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第98話 チーム・ウィクトーリア ④

「さて、最後は手塚さん」


 細い首を小さく頷かせたレイミは、ほほ笑みながら日野兄妹へ向き直った。


「はい。手塚レイミと言います。このチームに入って日が浅く、統くんと同じく念者エスパーです。ネオ東京・文京エリアの学校に通っています。授かった力をより上手く使うため、毎週土曜は支援センターで訓練を受けています」


「念者については少し聞いたことがあります。脳の一部が特異的に活性化して、

【サイコギフト】と呼ばれる力が使えるようになるんですよね?」

「日野くん、詳しいですね」

「はい。通っている道場の先輩に教わりました。ギフト発動時は、一般人より脳波が上昇するんですよね」

「日野くんは意外と情報通だな」


 統が感心すると、陽太は頭に手を当てて照れたように言う。

「道場には念者の方が多いので」

「そうなんですか」

「手塚さん、頭から生えている《《触手のような手》》も、サイコギフトの一つなんですか?」


 陽菜の問いに、レイミは一瞬だけ笑顔をこわばらせた。

「……私の《《手》》は、少し事情が違うんです」

「どういうことですか?」

「手塚さん、無理に答えなくていいよ」


 純一が気遣うと、レイミは首を横に振った。


「いえ、事実ですから。受け止めるしかありません。日野くんがチームの一員になるなら、知っておいてもらって構いません……私は、ある組織に拉致され、新種の念者を作る実験を受けさせられました」


 重い告白に、陽太は愕然とした表情になる。


「えっ……」


 陽菜もショックを受け、両手で口元を押さえた。


「元はテレキネシスを基盤に、改造された力らしい」


「改造されたサイコギフト……?手塚さんは、もともとは念者ではなかったんですか?」


「ええ。私は普通の一般人でした。そこに別の生命体の脳細胞を頭脳に“植入”され、私の脳と統合して、この“手”を自由に生やせるようになったんです」


「酷い……」

「どうしてそんなことが……」


 レイミが苦い記憶を思い出し、目をそらして表情を曇らせる。代わって純一が説明した。


「詳細によれば、念者を“生体兵器”として扱う目的で動いていた組織――《《XT》》。素体に適した人間を拉致し、作り上げた生体兵器を売買し、暗殺依頼で動いていた。政府は警察や異能者の協力を得て徹底的に摘発し、やがて組織は瓦解したが、一部関係者は逃走中だ」


 人の地雷を踏んでしまったと気づいた陽菜は、肩を落として小さく謝る。


「……辛いことを思い出させて、ごめんなさい」


 レイミは苦笑して首を振った。


「いえ、もう過去のことです。生体兵器として改造されましたが、《《手が多い》》この力を、私は人の助けるために使います」

「手塚さん、今はもう普通の暮らしに慣れているように見えますが、その力の制御は?」


「最初は練習に苦労しました。でも支援センターの指導や、支援チームのみなさんの助けで、今は触手で子どもと遊んだり、強盗犯に奪われたバッグを取り戻したり、貴金属運搬車を襲った犯人グループを止めて警察に引き渡したりできています。同時に使える“手”は、今は十本まで」


「それ以上も出せるんですか?」


「髪の毛みたいに数千本も生やせます。ただ、出し過ぎると制御が利かなくなる」

「何でも結局、訓練が大事なんですね。最近よくそう思います」


 統が陽太を見る。


「昨日のシャドマイラの件で、重装特務隊の記録に“日野くんがプラズマの光束で撃破した”とあった。あれだけの高エネルギーを、継続して放てるのか?」


 陽太は稽古課題を思い出し、淡々と答える。


「うーん、プラズマボールなら連投で百球はいけます。プラズマ・ジャベリンの照射継続は10秒を超えませんが、今のところ問題は出ていません」


「疲れないの?」


 陽太は肩をすくめ、気楽に笑う。


「いえ、むしろ撃った後は気分がすごくリフレッシュします。眠気で倒れても、二時間で目が覚めます」


「回復が早いのは羨ましい。私はいったん“巨人化”すると、次までは半日休まないとダメ。無理に変身すると維持時間が短くなって、その後一日昏睡で大変だわ」


「それは大変ですね」


 陽菜は好奇心を持つ子猫のように続いて訊ねる。


「だから、連日シャドマイラが発生した時に海外支援に回るってニュース、あれが理由ですか?」


「そう。誰かが休む間も、戦線は維持しないと。私は最大1時間が限界。兄妹の中には3時間保てる人もいるけどね」


「異能者でも、みんな悩みは抱えてるんですね」


 統が理性的な口調で続ける。


「一般人と大差ないことも多いけど、背負う責任は重い」

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