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【完結保証】のけものの幸せな結婚  作者: 絶対完結させるマン


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夜のお誘い

 ***


 「今夜は佐助さんと一緒に過ごしたいです」


 小春の言葉に、佐助は危うく茶を噴き出しそうになった。


 夕食中だった。小春がずっと何かを言いたそうにソワソワしていたので気にはなっていたが、まさかこんな爆弾を落とされるとは。


 ちなみに統一郎は、襲撃してきたあやかしの件で、拠点の方に行って部下の報告に耳を傾けている。


 「すみません。隊員のみなさんが頑張ってくれたおかけで、もう大丈夫だってことはわかってます。でも私、どうしても怖くて……今夜一人で眠ることを考えるだけで、ゾッとしてくるんです」

 「そりゃ、あんなことがあった後では怖いでしょうけど……でも一人が怖いのならあんこと——」


 そう言いかけて、佐助はあんこが帰ってきていないことを思い出す。


 あいつ、どこを彷徨いているんだ。まさか道に迷って帰れなくなっているとか?


 その頃あんこは短子の自宅に招かれて、大福や饅頭などのご馳走を振舞われていた。


 好物漬けにされ「可愛い可愛い」と甘やかされて、あんこは天国にいるような心地だ。すっかり短子に懐いてしまっていた。


 「あんこは無事でしょうか。悪いあやかしに食べられてたらどうしよう……」


 小春が泣きそうなのを我慢するような顔になる。


 思えば、ここ最近の彼女の身には色々なことがあった。


 顔も知らない相手との縁談が持ち上がったかと思えば、その相手が殺人鬼で危うく食べられそうになり——かと思えば、知り合ったばかりの男の家に住む流れになり、環境がガラッと変わった。


 突然の変化に、心がまだ追いつかないだろう。そこに来て今日の騒動だ。


 彼女の気持ちを考えれば、要望を叶えてやるべきだとわかる。しかし……。


 「俺は男ですよ。一晩中密室で二人きりなんて、危険を感じないんですか」

 「? はい。思いませんよ。佐助さんは悪い人じゃないってわかってますから」


 当然のように言い放った小春に佐助は怪訝に思った後、ああそうか、と思い当たる。


 小春は、11歳の時から世間と隔絶された生活を送ってきた。


 だから一般常識に疎い。


 佐助は尋ねてみる。


 「同衾という言葉の意味を知っていますか」

 「どう、きん……? すみません、私本当に世間知らずで……」


 やはりそうだ。小春は男女の交わりのことなど知らない。


 男と女が同じ部屋で一晩過ごすことで、何かが起こる可能性があることなんてわからないのだ。


 だから警戒心など微塵も感じずに「今夜は一緒に寝てください」などと言えるのだ。


 「佐助さん? どうしたんですか。私、そんなにまずいことを言ってしまったんですか……?」

 「いえ。あなたのせいではありませんので謝罪は不要です」


 佐助は、どうしたものかと思う。


 統一郎は、今夜は拠点の方で過ごす可能性が高い。


 これまで襲撃があった日はいつもそうだった。統一郎は元々多忙で、自宅に帰ってこないことも多々ある。


 彼は彼なりに自分のことを信頼してくれている。ずっと執着してきた小春の世話係を任せるほどだ。


 しかし、小春と同じ部屋で寝るなどと聞いたら、さすがに顔色を変えるかもしれない。


 統一郎の執着と嫉妬心の強さを思い出す。


 やっぱりここは断った方が——。


 「すみません。私は佐助さんと一緒にいた方が安心できますけど、佐助さんにとっては違いますよね……。私、自分のことしか考えてませんでした」

 「あ、いや、その……」

 「さっきの言葉は忘れてください。もう大丈夫ですから」

 「〜〜! わかりました! 今夜だけ! 今夜だけ俺がそばについていますから!」

 「えっ!? いいんですか!?」

 「はい。ですが一つ頼みがあります。——局長にはこのことは絶対に教えないでください。あと軽々しく男に『今夜共に過ごそう』などと言わないでください」


 小春は佐助がなぜそんな頼み事をするのかよくわからなそうにしていたが、彼があまりに真剣そうにしているので深く頷いておいた。

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