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月食再生  作者: L3vGimm
3/21

初登場

 爆発によって全てを失ったレン。しかし、絶望の淵で彼は未知なる力と出会う。それは、彼の体を乗っ取り、ヨムレイを圧倒するほどの強大な力だった。だが、その力はレン自身のものではない。力を得た代償に、彼は自我を失ってしまうのか。そして、その力は一体何なのか。新たな力を手に入れたレンの、過酷な運命が幕を開ける。

闇を切り裂いた爆音は、ただの音ではなかった――全身を震わせる感覚だった。


炎を纏った雷鳴がアパートを貫く。激しい圧力が胸を打ち、部屋の反対側まで吹き飛ばされた。床に叩きつけられたことさえ覚えていない――ただ、耳鳴り、眩い光、そして埃と焦げ臭い匂いだけが残った。


目を開けると、そこは混沌の世界だった。


煙が立ち込め、息苦しい。壊れた配線から火花が散り、床を照らしている。通りに面した壁は完全に吹き飛ばされ、その開口部から新宿のネオンが歪んで見えた。


そして、煙の中から、影が現れた。

それは人間ではなかった。


その輪郭は鋭利でありながら、揺れ動いている――まるで現実そのものが、彼らがどんな姿であるべきか決めかねているかのようだった。手足は不自然に長く、体はうごめく紋様で覆われ、赤い光を放っている。気温が急激に下がり、俺の息が白く立ち上った。


ヨムレイ。


「レン、後ろへ!」

カイトの声が俺をトランス状態から引き戻した。


彼はすでに立ち上がり、剣を抜き、コートが吹き飛ばされた窓からの風に揺れていた。彼の銀色のシンエンは、生きている炎のように輝いている。


アイリも彼のそばに立ち、剣を構え、恐怖を隠せないまでも、その目に強い光を宿していた。ダイゴはすでに鉄の杖を手に取り、しっかりと構えている。


一方、俺はまだ床に倒れていた。

無力だ。凍り付いている。


ダイゴの声が煙を切り裂いた。「ヨムレイディテクターがあったはずだ!なぜ作動しなかったんだ?!故障でもしたのか?!」


アイリはモンスターの一体の攻撃を受け止め、火花が散った。「そんなはずはないわ!ヨムレイディテクターは、研究所で何度もテスト済みよ!」


ダイゴは悪態をつき、武器を捻り、地面に叩きつけた。衝撃波がヨムレイを数歩後退させた。「一体どうやってここまで忍び寄ったんだ?!」


カイトの目が鋭くなった。彼は答えなかった。ただ、右腕を前に伸ばした。

彼の右手が光を放った――最初は微かに、そして眩いほどに。


神聖結界シンセイバリア。」


俺たちの足元の地面が、複雑で円形の、神聖なエネルギーを放つ紋様で輝いた。その瞬間、光が炎の柱のように立ち上った。爆発音は、巨大な銀色の光の球がその地域を囲んだ時、沈黙に飲み込まれた。


結界の外では、世界が静止した。

風も、車も、遠くの都市の喧騒も――全てが遮断された。


内側には、俺たちの呼吸とヨムレイの人間離れした唸り声だけが残った。


俺は畏敬の念を抱いて見つめていた。神聖結界は、ただの技術ではなかった――まるで天国が門を閉じるのを見ているようだった。


結界の光は美しかったが、同時に重い圧力を帯びており、胸を押しつぶし、呼吸を困難にさせた。


「これで民間人は安全だ。」

カイトは言った。汗が頬を伝い落ちているにもかかわらず、その声は落ち着いている。「やつらが消えるまで、誰も出入りさせない。」


アイリは頷いた。「了解。」


ヨムレイはそれに応えるように叫び声を上げ、その声はガラスを引っ掻くナイフのように響き渡った。

一番近くのヨムレイが突進し、その鉤爪のある腕が不自然に伸びた。カイトは剣を銀色の弧を描くように振るい、一撃で手足を切り裂いた。クリーチャーは悲鳴を上げ、その腕は黒い霧に溶け――しかし、数秒後には再び再生した。


