青木ヶ原樹海 狩猟編第二部
みなさん、こんにちは!!今回のチャプターでは、不気味な青木ヶ原の深部へと足を踏み入れます。そこでは、木々が単なる影以上の何かを隠しています――奇妙な足跡、謎のエネルギー、そして私たちを崖から突き落とそうと狙うヨムレイたち!✨
巨大なAランクの魔物たちが乱入し、チームがバラバラに分断されて暗闇の中に放り出された時、事態は緊張から「絶望」へと変わります。一体、誰が裏で糸を引いているのでしょうか? そして、夜が明ける前に再び仲間と合流することはできるのでしょうか?
これからのチャプターで、その答えを見つけに行きましょう! 絶対に見逃さないでくださいね。✨✌️
私たちは装備を整え、再び隊列を組んだ。奥深くへと進むにつれ、湿った土がブーツの下でぐちゃりと音を立てる。太陽の光は厚い天蓋に遮られ、苔むした根の上には光と影のまだら模様が揺れていた。その根はまるでねじれた指のように地面を這っている。俺は最後尾を歩き、腰の剣の柄に手を置いた。紅を帯びた鋼は、革の柄巻き越しにも温かく感じられた。その重みは今や馴染み深いものであり、音さえも飲み込むような森の重苦しい静寂の中で、唯一の安らぎだった。
「翼から全ユニットへ」
翼の僕たちの頭の中に響くテレパシーの声は、すぐ隣に立っているかのように明瞭だった。
「志郎が北西に向かうヨムレイの痕跡の密集を捉えた。探知機の反応はソリッドブルー、ランクはCからC+。それから、その先の深部に建造物がある。人為的なものに見えるけど、詳細はまだ不明だ。警戒して進んでくれ。あ、それから志郎が、前方の地面に不安定な場所があるから峡谷付近では足元に気をつけろって言ってる」
「了解した、五十嵐君」
樹が声を上げた。森の遮音性を突き抜けるような通る声だ。彼は巨大な剣を握り直した。その黒い刃は、わずかな光さえも吸い込んでいるかのようだった。
「黒鋼チーム、針路を北西に修正。密に連携しろ、何が待ち受けているか分からん。各班の間隔は十メートルを維持。探知機を常に確認し、ランクに変動があればすぐに合図しろ」
俺は前方を見た。颯太がベルトに手を差し込み、ダガーを半分引き抜いた状態で歩いている。休息中であっても、彼は解き放たれるのを待つバネのような静かな緊張感を漂わせていた。彼の周囲には「碧嵐」の神縁が微かに脈動し、動くたびに空気をわずかに震わせている。その隣には麗奈がいた。腰には銀の細工が施された双扇を畳んで差している。彼女が集中している時によくやる癖で、扇の表面の複雑な模様を指でなぞっていた。数歩先を行く正人は、長柄武器を肩に担ぎ、まるで影を見透かすかのように周囲をうかがっている。彼の「黒曜眼」は、俺たちが見落とすような痕跡をすでに捉えているはずだ。
「桐生さん」俺はペースを上げて彼に追いついた。地面が緩やかに下っており、躓かないように木の根を掴んで体を支える。「さっき、他の人には見えないものが見えるって言ってたよな。ここで何か見つけたか?」
正人は少しだけ顔を向け、暗い瞳で俺を見た。
「風凪。ここの地面だが、三日前に何か重いものが泥の中を引きずられた痕跡がある。ヨムレイじゃない。あいつらの痕跡はもっと不規則で混沌としている。これは意図的で、計算されたものだ。土の圧縮され方を見ろ。対象は少なくとも一トンはあり、ゆっくりと移動していた。何かを運ぶには十分な力があるが、急ぐほどではない何かに引かれてな」
俺は地面を見下ろしたが、不揃いな土と散らばった葉しか見えなかった。泥はすでに乾き、日光の届かない森の中で所々ひび割れている。
「ただ見ただけで、どうしてそんなことまで分かるんだ?」
「黒曜眼だ」正人は簡潔に答え、こめかみを指で叩いた。「俺には動きが残した残留エネルギーが見える。時間の足跡のようなものだ。荷重の分布からして、二つの大きな物体か、あるいは一つの極めて巨大なものだ。それに、もう一つある」
彼は立ち止まり、味を確かめるように空気を嗅いだ。
「鉄と腐敗の臭いだ。血じゃない。血はもっと鋭い臭いがする。これは錆と腐敗した植物が混ざったような、だが何かが間違っている臭いだ。人工的なな」
「俺に確認させてくれ」
