統一郎のほしいもの
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「私の悲願は、全ての殺人鬼の抹消です」
夕食の席。統一郎は小春の質問に答えた。
「殺人鬼を滅ぼして、凶悪なあやかしに苦しむ人間をゼロにすること。それが私が魔性討伐軍を設立した理由です」
「殺人鬼を滅ぼす……」
「難しいことかもしれませんが、必ずやり遂げてみせます。もっとも私一人の力ではありません。頼もしい仲間が大勢います。ここにいる佐助もその大切な仲間の一人です」
町中で見せていたら、必ずや黄色い声が上がるであろう優美な笑みを浮かべる統一郎。
「出会った時の佐助は、殺人鬼への強い憎しみをどこに向けていいのかわからず、それはもう荒れていました。自暴自棄になって、今にも無鉄砲な行いに走って死んでしまいそうだった——そんな佐助を放っておけなくて誘いました」
『私と共に来い。必ずや全ての殺人鬼を根絶やしにしてやる。殺人鬼のいない世を見てみたくはないか?』
そう言われて差し伸べられた手を掴んだ13歳の佐助。それから五年間、ずっと統一郎のそばで力を振るってきた。
「佐助は私にとって家族同然の存在です。小春さんが佐助と仲良くなってくれて、とても嬉しいですよ」
数分前。今日は何をして過ごしていたのかと聞かれて、小春は佐助と掃除をしていたことを話した。
それを聞いた時、統一郎が一瞬目を狐のようにスッと細めて自分の方を見たのを、佐助は見逃さなかった。
そんなに神経質にならなくとも心配いらない。自分の立場はわきまえている——佐助はそれを伝えるように、統一郎から目を逸らさずに頷いた。
すると統一郎は安心してくれたようで、小春に視線を戻した。
夕食に同席してはいるものの、佐助は極力気配を消して統一郎と小春の邪魔をしないように努めた。
統一郎は小春の話を聞いて、にこやかに頷いている。隊員たちに向けるものとは種類が異なる笑顔を目の当たりにして、佐助は改めて驚いていた。
本当に彼女が好きなのだ。
この人が一人の人間に、それも女性に惚れ込むなんて。
統一郎は欲しいと思ったものは必ず手に入れる。目標を立てたら必ず達成する。
だから、小春のことも一生手放さないだろう。
どんな手を使っても、小春の心を手に入れるはずだ。
ちなみに佐助は、統一郎がある女性に執着していて、いずれ迎えに行くつもりであることは統一郎自身から教えられていたが、それ以外の情報はほとんど知らなかった。
昨日東雲家で当主と統一郎の会話を聞いて、小春が東雲家で受けていた扱いを初めて知った時の佐助の心中は如何なるものだったか。
統一郎が執着していた女性が永爽家の娘だったとは。しかもそれは小春だった——。
小春の人生が統一郎によって支配されていたなんて真実は、佐助を地獄に落とすには十分だった。
小春は、この五年間自分の幸福を握りつぶし、毒を植え付けてきた支配者が、今目の前にいるとは露ほども思わず、統一郎の偉大な夢に感心している。
佐助は抱えている秘密の多さに胸がつまり、その日はあまり食事が喉を通らなかった。




