第21話 命を再燃の鼓動 ⑤
「プラズマバスター砲、発射!」
砲口から放たれたプラズマ光束は、天を裂く黄金の剣のごとく輝きながら一直線に降り注いだ。ゴラーテルトンγの頭上を貫き、地面へと達するその光に、陽太の顔が照らされる。
プラズマ光束の照射を浴びる中、ゴラーテルトンγは口を大きく開け、抗うように咆哮を響かせた。
「キャオオオオオオ――――!!!!!」
光束は一直線に地面へと達し、その衝撃は一階の地盤を突き抜け、地下階層にまで及んだ。瞬間、巨大な火球が周囲を包み込み、突風と炎が猛烈な勢いで広がる。ビルほどもあるゴラーテルトンγの巨体は、その衝撃波に耐えきれずに吹き飛ばされる。ショッピングセンターの建物全体が廃墟と化し、やがて空高く立ち上がるキノコ雲がその破壊力を物語っていた。
避難シェルター内、激しい爆発の揺れが、避難シェルターにも伝わる。
陽太がその場所を譲った母娘は、既に緊急処置を受けていた。母親は狭いシェルターの一角で娘をしっかりと抱きしめている。女の子は怯えた表情で体を震わせながら、シクシクと泣き声を上げた。
「母さん、怖いよ……」
若い母親は、自分も恐怖を抱えながらも娘を落ち着かせるため、必死に微笑みかける。震える手で娘の頭を優しく撫でながら言った。
「大丈夫よ、私たちはシェルターの中にいるから安全よ。」
母親の言葉に少しだけ安心した様子を見せた娘は、ふと先ほどのことを思い出して目を丸くしながら尋ねる。
「先にお兄ちゃん……あのお兄ちゃんは大丈夫なの?」
その質問に一瞬詰まった母親は、やや苦笑いを浮かべながら、優しい嘘を吐く。
「きっと他のシェルターに避難できたはずよ。心配いらないわ。」
「そうだよね……あんなに優しいお兄ちゃんだもん。またどこかで会えたらいいな……」
「ええ、きっとまた会えるわ……」
そう言いながら、母親は娘を力強く抱き寄せる。自身の無力さを痛感しながらも、ただ娘を守ることだけを願っていた。
空に飛び上がる救難用マシン内に、凛音は救難用マシンの窓から、先ほどまで自分がいたショッピングセンターを見下ろしていた。視界に広がるのは、烈炎に包まれ、完全に崩壊したその光景だった。その瞬間、彼女の顔に驚愕と焦燥の色が浮かぶ。
「嘘でしょ……!日野君……?! 」
握りしめた拳が震える。彼女の声がマシンの中に響いたが、誰も何も答えることはできなかった。
救難用マシンは加速し、高空へと舞い上がりながら被災地を後にする。凛音はなおも窓越しにショッピングセンターを見つめ、その炎の中に陽太の姿を探し続けていた。
時間と空間の概念が曖昧になった死の間、陽太は微かな意識を保っていた。体は軽く、足が地面に立っているはずなのに重力を全く感じない。流れる空気の感触だけが、かろうじて現実との繋がりを思わせる。
大地は崩れ去り、下方に広がる無尽無限の淵は、血赤の光を放ちながら死者を冥界へ誘う道を描き出していた。上を見上げると、天空は消え失せ、普通の肉眼では見えない幾多の星屑や星系が輝いている。その光景は、巨龍が天を泳ぐよりも神秘的で、まるで未知の宇宙の絵画の中にいるかのようだ。天と地の輝きが対照的に広がる中、陽太の周囲だけは黒よりも深い闇に包まれている。
上へと飛ぶべきか、下へと落ちるべきか。陽太の意識は定まらず、彷徨い続けていた。自分が死んだのかどうか、現状すらも理解できていない。
(ここはどこだ……そうだ、僕は避難中に人を助けようとして瓦礫の下敷きになったんだ。それで……これは死なのか……参ったな、これから僕はどこへ行くべきなんだ。地獄?それとも天国?三途川ってどこにあるんだろう……)
その時だった。天から黄金の光束が撃ち落とされ、その輝きが陽太の意識体を貫いた。
ドクン――! ドクン――!
止まっていたはずの脈動が再び打ち始める。命の鼓動が太鼓を叩くように強く、そして規則的に響く。しかし、何かが違う。陽太の体内でリズムが次第に速まり、その鼓動は通常の限界を超えていった。
体温が徐々に上昇し、ついには溶岩を超えるような高温に達する。再生された心臓は、まるで恒星のように燃え光り、そのエネルギーが血液となって体全体を循環していく。血管を通じて流れる無限のエネルギーは、陽太の37兆を超える細胞を再び目覚めさせ、その一つひとつが光を放つように輝き始めた。
ゴラーテルトンγという親玉の崩壊が、群れ全体に影響を与えたのだろうか。他の個体たちの動きが止まった。それを見たレンジャー隊は、この機を逃すことなく残りのゴラーテルトンを次々と撃破していく。
周囲には、爆発によって巻き上げられた砂や煙が充満していた。完全に倒壊した建物の瓦礫の間からは焦げた残骸が燃え続け、至る所で火がくすぶっている。煙はまだ収まる気配を見せない。
上空で浮遊するプロメテウス号では、爆発の光景を見つめるエリックが思わず叫んだ。
「やったか!!」
彼の声には喜びが滲んでいた。しかし、その言葉に反して、画面に映る光景には何か不穏な予感を漂わせていた。