「再生か。」

カイトは呟いた。「しかも速い。」


「それなら、遠慮はしない!」

ダイゴは叫び、突進した。彼のシンエンは、溶けたエネルギーのように拳から噴き出した。彼はそれをクリーチャーの胸に叩き込み、クリーチャーを壊れた壁に吹き飛ばした。その衝撃で結界にわずかなひびが入り、銀色のドームの中で小さな亀裂が光った。


「ダイゴ、気をつけろ!」

カイトは警告した。「無理をするな!」


「心配するな、任せろ!」

ダイゴは叫び返したが、彼の声には緊張が感じられた。


アイリは稲妻のように彼のそばを動き、剣を振るう途中で円を描いた。彼女のシンエンは鋭い青い花弁となり、散らばってヨムレイの体を切り裂いた。それぞれの衝撃で白い火花が散り、モンスターを一時的に後退させた。


彼らのチームワークは完璧だった――流れるようで、熟練していた。

全てのステップ、全ての攻撃が、繋がっている。


それでも…それだけでは十分ではなかった。


ヨムレイは普通ではなかった。彼らの動きは以前よりも速く、より知的だった。攻撃を予測し、かわし、反撃してきた。彼らの深紅の目は燃える核のように輝き、受けるたびに、より強く再生した。


「カイト!」

アイリが叫んだ。「やつらは適応している!」


カイトは歯を食いしばった。「それなら、もっと強く押すんだ!」

彼は手を上げ、シンエンの流れを召喚し、空中に紋様を形成した。「霊星の点血レイセイノテンケツ!」


白い閃光が結界を切り裂いた。神聖なエネルギーの波が床を吹き飛ばし、ヨムレイの一体を瞬時に蒸発させた。一瞬、勝利したかのように感じた――しかし、最初に倒れた場所から、さらに二つの影が現れた。


その存在感は重く。

その姿は――より大きく、より密度が高く、その肌は深紅の血管で波打っていた。


空気が冷たくなった。カイトでさえ一歩後退した。

「B+ランクか…」

彼は囁いた。「あるいは、それ以上。」


俺の胃がズンと重くなった。

以前、訓練中にヨムレイのランクを説明する際、彼がその言葉を口にしたのを聞いたことがあった。B+ランクのヨムレイを倒すには、複数のヨム・エグゼキューショナーが協力する必要があるはずだった。Aランクは、避難命令が必要な災害だった。


しかし、今、ここにいる――目の前に。


地面がひび割れ、二体のヨムレイが足を踏み出すと、赤い光が煙を染め上げた。


カイトは叫んだ。「アイリ!ダイゴ!俺は右のやつを相手にする!」


「了解!」

アイリは答え、刃を輝かせながら左へ飛び出した。ダイゴも続き、杖を燃えるようなオレンジ色に輝かせながら背後から攻撃した。


二つの力が衝突した――力と闇がぶつかり合う。


俺はそこに立ち尽くし、膝を震わせながら、彼らのシンエンがモンスターの堕落したエネルギーと衝突するのを見ていた。彼らの攻撃から放たれる光が、星屑の嵐のように瓦礫を照らしている。それぞれの衝撃で地面が揺れた。それぞれの悲鳴が俺の心を切り裂いた。


助けたい。

助けなければ。


しかし、足が動かない。

体が恐怖、痛み、無力感を覚えている。


俺にできるのは、見ていることだけだ。


俺は自分の心臓の音が、彼らの叫び声よりも大きく響いているのを聞いた。結界の光が、震える俺の手に反射している。


「俺は無力だ。」

俺は呟いた。戦いの轟音にかき消されるほど小さな声で。「俺には何もできない…」


またエネルギーが爆発した。

ダイゴが吹き飛ばされ、半壊した壁に激突した。


「ダイゴ!」

アイリは叫び、彼の方へ振り返った――しかし、2体目のヨムレイが突進し、彼女の腕を切り裂いた。血が床に飛び散り、青白い銀色の結界に深紅の色を添えた。


カイトは再び攻撃しようとするクリーチャーを阻止した。彼の剣はより明るく燃え、彼のシンエンは空気を切り裂くように叫んだ。「天翔テンショウ聖撃セイゲキ!」


神聖な光の垂直なビームが上空から降り注ぎ、ヨムレイの胴体を切り裂いた。クリーチャーは咆哮し、その体は真っ二つになった――しかし、倒れると同時に、その半分は再び這い寄り始めた。