左側から達也がいつものように冷静な声で言った。彼が目を閉じると、指先に淡い青い火花が踊るのが見えた。彼の「雷撃」の神縁が大気中の何かに反応しているのだ。
「空気中に電荷を感じる。自然なものじゃない。通常、雷は湿気のパターンに従うが、これはどこかに蓄積されているかのように特定の場所に集中している。ヨムレイの神縁か、あるいは翼が言っていたあの建造物の影響かもしれない」
彩香が俺たちのそばに寄ってきた。冷え切った森の空気の中でも、彼女の吐息は小さな白い筋を作っている。彼女の「氷」の神縁は体温を低く保つため、近くに立つと彼女はいつもひんやりとしていた。
「火星さん、少し散開しませんか? 支援可能な距離を保ちつつ、より広い範囲をカバーすべきです。この先は森が開けていますし、お互いを見失わずに動けるはずです」
「いい考えだ、皇さん」
樹が前を向いたまま応じた。
「月蝕チームは左翼、黒鋼チームは中央、三光チームは右翼。十メートルの間隔を維持しろ。異常な痕跡、奇妙なエネルギー、あるいはヨムレイを発見したら即座に合図を。五十嵐君が中継するが、地上での目視が一番確実だ」
俺たちは指示通りに分かれた。森が開け、樹木の間隔が広くなったことで、より多くの光が差し込んでくる。三光チームの先頭を歩く陽人は、剣を肩に担いでいた。その刃には、解き放たれるのを待ちわびるかのように炎が微かに揺らめいている。乾いた葉を燃やすことなく炎を制御するその技術は、高等な志ランクにしか成し得ないものだ。愛子と美奈が彼のすぐ傍を固めている。愛子は筋肉を強張らせて衝撃に備えるかのように硬直した姿勢を保ち、一方で美奈はリラックスした様子ながらも、手は短剣の上に置かれ、指が細かく練習通りの動きを繰り返していた。
「蓮」左翼を歩きながら、周囲を警戒していた達也が静かに声をかけてきた。「お前の『紅』の神縁だが、さっき虚無断裂を使った時、何か違和感はなかったか? 木々とエネルギーの干渉の仕方だ。焦げ跡が異常だった。直接触れて焼けたというより、内側から爆発するように焼けていた」
俺はその瞬間のことを思い出した。紅い閃光がヨムレイを紙のように切り裂いたが、残された木の幹は、成長輪に沿って螺旋状にひび割れ、焦げていた。
「……いつもより激しく感じた。エネルギーが何かを飢えさせているような、そんな感覚だ。森を傷つけないように抑えようとしたんだけど、まるで意思を持っているみたいに突き進んでいったんだ。うまく説明できないけど」
「気をつけておけ」達也の視線は前方から逸れることはなかった。「属性を持つ神縁には、ランクと修練に基づいた明確な限界がある。だがお前のは予測不能だ。制御できれば強みになるが、窮地で制御を失えば危うい」
俺が答える前に、鋭い破砕音が森に響き渡った。風よりも遥かに強い力で木の幹が引き裂かれたような、不自然で大きな音だ。その一秒後、石を擦り合わせたような、耳障りで不気味な咆哮が響き、首筋の毛が逆立った。
「接触! 三時方向、五十メートル!」陽人の鋭い声が響く。彼の剣から炎が噴き出し、枯れ葉を焼き払いながらも生きた植物には触れない、精密に制御された火の尾を引いて彼は突進した。
「こちら翼! 茂みから多数のヨムレイが出現! 十二体を確認、すべてCランク! 北と東からも増援が接近中、少なくとも八体が三光チームを包囲しようとしている!」
俺は流れるような動作で剣を引き抜いた。紅いエネルギーが腕を駆け上がり、刃を不気味な光で染め上げる。左側では達也がすでに動いていた。彼の体は青い雷光の残像を残し、数秒で距離を詰める。神縁による強化がなくとも、彼の速度は凄まじい。俺が見てきた中で、彼は間違いなく最速の戦士の一人だ。
「蓮、左をカバーしろ!」達也が叫び、剣を大きく薙いだ。刃から放たれた雷撃が三つに分かれ、愛子の側面に飛びかかろうとしていたヨムレイを直撃する。奴らは痙攣して倒れ、黒い煙となって霧散したが、茂みの奥からはさらに多くの個体が溢れ出してきた。
今回のヨムレイは、先ほど戦ったものとは違っていた。体長は七フィート近くあり、肌は光の中で波打つような病的な灰緑色をしている。ガラスの破片のような長い爪は、木材や金属さえも容易に切り裂くだけの鋭さを持っていた。瞳は虚ろな黒い穴のようだが、その動きには知性が感じられる。ただ盲目的に突っ込んでくるわけではない。奴らは連携し、俺たちを挟み撃ちにして、右手の樹木の間から見える急な崖へと追い込もうとしていた。
