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第38話 戸惑う十字路 ④

そして冴姫さきは再び陽太と向き合った。


「ところで、陽太くんの観測はどう?上手くやっているの?」


突然自分の観察テーマについて尋ねられ、陽太は少し間をおいて応じる。


「普通に続いていますよ。太陽は毎日観測していますし、ヴァリテリオン星系の観測も毎日撮った映像をちゃんと検証しています。もしこのパソコンが使えれば、記録データを見せることができますが…」


「そんな方法で観測できるなんて、ちょっとズルいわね。私も使ってみたいわ。」


「アカウントを申し込めば誰でも使えますよ。」


「短時間で観測できるけど、24時間ずっと観測するバージョンとは全然違うものだし、しかも有料だから、お金がない私には使えないのよ。」


「僕は中学の時に連邦オリンピックの天文学部門で賞を取ったので、そのおかげで24時間バージョンの無料アカウントが使えるんです。もし先輩が使いたければ、次に来た時に一緒に使ってみてもいいですよ。」


「本当に?それは嬉しいわ。陽太くん、そういうところが本当にかわいいのよ。」


話しながら、冴姫は感動した様子で身振りを見せ、陽太はそれに笑顔で応じる。


「ええ、そうかもしれませんね。」


「でも、そんなすごい宇宙望遠鏡を使えるのに、他の星系の惑星をもっとはっきり観測できるはずよね?太陽やヴァリテリオン星系だけじゃなくて、陽太くんはずっと恒星を観測しているよね?それには何か理由があるの?」


陽太は直接冴姫を見つめて、素直に答える。


「星がきらきらと輝いているから、見ているだけで好きなんです。それに太陽を観測すると、身も心も暖かくなるような気分になるから、ずっと観測を続けています。」


「でもね、今の人類にとっては、生命のいない恒星よりも惑星の研究の方が価値があると思うわ。」


「私にとっては、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」


「地球の生物学の理論をすべて捨てるなら、そうかもしれないね。でも例えば、太陽のような環境で生きる生命体がいたとしても、人間にとっては住むのが危険すぎるわ。それに人間にとってはメリットがないもの。」


沙也加はのんびりとした笑顔で応えた。


「もし太陽に生命体がいたら、私は会ってみたいわ。」


「いやいや、それはロマンチックな話じゃなくて、ホラーミステリーだよ。準備なしで未知の生命体と接触するのは危険だって、UCBD(クーリーバ)隊の人たちが言ってたでしょ?」


慎輔は片手で顎に手を当てながら、理性的に冴姫の言葉を反論した。


「うーん、それは違うと思いますな。UCBD隊の言ったことはあくまで保守派の対応法ですよ。日野くんが言うように、人間は先入観で宇宙の他の生命体がすべて悪意を持っていると考えがちだけど、それはいい考え方じゃありません。むしろ、他の星を占領しようとする考え方を見直すべきだと思いますよ。」


浪漫平和主義を信じる沙也加が自分の見解をほのぼのに言う。


「宇宙のみんなさんは大家族のように仲良し、付き合いできれば良いよね」


「まあ、私が宇宙望遠鏡を使えるなら、自分で人間が住める惑星を見つけて、自分の名前を付けて、その星に移民したいわ。」


「それはすごく大きな夢だね。でも、人間にはまだ宇宙を自由に行き来する技術が確立していないから……」


「それなら、見つかった後で、いつかその星に行けるように、子孫代々に教えていくしかないわね。」


 豊城先輩はまた空想や妄想をしている。彼女は暴飲暴食をしていて、気持ちの浮き沈みが激しいから、きっと何かストレスが溜まっているのだろう。


 それは陽太の妹、陽菜からよく聞かされた教えだ。自分と慎輔の観察テーマを合わせるには、何か理由があるのだろうか。そう思った陽太は、冴姫の言葉をもう一度考え直し、彼女に尋ねた。


「豊城先輩、何か悩みがありますか?」


「それは部活費のことよ。生徒会が天文部に送るべき補助費をくれないの。」


冴姫は怒りを込めて、両手の指で激しくジェスチャーしながら話し続けた。


「生徒会長は、外から見て実績がなく、部員も少ない私たちのような部活よりも、実際に活動していて夏の大会で成績を残している部活に資金を回すべきだと言っているのよ!」


「生徒会長の言う通りだと思いますよ。確かに私たちの天文部は、みんながそれぞれ自由に行動していて、学校にいないことが多いから、実際に経費を使う場面が少ないんです。もし私が生徒会長なら、もっと経費が必要な、実際に活動している部活に送ると思います。」


