出会い
いつも強気の彼女は、僕を振り回す。
僕と彼女の出会いは、今から何年前になるんだろうか。
そんなことを考えながら、僕は、彼女の家に向かう。
彼女を殺すために。
彼女は、一人で住むには大きすぎる豪邸に住んでいる。
彼女が大学4年生の夏に両親を事故で失い、彼女には、両親の残した多すぎる財産と大きすぎる豪邸が残った。
彼女の父親は、出版会社の社長だった。
幼い頃から、蝶よ花よと育てられた彼女は、わがままで強気に育ち、周囲を振り回すことを意ともしない。
僕は、そんな彼女に振り回されながら、彼女を愛し、憎んでいた。
僕らの出会いは、高校時代に遡る。
大学受験のために、毎日近所の図書館に通っていた僕は、同様に毎日通っていた彼女に声をかけられたことから始まった。
当時彼女のは、ポニーテールで私立の女子校の制服を地味でもなく、派手でもなく着こなし、時折見せる笑顔は、無邪気で可愛いの一言だった。
そんな彼女に、進学校の制服を着ているだけの地味な高校生だった僕は、声をかけられて、彼女を意識しない訳がなかった。
彼女は、数学が苦手らしく、いつも数学の問題を解いている僕を見て、どうしても解らないから教えてくれないかと声をかけてきた。
初めはびっくりして声も出なかったが、僕は彼女に声をかけられたこと、こんな僕を頼ってくれた存在に嬉しくなって、簡単な問題をなかなか理解出来ない彼女に根気よく付き合った。
それから、彼女は毎日僕に質問しに来るようになった。
その度に、僕は丁寧に彼女が理解出来るまで、付き合った。
誰かに頼られることが、皆無だった僕は、彼女から頼られることに喜びを感じていた。
でも、彼女は違った。
誰かに守られて、可愛がられて、何でもしてもらうことが当たり前の彼女には、僕の喜びなど知るよしもなかった。