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SF作家のアキバ事件簿214 虎にヲタク

作者: ヘンリィ

ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!

異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!


秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。

ヲタクの聖地、秋葉原を逝くスーパーヒロイン達の叙事詩。


ヲトナのジュブナイル第214話「虎にヲタク」。さて、今回は闇の中で目覚めると元カノと手錠で繋がれ壁の向こうからは猛獣の咆哮w


行方不明の主人公(と元カノ)を探し(今カノと)メイド達の懸命の捜索が続きますが、捜査線上に浮かぶのは謎の老婆、そして麻薬取締官…


お楽しみいただければ幸いです。

第1章 僕達の stand by me

惰眠をむさぼってる。良い匂いのスル何かにヘバリつくようにして、僕は眠っている。

良い匂いのスル何かは、寝ぼけ眼で僕の方を向く。何かも幸せそうに寝息を立ててる。


あれ?ラギィ?


「テリィたん。も少し寝よ?」

「おはよう、ラギィ」

「…テリィたん!貴方がやったの?」


僕の胸の上に不用意に置かれていた手は、秒で引っ込められる。起き上がって、闇の中で唸るラギィ。


僕達は…手錠でつながれている。


「テリィたん。ちゃんと起きて!この手錠、何かのプレイ?」

「誓って逝うけど、俺じゃない」

「私だってやってナイわょ」


瞬間、何かを期待した様にも見えたが…


「でも、コレって警察の手錠だろ?じゃ誰かにやられたのかな」


暗闇の中。臭いマットレスの上で寝ていた僕達。起きようとスルが手錠で邪魔で上手く起きられない。


高いトコロに明かり取りの窓が1つあるだけ。


「ココが何処かワカル?」

「さぁね。でも、いかにも悪いコトが起きそうだ。僕のSF小説なら…あれ?第3新東京電力の退職記念でもらった腕時計がなくなってる」

「私のもょ。お財布もナイわ。バッチも銃も」


僕のスマホもだ。契約更新したばかりなのに。


「ねぇ…私達、さっきまで何してたっけ?」

「え。うーん何だったっけな。思い出せナイ」

「私も覚えてない。薬を打たれたんだわ」


ラギィは僕に背中を見せる。


「ちょっと服をめくってくれる?」

「暗闇の中で正気とも思えないけど…ま、いっか」

「違うでしょ!背中が痛いから見て欲しいの。誤解しないで」


果たして、ラギィの背中には注射の痕がアル。


「ヤケに位置が低いな」

「サッサと服を下ろして!」

「あぁ失礼」


闇の中の白い背中、見納めだw


「テリィたん。今朝のコト、冷静になって良く思い出してみて」

「えっと。確かラギィと神田リバー沿いの怪しげな場所にいたな。時間制のモーテルだ」

「だから!ふざけないでょもぉ!」


テレ隠しか僕の背中をバシバシ叩く。


「マジだってば。ラギィが僕を呼んだんだぜ?」

「あ。そうだったわ」

「だろ?」


無駄にドヤ顔の僕。


「テリィたんと客室に入ってソレから…」

「ソレから?」

「死体だわ!私達、死体を見に行ったんだわ!」


まるでアキバの stand by me さ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「ラギィと働くのってホントに楽しい。アキバの素敵な場所ばかりに来れるょ」