俺は剣を強く握り、体内を流れるエネルギーに集中した。左から二体、足を狙って低く滑り込んできている。もう一体は頭上から。まずは下の二体を仕留め、その勢いを利用して三体目が食らいつく前に迎撃する。俺は踏み込んだ。紅の神縁が反射神経を研ぎ澄ませ、体がいつもより軽く動く。水平に一閃。紅い気刃が唸りを上げて空気を切り裂き、低い位置の攻撃者たちの足を断った。奴らが悲鳴を上げて倒れると、三体目がその死体を飛び越え、俺の顔面に爪を突き出してきた。
俺は身をかわして回転し、剣を斬り上げた。刃に沿って紅い雷のようなエネルギーが爆ぜ、ヨムレイの胸を貫く。奴は焼けた毛と腐敗の臭いを残して煙となったが、息をつく暇はなかった。背後からさらに数体が、木の幹に爪を立てて降りてきて、俺をチームから孤立させようとしていた。
「蓮、後ろだ!」
颯太が俺の隣に着地した。彼の双剣は銀と青の閃光となって乱舞する。碧嵐のエネルギーが風の刃となってダガーに纏わりつき、三体のヨムレイが爪を振り上げる間もなく切り刻んだ。彼は太い木の根の上に軽々と着地した。その動きは速すぎて、目で追うのがやっとだ。羽ランクの速度は、俺たちの領域とは次元が違う。
「嵐さん!」俺は息を整えながら、別のヨムレイの攻撃を剣で受け止めた。衝撃が腕に響くが、紅のエネルギーで補強された刃は欠けさえしない。「助かった」
彼は答えず、ただ短く頷いて再び動いた。そのダガーは、残酷なほどに美しい軌跡を描く。「追い込まれているな」と、彼は戦闘の喧騒にかき消されそうなほど小さな声で言った。「奴らの攻撃は、すべて僕たちを峡谷の方へ追いやっている。足場の不安定な場所へ追い込み、機動力を奪うつもりだ」
彼が指し示す方を見ると、その通りだった。俺たちが左や前方へ進もうとするたびに、ヨムレイが密集して進路を塞ぎ、尖った岩の並ぶ崖っぷちへと着実に追い詰めていた。
「陣形を崩さないと! 片側を突破できれば、視界の開けた高い場所へ出られるはずだ」
「任せて!」麗奈の声が混沌を切り裂いた。彼女が宙へ舞い、双扇を翼のように広げる。扇の端から星霜の糸が放たれ、銀白色に輝きながら蜘蛛の巣のように空を編んだ。糸は三光チームを遮断しようとしていた五体のヨムレイに絡みつき、その強靭な皮膚さえも切り裂く鋭さで木々に縫い付けた。「桐生さん、今よ!」
正人はすでにそこにいた。彼の長柄武器が完璧な円を描き、周囲に風の盾を作り出す。彼の瞳は黄金色に輝き、黒曜眼が全開になっていた。捕らえられたヨムレイのあらゆる角度、あらゆる動きを計算し尽くしている。彼は正確無比な速度で突きを繰り出し、三体を一気に貫くと、回転して残りの二体の足を払った。「ただ追い込んでいるだけじゃない、時間を稼いでいるんだ」彼は武器を引き抜き、黒い煙を振り払うように一回転させた。「五十嵐君が言っていたあの構造物の中で、何かが準備を進めている。ここ数日、いや数週間前から奴らが集まっていた儀式の残滓が見える」
「三光チーム、巨大な樫の木まで後退しろ!」陽人が叫び、剣から放たれた火炎の波が地面を走り、敵の進軍を阻む炎の壁を築いた。熱気で空気が揺らめくが、その炎は俺たちの陣形の境界でぴたりと止まり、決して味方を脅かすことはない。愛子が前に出た。三体のヨムレイが正面から突進してくると、彼女の体は鈍い金属へと硬化した。石を砕くほどの爪の連撃が彼女の肌を叩くが、火花が散るだけで爪の方が粉々に砕け散った。彼女は眉一つ動かさず、周囲を取り囲む奴らの前に立ちはだかった。「美奈、今!」
美奈が素早く潜り込み、短剣が銀の筋となって空を舞った。彼女の体は絹のようにしなやかで、愛子が敵を釘付けにしている間に、致命的な反撃を流れるような優雅さで回避し、急所を突く。まさに完璧な連携だ。美奈は一体目の首を背後から切り裂き、二体目へと翻る。その隙に愛子が三体目の腕を掴み、炎の壁の中へと投げ飛ばした。
