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【完結保証】のけものの幸せな結婚  作者: 絶対完結させるマン


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魔性討伐軍の嫌な仕事

 ***


 強端樹は、魔性討伐軍の最年長で一番隊の隊長である。


 発足当時からの初期隊員で隊員たちからの信頼も厚い。統一郎からも頼りにされていて、屋敷に出入りすることを許されている数少ない隊員の一人だ。


 ちなみに一番隊隊長は、副長の佐助の次に重要な役職である。


 彼は今薄暗い部屋の中で、猿轡をつけた男と対峙している。


 「さて、と。いやーな仕事の始まりだ。これに比べれば殺人鬼討伐の方がまだ楽な仕事だね」


 肩を鳴らしながら入室する樹。


 部下に「お疲れー。あとは俺が引き継ぐよ」と労いの笑みを向ける。


 「いやー頑張るねえ。こんなに我慢強い奴は初めてかも」


 猿轡をつけて、両手足を拘束された状態で椅子に座らされている男。その10本の指を見て、樹は拍手する。


 手の爪がすべて剥がされていた。


 「息しづらいでしょ。ちょっと休憩しようか」


 樹は猿轡を外してあげる。

 騒いでも無駄とわかっているのか、男は黙り込んでいる。


 「どうして俺らの拠点を襲撃したんだ?」

 「どうして、だと……?」


 ハハッ、と乾いた笑いをこぼす男。

 その頭からは、一本角が生えている。


 「自分たちがどれほど恨まれているのか、知らないとでも言うつもりか」

 「……ああ。そういう」


 自分たちが一部のあやかしの恨みを買っていることは、百も承知だった。


 殺人鬼にも家族がいる。許されない罪を犯し処刑された殺人鬼も、誰かにとっては愛しい存在だ。


 江戸の人間たちにとって英雄である魔性討伐軍も、殺人鬼にとっては忌々しい外敵でしかない。


 「じゃあ、あれか? お前は殺人鬼の遺族か? それで憎しみ募らせてうちを攻撃したと?」

 「ああ、そうだよ」

 「ふーん。殺人鬼じゃないなら、うちとしてはどうにもできないなあ。討伐命令がお上から出ない限りは殺生禁止ってなってるしさ。世知辛いね」


 樹は諦めモードを纏い、この後の流れを想像してみる。


 殺人鬼じゃないなら殺すことはできない。この鬼は説教した後に帰すことになるだろう。


 あー面倒くさいなあ。


 「ま、しょうがないね。そういう決まりだからさ」


 ニッコリと満面の笑みを浮かべると、樹は拳を思いっきり鬼の腹に埋める。


 「ガハッ……! 何を……」


 もうすぐ解放されると気が緩んでいた鬼は、目を白黒させる。


 大嫌いな隊員の手前意地を張っていたが、爪を剥がされた10本の指が耐え難い激痛を訴えていたのだ。


 「殺人鬼じゃないと、何されても殺しちゃいけないのがお上からの命令なんだよね。だからこれまでにもお前みたいなのがうちを襲撃してきたことが、まあ何回かあったわけ」


 「ここ二年くらいはとんとなかったんだけどね〜」と呑気な声で言う樹。


 「殺人鬼じゃない以上殺せない。殺したくもない。でも、だからってこんなことがホイホイあったらうちも困るのよ。だから、たっぷり"説教"して、お前さんたちに納得してもらった後帰らせる慣習になってるんだ」


 樹は腰に差していた刀を抜き、これみよがしに鬼の前で振る。


 着物の前をはだけさせ、あらわになった腹に切先をズブリと挿れる。


 「うあああああ……!」

 「ごめんな。痛いよな」


 気遣わしげな声色とは裏腹に、切先は皮膚を突き破り、より深く中に入っていく。


 中に入ったそれを、樹は"の"の字を描くように動かす。ゆっくりねっとり弄ぶように蠢く刃先に、鬼は涙をこぼした。


 「これも俺らの大事な仕事だからさ。どんなに気が進まなくても、励まなきゃいけないよね」

 「殺してやる……! どんなことをされても絶対に俺の心は折れないぞ!」

 「これは長くなりそうだな。ああ、嫌だ嫌だ」


 ここは拷問部屋だ。歯向かってきたあやかしを拷問や仕置きにかける暗い場所。


 小春の手前、さっきは"あの部屋"などとぼかした言い方をしたが。


 あんな心臓の弱そうなお嬢さんに、血生臭い話を聞かせるもんじゃないしね——樹はそんなことを思う。


 久しぶりの仕置きは、長期戦になりそうな気配だ。


 もう若くはない樹は「キッツイなあ……」と思うものの、部下にこんなキツイ仕事を投げるのは居た堪れない。


 仕方ない。今夜はこいつと二人で頑張るしかないか。


 樹は内心の落胆を悟られまいと、薄ら笑いを浮かべて虚勢を張る。


 「今夜は一緒に過ごすことになりそうだな?」

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