながら。ため息を三度内心で吐きつつ、レジからお金を取ってから相手に渡す。


「見てわかると思うけど、ここは家じゃない。店にあるお金はこれだけ。明日取りに来て」


「ふうん?たったこれっぽっちなの?流行ってないのねえ!ぷぷ!」


 髪の毛がジャギジャギした、身なりも繕えない女がこちらをバカにした笑みを浮かべて後ろを向いて外に出る。すかさず防犯グッズを投げつけた。


 ―パキパキ!


「え、あ、きゃあああああ!!!」


 どろりとした液体が瞬時に粘着物質に変わり、女を絡め取る。女に恐喝されてお金を渡して、外に出た時点で強盗罪は適用されるのであとは好きに料理してもお咎めはない。


 いやぁ、防犯グッズを開発しておいてよかったなあ!


 強盗に金を取られたていにでもして、捕まえてもらわないとあっさり外に出されるし。それは困る。

 ここまでする女が次来た時に何をするかなんて、想像に難くない。こんなことをしてきて、また来られては堪らない。


「はぁ、なんなんだこいつら……全てお前が悪いと自己完結させてる……何も悪くないお前だけに八つ当たりをするとは」


 ラタウが少しだけ眉を顰めて怒ってくれる。それだけで満たされていく心。デビーとは関係がちょっとあるからと言って、その浮気相手と己にはなんの関係もない。

 本来なら、彼と婚約しなければ端役にもなりはしない無関係な赤の他人。デビーの浮気相手だろうと、そんな存在が自分に絡む理由はどれだけ探してもない。


 彼とはもう婚約を無しにしたのだから。単に彼の両親が怒っただけだ。親子たちの話であって、ペルメローズはそこに干渉していない。

 デビーもそれは重々理解していたと思っていたが、それどころではない身の上になったことで理性が消滅して、縋る相手に元婚約者を選ぶという無理のある思考回路が出来てしまったらしい。


 普通に考えたらなんの関係もなくなったのだから、来ても門前払いされるのなんてわかりきっているのに。


 数日後、ダブルブッキングしたのは自分たちよりも元がつく婚約者たち。お互いの顔を見たら悪態や文句、言い合いを見せと少し先の道で叫び始めた。


 お前のせいだ、あなたのせいだ。


 それを、延々と押し付けてはお互いの嫌な所、我慢ならないところを一つ一つ挙げては、それにふざけるなと反応する。正直営業妨害だ。


「ペルメローズは俺を愛してる!」


「追い出されたんじゃない!」


「照れ隠しだっ」


「照れ隠しってバカじゃないのぉ?」


「なんだとぉ!」


 おかげで近くに住んでいる人たちの、特別サービス修羅場になっている。周りのご近所たちはクスクス笑って見守っていた。

 娯楽扱いされていることに気づかないで今も言い合う彼ら。少しすると巡回していた、取締りをする職業の男たちが彼らを連れていく。


「離せぇ!」


「子供を産んだばかりなのよ!労りなさいよ!」


 驚いた。子供が生まれていたのか。子供を放ってここにいることが母親として、動いていないのがわかる。

 父親だったらしい男も、妻と子供を放置してここにまた来たということになるんだけど。来るなという単語を消化しようとしない。


 ラタウも表に出てきてエプロンをゆるりと付ける。


「おはよう」


「おはよう。あいつら暇だな。街中でのここで喧嘩して、もう明日には有名人の仲間入りしてるやつだ」


「元々有名な貴族の代名詞ではあったんだけど、ここら辺の貴族じゃない人たちには全く知られてなかったのに。再出発とあれじゃあ難しくなるっていうのに何をしてるんだか。子供居るんだって」


「ああ、子供か。いてもおかしくはない。あいつらの関係性を考えたら、いずれ出来て生まれていただろうから」


「さすがに無理だって思って産むとは思わないでしょ。二人のときでさえマトモに暮らせないのに、一人増やしてどうするの?育てる以前の話でしょ?」


「そんな脳があったら浮気しない。短絡的で楽観的で、刹那的な破滅型だからな」


 その後、風の噂で破滅カップルのことが流れてきた。赤ん坊は元婚約者の実家の玄関に置き去りにされ、結果、風邪を引いて亡くなったのだという。

 今の季節は寒空だ。呼び鈴も鳴らさずに突き返されないように逃げることだけを考えて、家の人を呼ばなかった身勝手さ。

 赤ん坊を死なせたと捕まった二人が、実家を責めに突撃して実家の人たちに「お前たちが悪いだろう」とボコボコにされて放り投げられたらしい。

 そもそも、寒い夜中に置かれても気付くのは何時間も後の朝。選んだ彼らに誰かを責める権利はない。


 ここで通常は話は終わるが、赤ん坊に関しては裏話がある。デビーたちが後に実子を理由に関与してこないように、死んだことにすると向こうの家が決めたことをラタウから聞いた。

 ラタウがなぜ他家の事情を知っているのかと不思議だったが、彼も赤子について気にしていたので知ったらしい。

 周りの評価と彼の実力にズレがある。前々から思っていたが、能ある鷹は爪を隠すタイプの男だったみたいだ。


「これで心残りなく結婚してくれるから」


「んっ!?」


 不思議に思っているとボソリと落とされるキュンとさせる言葉に、ピザの生地をいつもより強く捏ねる。


 客たちにはもちもちだと好評であった。

最後まで読んでくださり感謝です⭐︎の評価をしていただければ幸いです。もちもちなピザが好きです

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― 新着の感想 ―
 縁はゴミ箱へポイとペルメローズさんから冷静発言される無銭飲食の未遂犯・黒歴史さん。  責任おしつけあいカップルによる迷惑余波が、執事さん・ラタウさん・幼児にまで及んでますが、ピザが不味くなるような域…
教育の敗北の体現みたいなカップルでしたね。赤ちゃんが無事で良かった。
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