彩香が俺と颯太の合流地点に加わった。彼女が両手を広げると、地面から氷の棘が正確なパターンで突き出し、左翼を迂回しようとしていた四体のヨムレイを串刺しにした。棘は強靭な皮膚を貫くほど鋭く、彼女が手を振ると、氷の塵となって霧散した。「次から次へと! 一体何体いるの!?」
「こちら翼、北からさらに二十体が接近中! それに探知機に反応がある、Bランクが混じっているぞ! デバイスの黄色いランプに注意しろ。こいつらは基礎的な神縁能力を持っている!」
俺は手元のヨムレイ探知機に目を落とした。確かに、青い光は消え、周囲のエネルギーサインと呼応するように黄色い光が激しく点滅している。Bランクのヨムレイは、下位のものより強く、速く、強力な攻撃を繰り出す。属性を操るものもいれば、身体能力を極限まで高めた個体もいる。決して油断はできない。
「全員、密集しろ!」
樹が命じ、陣形の中央に移動して大剣を完全に引き抜いた。刃は森の薄暗さを切り裂く銀色の光を放っている。彼から溢れ出す力――「千」ランクの圧倒的な強さを肌で感じた。
「俺が先頭に立つ。左に月蝕、右に黒鋼、三光は後衛だ! 押し通るぞ。これ以上押し込まれるな! 視界が開け、状況を把握できる高地を目指す!」
樹が真っ先に突進した。大剣の一振りが純粋なエネルギーの波を放ち、十数体のヨムレイを紙細工のように切り裂き、その衝撃波で残りの敵を森の奥へと吹き飛ばした。俺たちはその背後に続き、固い結束で互いを支えながら進んだ。
達也が樹の傍らに並び、彼の「雷撃」がリーダーのエネルギーと共鳴し、攻撃をさらに強化する。「俺が左を掃討する。奴らが連携を整える前に叩き潰す」そう言い残すと、彼の体は青い閃光となって木々の間を駆け抜けた。枝から枝へと跳び回り、無駄のない正確な一撃でヨムレイを仕留めていく。
(……あいつ、すべての足場を計算している)
自分の敵を捌きながら、俺は彼の動きを追った。同時にいくつの標的を追跡しているんだ? 次の攻撃がどこから来るか、数秒先の敵の動きをすべて読み切っている。
颯太も負けじと動いていた。碧嵐を纏った彼は達也に匹敵する速度で、空中で鋭く回転し、ダガーを旋回させてヨムレイを切り刻んだ。風の余波が敵のバランスを崩し、俺たちの追撃の餌食にしていく。
「麗奈、隙間を埋めてくれ!」
彼の叫びに応え、麗奈が即座に星霜の糸を編み上げ、側面から忍び寄る敵を絡め取る防護網を構築した。「桐生さん、何が見える!?」
麗奈が、砂を吹き付けて目潰しを狙うBランクのヨムレイを糸で拘束しながら叫んだ。
正人は戦場全体を俯瞰し、黒曜眼をフル稼働させていた。その瞳は秒を追うごとに輝きを増していく。
「攻撃にパターンがある。奴らは波状攻撃を仕掛けているんだ。三十秒ごとに新しいグループが別方向から現れ、戦っていた奴らは回復のために後退する。何かに統制されているな……まだ見えないが、木の影か、あの建造物の近くに司令塔がいるはずだ」
正人は突きを放ち、彩香の背後に迫っていた個体を貫いた。
「後ろにもまだ大群がいる。ここで全滅を待つわけにはいかない。包囲を破って、操っている元凶を叩くぞ!」
「陽人くん!」
彩香が叫び、炎を操るBランクヨムレイの猛攻を氷の壁で防いだ。炎が氷に激突し、一瞬で視界を奪うほどの蒸気が立ち込める。
「その火で、気を引くことはできない? 私たちが突破口を開くための大きな隙が欲しいの!」
「任せろ!」
陽人が剣を高く掲げると、彼の周囲に螺旋状の火柱が巻き起こった。熱量と輝きは増し続け、ついには広場を横断する巨大な炎の壁へと成長する。周囲の空気が熱で歪む中、陽人はその中心に毅然と立ち、炎の一分一厘を完全に支配していた。
「愛子、美奈、合図したら動け! 俺が壁を落とした瞬間、右側の隙間から一気に抜けるぞ!」
愛子が頷き、金属化した体をさらに強張らせて三光チームの先頭に陣取る。美奈はその傍らで低く構え、短剣を抜き放った。
「私たちが右サイドを引き受けるわ。木立の中の道を切り開いて、みんなが安全に動けるようにする!」
俺は剣を握る手に力を込めた。紅のエネルギーが全身を駆け巡り、筋肉の一つひとつが軽く、そして強大になったように感じる。
(……前線を突破できれば、高地からあの建造物を確認できる。まずはここを抜けるために、追撃を許さないほどの打撃を叩き込む!)
