チョロい小動物
佐助は新人隊員の七男を伴って、市中見回りに乗り出した。
いわゆるパトロールである。町内で何か異変がないか歩きながら見ていく。
「なんでウチが付き合わなきゃいけないわけ?」
あんこは、ブーブー文句を垂れている。
佐助たちと違って、小さい足でせかせか歩かなければいけないので疲れるだろう。
「当たり前だろ。お前から目を離すわけにはいかない」
「ちえっ、感じ悪いやつだな。あ〜小春のとこに帰りたい」
白いおしりをふりふりさせながら小さい足で歩く姿は大変愛らしいが、本性を知っている佐助からすれば可愛くも何ともない。
けっ! と思っている。
あんこも同じように佐助に対して、けっ! と思っている。
「どうせウチを鍋にしてやろうと狙ってるんだろ。絶対お前なんかに気を許さないからな。赤髪仏頂面野郎が」
「口悪いっすね……」
七男が苦笑いで言う。
「ん? この匂いは——!」
「おい! どこ行く!」
あんこが、大型犬もこれほどの速度は出せないだろうというほどの勢いで駆け出したので、佐助たちは慌てて追いかけた。
あんこは、団子屋の前で客の足に擦り寄っていた。
「何この猫? 犬? よくわかんないけど、とにかく可愛い〜!」
クーンクーンとせつなげに鳴くあんこに筋骨隆々の男性客は、デレデレと頬を緩ませている。
「何? 団子が食べたいのか? いいよ〜あげるよ〜」
「キャンッ!」
「待て」
「グヘッ!」
あんこの首根っこを掴んで、ジトッと睨む佐助。
「何すんだよ! もう少しで団子にありつけるところだったのに!」
男性客には謝罪して去ってもらった後で、あんこが文句をつける。
「お前、今までにもあんなことしてたのか?」
「うっ! たまにしかしてないし……」
「しょっちゅうやってたんだな」
「別にいいじゃん! 盗みよかマシじゃん!」
佐助がため息をつくと、あんこが怯えたような顔になり、狸のしっぽが出てしまう。
「はあ……しょうがない」
お前なんか狸鍋にしてやるぜ〜! ゲヘヘヘ。
そう言われると思ったあんこは、逃走しようと身構える。
「一本だけだからな」
「は?」
「だから団子。何がいいんだ。さっさと決めろ」
佐助が懐から財布を取り出して、店員に近づく。
みたらし、小倉、三色——たくさんある中で、あんこが食べたい物は決まっていた。
「あんこのやつ……」
「すみません、小倉一本とみたらし一本ください」
***
「あんこうまーい!」
「静かに食え」
あんこは、小倉の団子に舌鼓を打っている。
七男は、佐助に頭を下げている。
「すんません、俺もご馳走してもらっちゃって……」
「ああ。景気づけに食っとけ。ここのみたらしが好きだと前に言ってただろ」
「俺、てっきり副長が食うために注文したのかと」
「俺はいい。甘い物はそこまで好きじゃない」
美味そうに食べられた方が、団子屋も嬉しいだろう。
食べ終えたあんこが、ピンクの舌でぺろぺろと口の周りを舐めながら言う。
「久しぶりの団子はうまい!」
「どれくらい食べてなかったんだ」
「三日」
「ふざけてるのか」
「ウチは白米の代わりにあんこを食べるんだよ!」
「はー食った食った」と尻振りダンスを踊るあんこ。
「お前いいとこあんじゃん! これから毎日ウチに団子をくれ!」
「調子に乗るな」
団子一つで好感度を変えたあんこに「こいつチョロすぎだろ……」と若干引く佐助。
あんこは、佐助の肩に飛び乗る。
「おい」
「疲れたから運んで」
「自分で歩け」
「いいじゃんケチ」
離れなさそうだったので、佐助は諦めてあんこを肩に乗せて歩くことにした。




