奇跡のプロジェクト始動
町の広場に、秋の風がやさしく吹き抜ける頃――。
柊の願いリストの中にあった、ひとつの願いが、町全体を動かし始めていた。
「みんなにありがとうを伝えたい」――柊のその願いを叶えるために、町ぐるみで「ありがとう祭り」を企画することが決まったのだ。
町役場の人々、学校の先生や友人たち、病院スタッフ、地域の商店街の人たち。
みんなが手を取り合い、準備を進めていた。
ポスターが街中に貼られ、町内放送では祭りの案内が流れる。
子どもたちはワクワクと期待を膨らませ、商店の店主たちは特別な商品を用意し始めた。
柊も病室の窓からその様子を見つめていた。
「みんなが、私の“ありがとう”を一緒に伝えてくれるんだ…」
彼女の目に、感謝と喜びの涙が光った。
祭りの当日、町の広場は色とりどりの飾りつけで彩られ、多くの人々で賑わった。
ステージでは、友人たちが柊へのメッセージを届け、子どもたちが歌やダンスを披露する。
「ありがとう」の言葉が、あちこちからあふれて、町全体がひとつの大きな家族のようになった。
柊は手を振りながら、心から感謝した。
「みんな、本当にありがとう。
この町の温かさを、ずっと忘れない」
その日、ひとつの小さな願いが、町に奇跡を起こしたのだった。