カイトの呼吸が荒くなった。

彼は限界を超えようとしていた。


「くそっ!」

ダイゴが後ろから叫び、立ち上がろうとした。「一度に両方は無理だ!」


カイトは答えなかった。彼は集中していた――目をクリーチャーに固定し、汗が顎を伝い落ちている。彼の体は震えていたが、その姿勢は揺るがなかった。


一瞬、時間がゆっくりと流れるように感じた。


結界がちらついた。

ヨムレイの光がより強く脈打った。

アイリは口から血を拭い、息を切らしながらも、その視線は決意に満ちていた。


そして俺は…まだ凍り付いて、まだ無力で、まだ見ていることしかできない。


カイトは少しだけ俺の方に顔を向け、その声は騒乱の中でもより静かになった。

「レン…目をそらすな。」


彼の目は穏やかだった。悲しげだった。まるで何が起こるのか、すでに知っているかのように。

「よく見ておけ。いつか、これを思い出さなければならない時が来る。」


彼が何を意味するのか理解できなかった。しかし、その言葉を聞いた時、俺の中の何かが壊れた。


目が焼け付くように熱くなり、拳を握りしめすぎて血が滲んだが、動けなかった。


ヨムレイは再び叫び声を上げた――今回はさらに大きく、まるで俺たちを嘲笑するかのように。

地面が揺れ、ひび割れが俺たちの足元に広がった。空気が黒い霧で満たされた。


アイリが叫んだ。「何かを召喚しようとしている!」


誰ヨムレイは消滅していた。


そしてカイトは…膝をついていた。彼の剣は柄で粉々になり、制服は焼け焦げ、左腕はだらりと垂れ下がっている。彼は戦場を見回した――くすぶる地面、壊れた照明、アイリの静止した体、ダイゴの手は何も掴めないまま宙に伸びている。


彼は微かに微笑んだ――安堵からではなく、言葉では言い表せないほどの疲労から。


レンは震えながら彼に向かって這い寄った。「カイト…」


カイトの頭がわずかに動いた。彼が俺を見ると、その目が和らいだ。


「レン…」


彼はよろめきながら立ち上がったが、途中で体が言うことを聞かず、片膝をついた。彼は血を吐き出し、その声は弱々しい。「お前は…聞いてくれ…」


レンは首を横に振り、涙が顔を伝い落ちた。「いや…いや、お願いだから…そんな風に言わないで…」


カイトは微笑んだ――遠くの炎の赤い光の下で、壊れやすく、消えゆく表情。


「ありがとう。」


レンは凍りついた。「何を言ってるんだ?」


カイトの視線は彼のそばを通り過ぎ、空っぽの通りへ向かった。彼の声は遠くなり、風に乗って運ばれる囁きのようになった。


「お前はまだヨムレイと戦うほど強くない…ヨム・エグゼキューショナーになって戦え。」


彼はレンを見つめ返し、その銀色の目は鈍くなっている。

彼は手を伸ばし、震える手でレンの肩に置いた。

「レン…お前は強い…」


彼の手が滑り落ちた。

最後の息が彼の唇から漏れた。彼の体は前に倒れ、鈍い音を立てて地面に倒れた。


レンは動かなかった。彼の周りの世界は静まり返った。雨が降り始めた――微かで、冷たい雫が彼の肌を打つ。


彼は茫然と、彼を守るために戦った友人たちの生気のない顔を見つめていた。涙が雨と混ざり合い、視界がぼやけていく。


「レン…逃げろ…」


その言葉が再び彼の心に響き渡った。夢の残骸のように、微かで消え入りそうだった。


神聖結界の破片が微かに輝き、風に溶けていった。

新宿は再び静かになった。

そして、レンは一人になった。


煙が新宿の廃墟を漂っていた。通りはひび割れ、焼け焦げ、シンエンが燃えた金属的な匂いが鋼の上の血のように空中に漂っている。神聖結界はとうに消え去り、残されたのは大きな静寂と失われた戦いの微かな残響だけだった。