冴姫は目を見開いて陽太を睨みつけた。


「あるよ!毎年夏休みには体を使った観測キャンプがあるじゃない!私はそれをすごく楽しみにしているのよ!」


陽太は尋ねる。


「今年はどこに行くつもりですか?」


「ハワイよ!」


ただそれを聞いただけで、陽太は頭が痛くなるほどの苦笑いを浮かべた。

慎輔は冴姫に突っ込んだ。


「それは豊島先輩が行きたいところでしょう?」


「いや、行けたらみんなが行きたいでしょう?ハワイよ、ハワイ!」


陽太は口元を硬くしながら笑って言う。


「先輩、もう少し現実を見た方がいいですよ。たとえ補助費が出たとしても、行けるわけがありません。」


良い提案と思った冴姫は拳を掌を叩いてから言う。


「わかったわ!じゃあ、陽太くん、今からどこのお金持ちの令嬢とでも付き合って、お金を工面してみて!そうすれば夏までにはまた間に合うわよ!」


陽太は頭をかきながら、苦笑いで首を横に振って謝る。


「ごめんなさい、僕、そんな人とは一度も会ったことがありません……」


沙也加は手を合わせて自分の意見を述べる。


「私は佐渡さわたり島か、屋久やく島か、それとも国後くなしり島に行きたいわ。」


沙也加の提案を聞いて、陽太はがっくりと落胆した。


「それは国内ではないか?」


沙也加の提案に助けがないことを悟り、陽太はただ呆れた顔をして彼女を見た。


――桧月先輩、それは可能性があるかもしれないけれど、それでも旅費はかなり高くつくよね……


慎輔は冷静に沙也香の提案をフォローする。


「桧月先輩、いい提案だと思いますが、まずは一つに絞ってください。」


沙也加は悩むように片手で頬を支えながら言う。


「それは難しいわね……」


真剣に考えている沙也香を必死に説得する冴姫。


「さーちゃん……一生に一度の二年生の夏休みだよ、本当にそれでいいの?」


慎輔は話題を切り替えるために質問を続ける。


「ちなみに、豊城先輩の観測テーマはどうなっていますか?」


「私の観測?ノートはあそこの本棚にあるわよ。」


慎輔は冴姫が書いたノートを取り出して、ペラペラと中身を確認した。金星に関する文字がいくつか書かれている以外は、ほとんど真っ白だった。


「先輩、これは本当に二年生の観測ノートですか?」


舌を出して、テヘペロ顔を見える冴姫はやや困って言い訳を始める。


「仕方ないじゃない、昨年の夏のキャンプでキャンプファイヤーに焼かれちゃったのよ。これは新しく作ったものだから。」


一緒にノートの中身を見た陽太は、冴姫を振り返りながら首を傾げて尋ねる。


「先輩、どうしてテーマを金星に選んだんですか?」


冴姫はちょっと考えるように空を見上げ、両手を合わせながら夢見るように答える。


「それは愛と喜びを守る星だから、真剣に観測すれば恋愛が成就するかもしれないと思うの。」


「でも、今の季節に金星を観察するのは難しいですよ」


「それは本当か?」


その返答は、まるで天文学について何も知らない人がするような質問だった。どうやら、冴姫は完全に遊び心で天文部に入ったようだ。


その気持ちを応援するように、陽太は協力的に助言をする。


「今の時期に金星を観測したいなら、深夜から未明にかけての時間が最も適しています。詳しい時間帯はわかりませんが、金星の観察早見表を調べれば、きっとわかるはずですよ。」


「金星の観察早見表って、それは何ですか?」


陽太は冴姫の質問にどう応じるべきか一瞬戸惑ったが、その代わりに慎輔が軽く笑いながらツッコミを入れた。


「問題はそこから始まるのか?」


「まあ、そんなことは後で調べてみよか。今はとりあえずは、お腹を満たしよう。」


そう言って、冴姫は手に持っていた肉まんを大きくかじった。


陽太は優しく声をかけた。


「豊城先輩、観測活動ももう少し頑張ってくださいね。」


彼女は本当に聞いているのかどうかわからないが、肉まんを食べ終えると、さらにソーダをゴクゴクと飲み続けていた。


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