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第94話 意志を示す、考慮、それと推薦者 ③

大原が陽太に向き直る。


「日野くん、立派な決意だ。昨夜のケンファクニードス討伐も確認した。UCBD(クーリーバ)は君の加入を歓迎するよ」

「……まさか、所長が?」

「うむ。わしが推薦しよう」

知らない人が突然の申し出に陽太は目を丸くする。

「会った事ないので失礼ですが、あなたは誰ですか?」


「ほほ、わしはこの科学支援研究所の総所長、大原啓道おおはらひろみちじゃ」

「はじめまして。日野陽太です」

付いてに陽菜は頷いて言う。

「日野陽菜です」


「日野君の事がよく知っている、今日当所に来て、気軽に構えてくれよい。さて、リー君。君の保護者としての考えはよく分かる。だが今の時世、彼のような志ある若者の力が必要だ。両立できる提案が一つある」


瑤妤は眉を寄せる。


「……ですが、ヤングエイジェントの管理はネオ東京の『シャドマイラ防災対策本部』に限られます。都内への移籍が前提になるはずです」


「ならば、儂ら科学支援隊が管理権限を受け持てばよい。日野くんの力は未知数、リスクを抑えつつ有効活用するには、わしらのサポートが必要じゃ。若い異能者をサポートする実績もある」


大原は陽太を見据える。


「日野くん。君は大型シャドマイラを倒せる力を持っている。君自身、精神と肉体の鍛錬を続けてきたのじゃろう?」


「はい。異能者の道場で学んでいます」

「うむ。自力の修行は立派じゃ。その上で、科学はさらに君の力を後押しできる。効率も安全性も高められる。この支援を受ける気はあるか?」


「でも、僕はまだ実績が少ない。そんな僕に、支援を……?」

「無論、構わん。異能者を支えるのが、儂らの役目じゃ」

瑤妤が口を挟む。

「でも、そのためには研究所に頻繁に通う必要が出ます。八王子に住み続けるのが難しくなるのでは?」


「その距離の問題は解決策がある」

「まさか、あの実験プロジェクトを?」

「そうじゃ。儂の旧友が『ミニ・ワームホールドア・システム』の安定化に成功した。実装例として、八王子の君らの自宅に組み込むのはどうかね」

「所長、それは研究成果の私物化だと疑われるのでは?」

「いずれ彼が実績を挙げれば、“個人利得”ではなく“公的支援”として認められる。理由は立つじゃろう」

「……推薦人はあと二人必要ですが」


「それも些細な問題じゃろ。沖田くん?」


巻き込まれ気味に肩をすくめ、沖田は穏やかに笑った。


「仕方ないですね。これでチームがますます賑やかになります」


「どういう意味です?」

「私は少年支援部・チームウィクトーリアの隊長です。推薦人、引き受けますよ」

「えっ……沖田さんが!?」

瑤妤がなおも案じる。

「でも、陽太の経験はまだ浅い。今年の推薦枠は限られているのに……」


「大丈夫ですよ、リーさん。未熟な異能者を育てるのが私の仕事です。経験は浅くても、彼の昨日の戦い、八王子でのケンファクニードス討伐映像は見ましたよ。才能があり、稀な力もある彼はいずれ、どのみち世間に知られる存在になります」


沖田は圧をかけず、しかし芯のある声で続けた。


「彼は、力を押し殺して生きる性格じゃない。ここで無理に抑えれば、志が歪み、邪道に堕ちるかもしれない。反社会組織に利用される恐れだってあります。だからこそ、UCBDの下で“見える場所”で見守り、鍛え、支えるべきだ。博士も支援を明言している。本人の鍛錬に、科学のサポートを加える。それが一番安全だと思いませんか?」


瑤妤はしばらく沈黙し、思案した。

沖田は手を組み、話を畳んだ。


「とはいえ、推薦人はもう一人必要です」

「研究チームの誰かに頼めばよいのでは?」

「できれば、日野くんと接点のある者が望ましいですね」

「サポートセンターの斎藤くんは?」

「彼は今年の推薦枠を使い切っています」


沖田は陽太に向き直る。


「日野くん、UCBDに、他に心当たりは?」

「居ますが、彼女は推薦者になれるとかわかりません」


陽太はディバイスを開き、赤星瑠衣に相談したいメッセージを送った。


第四基地の訓練室。観覧席で部下の訓練を見ていた瑠衣は、通知に気づいて応答する。


<瑠衣:どうしたの?>

<陽太:ヤングエイジェント志望の件で、推薦人が足りません。>

既読が付いたと思う間もなく、音声通話が入る。


「日野くん。どうしたの? 急にヤングエイジェントに?」

「シャドマイラ退治に専念したいんです。だから――」

「なるほどね。私は構わないけれど、推薦はあと二人必要よ?」

「その件、私から」

陽太はディバイス端末を沖田に渡す。

「少年支援課の沖田です。私と大原所長で推薦します」

「沖田さんが一緒なら話が早いわ。分かった、私も推薦状を送る。配属は沖田さんの下になると思うけど……日野くん、期待してるよ」

通話が切れる。

「これで推薦人は揃いますね」

沖田が頷く。

瑤妤は、いつのまにか陽太がUCBD内で信頼を得ていることに、驚きと安堵の入り混じったため息をついた。

「……分かった。陽太の意思を尊重して、願書を作りましょう。ただし条件がある。ヤングエイジェントになっても、学生としての生活は忘れないこと。成績は今以上を維持する。これは絶対よ」


「瑤妤姉さん、ありがとう! 僕、頑張る!」


保護者からの承諾を得た陽太は、思わず声を弾ませ、大きくうなずいた。

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