「全部スーパーヒロイン殺しの現場だけど」

「ソレもそーだ」


制服警官の書類にサインをしながら黄色い規制線のテープを潜る。神田リバー沿いのモーテルの1室。


「こーゆーいかがわしいモーテルって小説の舞台の定番でしょ?」

「モーテル!そうさ。ココには常に愛欲が渦巻き、全ての客室で絶望と堕落のドロドロしたドラマが繰り広げられている」

「スーパーヒロイン殺しとかね」


203号室だ。ピンキーな廊下の奥。


「被害者は30代後半の女性。"blood type BLUE"。発見したのはモーテルの清掃係ょ」


僕のスマホからルイナの声がスル。超天才の彼女は自分のラボからリモートで鑑識を手伝ってくれる。


「ルイナ。死因は何かな」

「断定は出来ないけど、顔にチアノーゼ反応が出てる。枕に顔を埋めてるけど窒息じゃナイ。右手に注射の痕がアル」

「薬の過剰摂取による事故?昏倒して枕に顔が埋もれて窒息した、なんちゃって」


ちょっちオドけたら超天才に怒られる。


「テリィたん。死者には敬意を払って。ソレからコレ、絶対他殺だと思うの」

「なぜ?」

「何者かが彼女の指紋を焼いてる」


何だってw


「犯人は、被害者の身元を知られたくないのね」

「確かに、犯人は徹底的に身元がワカルものを消し去ってる」

「宿宿泊代は現金?」


ヲタッキーズのエアリがうなずく。


「現金。しかも、宿帳の記名は"微少女仮面トワポリン"だって」

「正義の味方だ。意外にモノホンだったりして」

「従業員の話では、尾行を警戒してたらしい。何度も振り返ってたんだって」


僕は天井を指差す。


「ロビーのカメラは?」

「見せかけょ。誰かさんみたい」

「OK。わかったわ。これだけ苦労して身元を隠したのには理由があるハズ。ルイナ、指紋が採取できる可能性は?」


即答。


「火傷の程度によるわ。皮膚の下から採取出来るかやってみる。いずれにせよ検視を待って」

「ヲタッキーズ、失踪届が出てないかを調べて。被害者がいるかも」

「ROG」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


再び暗闇の中の僕とラギィ。


「いかがわしいモーテルに指紋を焼かれた身元不明の死体。そこからどうやってココに来たの?」

「おい、気をつけろ。ご覧の通り手錠で繋がれてるコトを忘れないで」

「良いから立って」


突然立ち上がるラギィに文句。


「テリィたん、良いから立って」

「いつも寝起きはこんなに不機嫌な人?しかし、この手錠は厄介だな。なんで左手同士をつなぐんだろう」

「そうょ。ソレでマリレは失踪届に該当者はなかったって。それで?」


必死に思い出す。


「その後、僕に言ったんだ。今年はクリスマスを"時間(タイム)ナヂス"の連中と過ごすって」

「テリィたん。事件の話に集中して」

「順番に思い出さないと無理だろ?」


ラギィは早くもイラつく。


「もう良いわ。OK」

「焼かれた指紋。窒息死。注射の痕か」

「ソレで確か検視局でルイナの話を聞いたわ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)の検視局は地下にある。白いシーツをかけられた遺体。モニター画面に青のスクラブを着たルイナ。


"リモート鑑識"の始まりだ。


「状況は?」

「手にタコがあるから、被害者は肉体労働をしていた可能性が高いわ」

「指紋は取れた?」


スーパーヒロインを殺して指紋を焼くとはなw


「確かに損傷は激しいけど、もし指の皮を柔らかく出来れば、表皮の下から検出出来る可能性もアル」

「そんなコト出来るの?」

「望みはあるけど、数日かかるわ。それからズボンのポケットにこんなモノが入ってた」


証拠品用のビニール袋に入ったメモの切れ端。


「犯人が見落としたの?」

「ポケットの上側にヘバリついてた」

「外神田西97丁目147番地。午後4時?」


読み上げるラギィ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)に捜査本部が立ち上がる。ヲタッキーズのマリレがメモの切れ端の入ったビニール袋を示す。


「スターボックス珈琲の住所だった。4時に誰かと会う予定だったのね」

「もう会ったのかしら」

「ヲタッキーズは、この写真を持ってスタボで聞き込みをして」


マリレにメモの写真を手渡す。ラギィはデスクに腰掛け、ホワイトボードを見上げる。隣に腰掛ける僕。


「犯人に身元を隠されるなんて。被害者は何者かしら?…スパイの話は無しよ」


出鼻をくじかれるw


「殺し屋もなし」


瞬殺だ。黙り込む僕。振り向いた瞬間に言われる。


「バカを言っても事件は解決しない。先ず被害者は誰かを突き止めなきゃ」

「ラギィ」

「何?」


やっと回って来たメモの切れ端の入った証拠品袋を見て、僕は瞬時に気がつく。


「裏に郵便物のバーコードがある」

「バーコード?」

「そのバーコードで被害者が何処でそのメモを書いたかがわかるわ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