レンの体は横たわったまま震えていた。カイトが最後の息を引き取ってからどれくらいの時間が経ったのか、彼にはわからなかった――数秒、数分、あるいは数時間かもしれない。世界には音がなかった。雨は止んでいた。彼の腕から滴り落ちる血が、時間の残酷な持続を刻んでいるだけだった。


その時、瓦礫の中から二つの影が現れた。


ヨムレイだ。


彼らはカイトが戦ったものよりも小さかったが、それでも怪物的だった――煙と筋肉質のねじれたシルエット、その体は鈍い深紅の光を放っている。一体は顎が縦に裂けており、もう一体は四つん這いで這い回り、背骨が不自然な角度に曲がっている。


レンの目が大きく見開かれ、瞳孔が震えた。彼の腕は動かない。彼の心は命令を叫んでいるが、体は聞こうとしない。


「動け…」

彼は囁いた。彼の声は冷たい空気の中でバラバラになった。「動け…動け…体を動かせ!」


ヨムレイは一斉に首を傾げ、その光る目は霧の中の残り火のようだった。彼らはゆっくりと、慎重に近づき、彼の無力さを味わっている。


その時、一番近くのものが鉤爪を上げた。


斬撃。


激痛がレンの体を貫いた。彼の視界は真っ白になった。彼の右腕は消え去った――肩で綺麗に切り落とされたのだ。血が噴水のように噴き出し、コンクリートを染め上げた。


彼は叫び、その声は生々しくひび割れている。

「アアアアア――!」


彼は震えながら前に倒れ、腕があったはずの空気を掴んだ。

「くそっ!くそっ!くそっ!」

彼は叫び、それぞれの言葉が血と涙で詰まっている。


彼は這おうとし、壊れた地面を這いずり回った。全ての動きが神経を雷のように走らせた。世界がぼやけ、端が消えていく。


二体目のヨムレイが彼に追いついた。その手が彼の左足を掴み、鉤爪が肉に食い込んだ。


そして――

破裂。


彼の悲鳴が静かな夜を切り裂き、廃墟の間にこだました。彼の体は激しく痙攣し、血が彼の足元に溜まっていく。彼の足は消え去った。痛みはあまりに大きく、ほとんど非現実的だった――耐え難くて麻痺してしまうほどだった。


彼は息を切らし、息を吸おうとした。視界が揺らぎ、端が黒くなっていく。

「俺は…死ぬのか?」

彼は思った。「眠い…」


彼は数インチ這いずり、巨大な壊れたコンクリートの板のそばに倒れ込んだ。それは崩壊した壁に寄りかかっていた――死者のための墓石だ。


レンはそこに座り込み、背中を岩に預け、胸はゆっくりと上下している。ヨムレイは攻撃してこなかった。彼らは数メートル離れた場所に立ち、見ている。彼らの呼吸は重く、ほとんど楽しんでいるかのようだ。


「わかった…」

レンは囁いた。「やつらは俺に苦しんでほしいんだ。」


彼は弱々しく微笑んだ。震える、壊れたもの。「たぶん…やつらを責めることはできない。」


雲がわずかに切れ、微かな月の光が差し込んだ。それは彼の血まみれの顔に触れた。彼の目は和らぎ、もはや恐怖ではない何かで満たされている。


「母さん…父さん…」

彼は声を弱めながら囁いた。「ついに…お前たちのところへ行くことができるのか?」しばらくの間、全てが静かだった。


その時――彼の頭の中で声がした。深く。こだまして。古代の。それは洞窟の中で何千もの魂が囁いているような音だった。


「若き者よ…」


レンは半分閉じたまぶたを震わせ、目を開けた。「だ…誰だ…?」


「我に身を委ねよ…さすれば、生きるであろう。」


その口調は穏やかだったが、その背後にある重みは息苦しいほどだった。神のように優しくはない――それは命令的で、果てしなく、幾世代にもわたる戦争を見てきた何かのようだった。


