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第31話 一変した日常 ④

陽太ともう一人は道を分かれた。陽太はいつもの通学路を進む中、新たに身についた感覚に興味津々と呟いた。


「この感覚は一体何だろう?これも僕の体に目覚めた力なのか?」


彼の周りの世界が変わって見え始めた。マシンだけでなく、空を飛ぶ鳥やブロック壁の上で寝ている野良猫、そして全て生きものが放つエネルギーがはっきりと感じられるようになった。


さらに、彼の体の変化はそれだけではない。登校する際や家に向かう時に感じる体のふわふわとした感覚は一時的な錯覚ではなかった。地球の重力が働いているにも関わらず、彼の体感ではそれが影響していないかのように動きが軽快で素早くなっており、思い切り飛び上がれば数十メートルも跳べそうな気がする。無意識のうちに歩くペースも速くなり、普段30分かかる通学路をたった10分で終えてしまった。


学校に到着し、教室棟の正面にある時計を見た陽太は、目を丸くして心の中で叫んだ。


――嘘……こんなに早く学校に着いたなんて、僕の体は一体どうなっているんだ?


教室に入ると、陽太は周囲に変化を気づかれないように注意深く振る舞い、目立たぬよう自席に座りデスクトップの電源を入れた。


既に教室には実瀬がいた。彼女はいつも通り、周囲の女子生徒たちと楽しげに会話していた。


陽太が耳を澄ませば、同級生たちはほぼ例外なくシャドマイラの襲撃について話していた。


「おはよう、もう来てたのか?今日はいつもより明るいね?」


馴染みのある男子生徒、慎輔が声をかけてきた。陽太は顔を向けて微笑み返した。


「風沢くん、おはよう」

「今日は太陽を観察したか?」

「うん、じっくりは見てないけど。それより風沢くんは、昨日の観察はどうだった?」


「観測データはうまく取れたよ」と慎助は自らのMPデバイスを取り出し、新体操部の練習中の写真を見せて語った。長いツインテールの元気で可愛い子がパフォーマンスを披露している姿には、彼の笑顔がこぼれた。


「今回は新体操部か?」


「ああ、2年生の新条みなみ先輩だ。うちの学校では新体操部が期待されてる素晴らしい女性だよ」


「そうなんだ……」


慎輔観測テーマは「地上の星」だ。彼のコンセプトは人間観察に似ているが、実際にはニュースや記事のようなものだ。陽太には未だにそのテーマを選ぶ理由が理解できない。学校には新聞情報部や写真部もあるのに、彼はどうしてそちらに加わらないのだろうか。今まで水泳部、木彫り部、テニス部、いけばな部、女子バレー部、プラモデル部、軽音楽部、管弦楽部など、多岐に渡る部活の許可を得て撮影してきた。撮れた記録は、女子だけでなく男子も含まれている。彼が上手に撮影しているため、今まで学内での悪い噂は聞かれない。


「風沢くんは、これをどうやって発表するの?」


「それぞれ撮ったデータを星座に見立てて描くつもりだ。才能に恵まれた人、趣味に情熱を注ぐ人、夢を追いかける青春を謳歌する人、みんな実に宇宙の星々のように輝いていると思うからね」


「面白い考えだね」


その説明を聞いて、慎輔の撮影が怪しげな目的でないことが明らかになった。計画の魅力と新鮮さがあり、最終的には多くの人々に受け入れられるだろう。


「でも、今日は歩いて学校に来たの?いつもはエアーチャリンコを使ってるよな、何かあったか?」


「エアーチャリンコが故障してしまって……古い物だからしばらく使えないかも」と陽太は苦笑いを浮かべた。


「そうか、昨日、保健室で借りたジャージだけど……」


慎輔の言葉に、陽太の心臓が跳ねた。


昨日のシャドマイラの事件に巻き込まれたせいで、ジャージはすでに返却不可能な状態だ。だが、遭難したことや、自分の体に起きた異変がバレるわけにはいかない。陽太は嘘も方便と考え、申し訳なさそうに首を垂れた。


「あっ、ごめん、洗濯したんだけど……持ってくるのを忘れちゃった……」


「やっぱり忘れたか。後日、ちゃんと返すのを忘れるなよ」


「うん、僕が返すよ」


――後で保健室の先生に何か適当に説明するしかないよね……仕方がないか。

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