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第53話 レポートの解読

接客室に戻った陽太と両親は、検査のレポートに目を通していた。

―――

  名前: 日野陽太

  身長: 167cm 体重: 55kg

 *体温: 40.8~6,300.9度+

  血圧: 87〜108/181〜5629+ 脈拍: 50~89+

  動体視力: 非常に高い(時速10,000km+)視力5.0(左右平均)

 *跳躍力: 垂直29.8メートル

  精神状態: 安定/優

 *走行速度: マッハ25

 *圧力耐性: 2,500t/cm²

 *筋力: 2,000t−

  能力注釈: プラズマ流・発熱・エネルギー感知・超音速移動

 *能力出力: 最大5,800度以上のプラズマ、射程59メートル以上

  素質評価: A++

  制御評価: E

  脅威評価: B+

  総合評価: D

―――


レポートに記載された数値を見た辰昭は、大きく息を飲んだ。


「これ……これが普通の状態で測定されたデータですか?」


瑤妤たまよは落ち着いた口調で答えた。


「はい。特に*印をつけた項目は、精神状態や環境制限により数値が抑えられた可能性があります。実際の最大値は、さらに上と見ています」


亜由実も付け加える。


「陽太くんは、まだ能力を得たばかりで、十分に慣れていない段階です。精神面の成長次第で、出力はもっと伸びるでしょう」


他の人の前で息子にプレッシャーをかけないように、辰昭は笑みを浮かべながら言った。


「いや、これだけでも十分すごいと思うよ」


「ただ、この数値を見る限り、今後は一般人と一緒にスポーツ競技に参加するのは難しいですね」


亜由実の言葉に、辰昭は重く頷いた。


「そうだな。実際、異能者になると退部になる選手も多いと聞く」


数値を見つめながら、陽太は硬い笑顔を浮かべた。


「それは大丈夫です。僕は、もともと部活動には所属していませんから……」


生活への影響を心配していた黛璃まゆりが、やや不安そうに質問する。


「でも……体温が6,000度を超えるって、本当に大丈夫なんですか?」


「ご安心ください。彼の体温は普段は40〜200度程度で安定しており、その時周囲の温度も40度以下に抑えられます。服が燃えることもありません。ただし、強いストレスを受けたときなどは急激に上昇する可能性があります」


検査服を二度も焼き尽くし、鋼鉄製の受信装置さえ溶かした陽太は、ため息を交えて言った。


「でも、プラズマを出してしまえば、さすがに全部焼き尽くしてしまいますよね」


「それが今後の課題です。どうコントロールしていくかが鍵になります」


陽太も理解を示すように頷いた。


「はい。瀬戸さんや沖田さんにも言われました。でも……どうすれば、うまく使いこなせるんでしょうか?」


辰昭が別の項目にも目を留めた。


「この“脅威評価”、もともとはAだったんでしょう?今はB+とありますが……」


「ええ。三日前の記録と現在の観察結果を踏まえて、評価を再設定しました」


「リーさん、そこは私から説明しますね」


と、亜由実が言葉を引き取った。


「陽太くんの能力は確かに高リスクですが、精神的には安定していて優しさも備えています。加えて、親御さんの教育が良かった。多くの異能者を見てきましたが、彼のような子は滅多にいません」


「……うちの息子を、そんなふうに言ってもらえるなんて、初めてです」


「お二人は胸を張って、誇っていいと思います」


その言葉には、先ほど陽太が抱いていた不安へのさりげない返答も込められていた。


「でも、陽太くんが“保護観察対象”にならなかったのは、本当に幸いでしたね」

「え?それって、どういうことですか?」


「脅威評価がA以上になると、UCBD(クーリーバ)によって監視・保護対象になります。B+評価であれば、今は通常の生活が許可されています。ただし、1ヶ月間の観察期間中にトラブルがあれば、再評価が行われます」


社会的に異能者に課せられる責任は重い。制御が未熟なままでは、取り返しのつかない事故を起こす可能性がある。陽太は静かにその現実を受け入れた。


「……わかりました」


陽太は少し俯きながら答えた。異能者という立場がもたらす期待と同時に、重い枷を感じていた。


辰昭はそんな息子に優しく微笑み、二人の担当者に頭を下げた。


「本日は、本当にありがとうございました」


瑤妤は理知的な笑みを浮かべて返す。


「ええ、私たちも、陽太くんの未来を信じています。何かあれば、いつでもご相談ください」


こうして検査を終えた陽太と家族は、研究所を後にした――。


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