俺はすべての神経を刃に集中させた。剣はかつてないほどに輝き、紅い粒子が火の粉のように俺の周りで舞い踊る。
陽人の炎の壁がさらに高く燃え上がり、敵の顔に揺らめく橙色の影を落とした。ヨムレイたちはその猛烈な熱にたじろぎ、皮膚が焦げ、煙を上げる個体も出始める。統制の取れていた奴らの動きが、一瞬だけ乱れた。
「今だ!」
陽人の咆哮とともに、剣が振り下ろされた。巨大な炎の壁は一筋の濁流へと姿を変え、敵の陣形の中央を焼き払いながら道を作る。その「火の回廊」を、愛子が先頭を切って突き進んだ。金属の巨躯で残った敵をなぎ倒し、そのすぐ後ろを美奈が銀の閃光となって駆け抜け、正確に敵を屠っていく。
俺も瞬発力を爆発させて突進した。紅い気刃を連射し、進路上のヨムレイを次々と切り裂く。黒いエネルギーを爪に纏わせたB+ランクが飛びかかってきたが、俺は半身でかわし、そのまま垂直に斬り下ろした。紅い雷が走り、悲鳴とともに敵は霧散する。
足元は露出した木の根や倒木で不安定だったが、達也が先行して道を照らし、障害物を事前に排除していく。彼は巨大な根を飛び越えながら、空中で体を捻り、後方を遮断しようとする一団に雷撃を叩き込んだ。
「蓮、気をつけろ!」
達也の声に振り向くと、岩のような皮膚を持つ八フィート近い巨体のB+ランクが、ねじれた大木の棍棒を振り回して突っ込んでくるところだった。俺が迎撃しようとした瞬間、颯太がその巨体の背後に跳んだ。
「碧嵐」のエネルギーをダガーに込め、皮膚の薄い肩口へ深く突き立てる。巨獣が苦悶の咆哮を上げ、棍棒をめちゃくちゃに振り回した。木々が粉々に砕け散り、破片が降り注ぐ。その隙を逃さず、達也の剣から放たれた強力な雷撃が巨獣の頭部を割り、沈黙させた。
「よくやった、二人とも!」
樹が大剣でさらに一団を蹴散らしながら叫ぶ。その巨剣は重さを感じさせない速度で振るわれ、一撃ごとに衝撃波が巻き起こる。
「このまま押し通るぞ! 峡谷の縁はすぐそこだ。あの斜面を駆け上がれば、俺たちの勝ちだ!」
俺たちは一つの生き物のように動いた。彩香の氷が泥濘や沢に即席の橋を架け、陽人の炎が敵を遠ざけ、愛子と美奈が攻防一体の守りを見せる。麗奈の糸が敵を拘束し、正人が黒曜眼で「地面が脆い」「罠がある」と的確に指示を出す。
「前方に陥没穴だ。左へ十メートル逸れろ!」正人の警告がなければ、俺たちの誰かは地面に飲み込まれていただろう。奴らは数日前から、エネルギーを使って地下から土壌を侵食させていたのだ。
だが、峡谷の縁に辿り着き、対岸へと続く細い登り道が見えたその時、森が爆発したような混沌に包まれた。
内臓を揺さぶるほどの地響きのような咆哮が響き、木の葉が雨のように降り注ぐ。前方から現れたのは、これまでの比ではない絶望的な一団だった。三十体以上のBランク、そしてその先頭には――探知機が不気味な緑色の光を放つ、三体の巨影。
「Aランク……!」
翼の悲痛な声がテレパシーで響く。
「三体のAランクヨムレイが来る! 志郎によると、背後にはさらに数百……! 地下道に隠れていたんだ! 完全に退路を断とうとしている!」
「全員、下がれ!」
樹が叫んだが、遅かった。先頭のAランク――四本の腕を持ち、皮膚が花崗岩のように硬い怪物が突進し、その剛腕を薙ぎ払った。凄まじい衝撃波が俺たちを吹き飛ばす。