レンの唇が震えた。「こ…これは何だ?天の声…?俺は…受け入れられたのか…?」


彼は目を閉じた。彼の呼吸が遅くなった。


そして、世界が変わった。

彼の周りの全てが消え去った。


彼は赤い虚空の中に立っていた――あるいは浮いていた。渦巻く深紅の雲と黒い星でできた宇宙。彼の足元の地面は固体ではなかった。それは液体の炎の反射面であり、呼吸をするたびに波紋が広がった。


「ここは…どこだ?」

レンは尋ねた。彼の声は広大な空間に果てしなく響き渡る。


その声が再び聞こえた。今回はさらに大きく、空気を震わせた。

「我はお前の体を支配する…さすれば、生きるであろう。」


レンは振り返ったが、姿はなかった――ただ、あらゆる方向から見られているという感覚だけがあった。彼の体は硬直し、手足は麻痺した。


「な、何を――」


突然、彼の胸が光を放った。赤い光が内側から噴き出し、エネルギーの線が彼の体全体に広がった――根のようだが、完全に真っ直ぐで、胸の中心にある明るい核に向かって収束している。


彼は動けない。息もできない。

そして、彼の体は現実に戻った。


新宿の廃墟の中で、レンの体が痙攣した。ヨムレイは動きを止め、好奇心で首を傾げた。


彼の左足が再生し始めた――筋肉が光の糸から織り上げられ、皮膚が骨を覆うように編み込まれていく。そして彼の右腕が眩い閃光の中で再生し、そのプロセスはほとんど瞬間的だった。


