接近
彼女との付き合いは、互いに第一希望の大学受験に成功した時から始まった。
僕は、毎日彼女に会う度に惹かれていて、彼女に恋をしていた。
受験が終わったら、もう会うことはなくなるんだと思うと、苦しくなり、切なくなった。
受験の日、僕は、絶望的な気持ちで試験会場に向かったのを今でもハッキリと覚えている。
しかし、時間というものは残酷に、ある一定のスピードを必ず保ち進んで行く。
僕は、なんなく試験を終え、それからも毎日、また彼女に会えるかもしれないと思い、図書館にいた。
彼女の受験校の試験が終わり2週間が過ぎた。
その間、彼女は、一度も図書館には現れなかった。
僕は、もう彼女に会うことを諦めていた。
帰ろうと思い、荷物をまとめていた、その時、後ろから2週間も待ち続けた彼女が、僕を呼んだ。
「星野くん」
振り返ると、いつものポニーテールではなく、軽くパーマをかけて制服姿ではない、前よりずっと綺麗になった彼女がいた。
僕は、驚きと嬉しさと、たった2週間で大きく変わった彼女に少し寂しさを感じた。
「田原さん、久しぶり…」
僕は、なんとか言葉を発することができた。
彼女は、そんな僕を全く気に留めることもなく話しだした。
「私、大学合格したわ。両親に星野くんの話をしたの。そしたら、今夜うちに連れて来なさいって言うもんだから、呼びに来たのよ。」
僕は、唖然として彼女を見つめた。
「田原さん、よく意味がわからないんだけど」
彼女は少しイライラした面持ちで再度僕に言った。
「だから、パパとママが貴方に会いたいって言ってるの。今夜貴方は私のうちで一緒に食事するの。」
僕は面食らってしまった。
そして彼女は、僕に有無を言わせない勢いで、僕の腕を掴み歩き出した。
僕は、彼女に掴まれた腕をただ見つめることしかできず、また、掴まれた部分が異様に熱くなって、それが彼女にバレるのが嫌だった。