俺は回避を試みたが、巨腕の端が脇腹を掠めた。視界が激しく回転し、太い木の幹に叩きつけられる。肺の中の空気がすべて押し出され、一瞬意識が遠のいた。痛みをこらえ、剣を握り直して顔を上げると、同じように吹き飛ばされた颯太と、腐食性の毒液を浴びそうになり後退した達也が俺の元へ駆け寄ってくるのが見えた。
「蓮! 大丈夫か!?」
颯太が着地する。彼の二の腕には深い切り傷があり、血が流れていた。彼は傷口に手を当て、青いエネルギーで止血を試みている。肩で息をする彼の顔には、枝で擦ったような無数の傷があった。
「ああ……大丈夫だ」
俺は何とか立ち上がった。脇腹に走る激痛を無視し、微かに明滅する紅い刃を構える。
「みんなは……他の連中はどうなった!?」
達也が俺たちの横に立ち、ボロボロになった上着を脱ぎ捨てて肩の傷を縛った。彼の瞳は冷徹に戦場を分析している。
「Aランクに分断された。見ろ」
指し示された先には、地獄絵図が広がっていた。
花崗岩の怪物が樹を木に叩きつけ、さらに追撃を仕掛けている。樹は銀のエネルギーを盾にして耐えているが、完全に孤立していた。
右側では、彩香、陽人、正人が竹林の中へと押し込まれ、炎と氷の壁で必死の籠城戦を続けている。
左側では、翼を持つAランクが麗奈を影の糸で拘束し、愛子と美奈がそれを救おうと死力を尽くしていた。愛子の金属の体には無数の亀裂が入り、美奈も限界に近い動きで敵を牽制している。
そして俺たちの前には、次々とヨムレイの増援がなだれ込み、合流の道を完全に塞いでしまった。
「……今はあっちへは行けない」
達也が雷光で二体の敵を貫きながら言った。
「俺たちは北の深部へ押し流されている。このままじゃ各個撃破されるぞ」
「僕が道を作る。ついてきて!」
颯太が宙へ跳び、碧嵐の竜巻を巻き起こした。風が土砂を巻き上げ、敵の視界を奪う。その隙に俺たちは森の奥へと走り出した。背後からは追撃の叫びが聞こえるが、ある一線を越えた瞬間、奴らはピタリと足を止めた。まるで、この先へは入るなと命じられているかのように。
俺たちは狭い峡谷の中へと逃げ込み、壁に背を預けて荒い息を吐いた。頭上には深い苔と蔓が垂れ下がり、光を遮っている。聞こえるのは自分たちの鼓動と、蔓から滴る水滴の音だけだ。
「……分断されたな」
颯太がダガーの血を苔で拭いながら、静かに言った。その瞳には隠しきれない不安が揺れている。
「奴らの思い通りだ」
達也も黙って剣を拭い、遠くから聞こえる戦闘の余波に耳を澄ませていた。
右からは竹林が燃える音。左からは扇が空を切る音と金属音。そして後方からは、大気を震わせる石と鋼の激突音。
樹は、たった一人でAランクと対峙している。
太陽が沈み始め、空は俺の剣と同じ不吉な紅に染まっていた。
この青木ヶ原のどこかで、この襲撃を仕組んだ「何か」が俺たちを嘲笑っている。今はただ、この暗い峡谷で傷を癒し、次なる決戦に備えるしかなかった。
これにて第2部完結です!✨✌️
静まり返った森を突き進む緊張感から、予想だにしなかったAランクの脅威による大混乱まで、まさに怒涛の展開でした。チームはバラバラに分断され、リーダーたちは絶望的な状況に直面しています。そしてこの森のどこかで、何かが大きな陰謀を企てている……。
果たして蓮、颯太、達也は仲間の元へ戻れるのか? 樹はあの花崗岩の巨獣を相手に持ちこたえることができるのか? そして、チームが先に捉えたあの謎の建造物には一体何が隠されているのか?
すべての答え(そしてさらなるアクション!)は次章で明らかに。木々の天蓋に潜む影がその真の秘密を現す時、何が起きるのか――絶対に見逃せませんよ!