レンの目が開いた――しかし、もはや彼のものではなかった。

それは白く、純粋で光り輝き、瞳孔がなかった。


ヨムレイは咆哮し、突進してきた。

レンの体は、彼らが追いつく前に動いた。彼は最初のヨムレイの鉤爪を空中で掴んだ――素手で。その衝撃で地面が揺れ、衝撃波が通りを駆け抜けた。


彼は握りしめた。ヨムレイの腕がガラスのように砕け散った。


そして、彼の体は消え――二体目のヨムレイの上に現れ、空に向かって蹴り上げた。彼の跳躍の力で足元の地面がひび割れた。


レンはもはや制御できていなかったが、意識はあった。自分の体を通して、自分の体があたかも神聖で怪物的な存在のように戦うのを目撃した。


彼は痛みを感じない。恐怖も感じない。ただ、空虚――そして殺したいという燃えるような本能だけ。


彼の体の声が、彼の唇は動かないのに語りかけた。それは人間ではなかった。

「よくも我のものに触れたな。」


戦いは空に舞い上がり、赤い光が雲の間で閃光を放った。


【車内 - 3人のメイランクのヨム・エグゼキューショナー】


装甲車は空っぽの通りを疾走していた。前方の街並みは、雲の中に閉じ込められた稲妻のように、赤と白の光がちらついていた。


「おい、あれが見えるか?」

運転手が不安そうに言った。


「ああ…誰かが上で戦っているようだ。」

リーダーが身を乗り出し、目を細めた。「二体のヨムレイ…いや、もっといるかもしれない。」


後部座席の少女が窓に手を押し当てた。「あの光…普通のシンエンじゃないわ。一体新宿で何が起こっているの?」


運転手はハンドルを強く握りしめた。「戦っているやつがスタミナを失ったら、終わりだ。急がなければ。」


車は加速し、サイレンが遠くで微かにこだました。

彼らの上空では、3つの光が空で衝突し、雲を揺るがしていた。


---


レンの憑依された体は、右手をヨムレイに向けた。エネルギーが彼の掌に集まった――最初は小さな球体だったが、周囲の空気を歪める赤い光の螺旋状の球体に拡大した。


ヨムレイは咆哮し、突進してきた。

終焉シュウエン。」


爆発が起こった。


深紅のシンエンのビームが夜空を切り裂き、両方のヨムレイを瞬時に蒸発させた。彼らの体は悲鳴を上げながら灰になり、風に溶けていった。


レンの体はひび割れた舗装にそっと着地した。彼の目から光が消えた。彼の右手が脇に落ちた。ゆっくりと、彼の意識が戻ってきた――まるで悪夢から目覚めるように。


彼は膝をつき、息を切らした。「た…誰なんだ?!お前は…一体何なんだ?!」


答えはなかった。

声は消えていた。彼の中の赤いエネルギーは弱まり、胸の中に退却していく。彼の体は再び重く感じられ、まるで糸が切れた操り人形のようだった。


---


数分後、ヘッドライトが通りに現れた。メイランクのヨム・エグゼキューショナーの車が瓦礫の近くに停車し、3つの人影が現れた。


リーダーは――短い銀髪と穏やかだが鋭い目をした背の高い男で――あたりを見回した。彼の名札にはタカムラ・ヒロシと書かれていた。


彼の後ろには、短い三つ編みに結んだ赤褐色の髪の若い女性――カオリと、顎に傷跡のあるずんぐりした男――カズトがいた。


タカムラの視線が戦場を捉えた。「ひどい有様だな…」

彼はカオリに振り返った。「ここにいたヨム・エグゼキューショナーがまだ生きているか確認しろ。」


「了解しました。」

彼女は遺体に向かって走り出した。


ヒロシはあたりを見回した。「ヨムレイはどこだ?反応がない。」


ヒロシはディテクターを取り出した。画面には何も表示されない。「何…これは?」


彼は血まみれだが奇跡的に無傷で震えているレンの方を向いた。


彼はしゃがみ込んだ。「坊や、ヨムレイはどこにいるんだ?」


レンは躊躇した。彼の唇が震えた。彼はまだ自分の内側に潜んでいる存在を感じることができた。もし彼らに真実を話したら、彼らはどうするだろうか――彼を研究し、投獄し、あるいは殺すかもしれない。


彼は弱々しい笑顔を浮かべた。「やつらは…いなくなった。あの3人が…追い払ったんだ。」

彼はカイト、アイリ、ダイゴの遺体を指差した。「彼らは俺を守るために命を懸けたんだ。」


ヒロシの目はわずかに和らいだ。「そうか。よく戦ったんだな。」


カオリが顔色を悪くして戻ってきた。「ヒロシ…もう…」


彼は一瞬目を閉じた。「わかった。」


カズトは腕を組んだ。「よく持ちこたえたと思うよ。B+ランクのヨムレイが2体もいたんだ。そう簡単にできるもんじゃない。」


ヒロシは立ち上がり、赤いエネルギーの痕跡がまだ微かに輝いている空を見つめた。「ああ…だが、何かおかしい。あのヨムレイはディテクターの範囲を突破するはずがないし、あのエネルギー反応も…やつらのものではない。」


彼はレンを振り返ったが、少年は今では半分目を閉じ、疲労が彼を覆っていた。


ヒロシは彼が前に倒れる寸前に受け止めた。

「大丈夫…俺たちがいる。」


彼はレンを優しく抱き上げ、車の中に乗せた。少年の呼吸は安定し、彼の体はついに安らぎを得た――今のところは。


車が薄れゆく夜の中へ走り去る時、ヒロシは再び廃墟を振り返った。空気はまだ微かに赤く輝き、まるで巨大な何かが目覚め、再び眠りについたかのようだった。


全てを失い、未知なる力に身を委ねたレン。しかし、その力は彼自身を蝕み、自我を奪いかねない危険なものだった。辛うじて生き残ったレンは、ヨム・エグゼキューショナーに保護されるが、彼の身に宿った力は、新たな波乱を巻き起こす予兆となる。希望か、それとも更なる絶望か。次回の物語も、どうぞお楽しみに。


最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました!

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