再び暗闇の中の2人。


「そうょ!それで郵便局に電話して聞いたンだわ」

「そうだ!で、住所は…」

「東秋葉原だった!」


2人は同時に思い出す。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


古いポンプ場の近くにある洋館だ。庭は荒れていて人が住んでいるのかも良くわからない。しかし、良くもまぁこんな一軒家が空き家?で残ってたなw


玄関の石段を駆け上がる。


「この洋館?」

「住所は合ってるけど」

「誰もいなさそうだ」


ブザーを鳴らす。ノックしようとスルと…何とドアは開いている。


「すみません!万世橋警察署のラギィ警部です。誰かいませんか?」


反応ナシ。僕達は顔を見合わせ中に入る。


「誰もいないの?」


僕は、サイドテーブルに手紙を見つける。ラギィは

奥へ。何気に腰の音波銃に手をかけている。


水道の水滴が落ちる音。


「ランフ夫妻宛だ。被害者は奥さんのミールかもしれないな」


僕はラギィに封筒を示す。


「アキバP.D.!誰なの?そこに誰かいるの?」

「…助けて」

「誰?」


女の声だ。音波銃を抜くラギィ。ベッドルームのクローゼットを開ける…鉄の檻。中に人影?僕を振り向く。


「怪我は?大丈夫ですか?」

「今、助けます」

「…」


檻に駆け寄るラギィ。鍵がかかっている。開かない。老婆だ。ゆっくり振り向く。ニヤリと微笑む。色白の顔。その瞬間…記憶がなくなる。


「そーだ!檻の中に老婆がいた!」

「ソレが最後の記憶よ!」

「僕もだ」


再び暗闇に包まれる。


「どうなってルンだよ?」


第2章 囚われの地下牢で

万世橋(アキバポリス)の捜査本部。モニター画面でSATOのゲイツ司令官が吠える。ヲタッキーズが交互に応える。


あ、SATOは南秋葉原条約機構の略。アキバに開いた"リアルの裂け目"由来の事件を扱う特務機関。


「被害者についての情報は?」

「昨日カフェで人と会ってました。相手はロン毛で髭面の男性。その際、被害者は大変緊張してる様子だったそうです」

「店員の協力で今、似顔絵(まんが)を作成しています」


会議室では、ウェイトレスが漫画家を相手に身振り手振りで何かを訴えているのが見える。


「聞き込みをすれば、ロン毛の男の正体がわかるかもしれません」

「何かわかったら、また報告して」

「ROG」


唐突にモニター画像は消える。エアリは、マリレにのんびり尋ねる。


「クリスマスの予定は決めた?今年はカヌーが要注意みたいょ?」

「カヌー?」

「強さと方向性が試されるの。もし2人が漕ぐカヌーが真っ直ぐ進めば、マリレには協調性があり、一緒になってもやって行けるってコトょ。でも…」


思わせぶりなエアリ。


「でも?」

「もしカヌーがグルグル回るようなら、2人の関係も堂々巡りってワケょ」

「誘われてもカヌーには乗るなってコトね?助かったわ、thank you」


そーゆーコト?


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


再び闇の中の臭いマットレスの上。


「テリィたん。少しは協力してよ」

「してるさ。ソレより何でいつもラギィが優先なのかな?」

「どーして、いつもそーやって私をイライラさせるの?」


また喧嘩だ。昔みたい。


「僕がいつ…じゃ教えてくれ。なぜ君がいつも僕の先なんだ。エレベーターでも、ドアでも」

「私は、戦闘訓練を受けた警官で音波銃を持ってるからだけど、何か?」

「タマには淑女らしく、紳士がドアを開けるのをモジモシ待てよ」


待つハズがナイ。


「その場合だって、結局先に通るのは女の私」

「ラギィは、何でも勝負にしちゃうんだな」

「そんなコトないわ。ねぇ寝起きは不機嫌な人なの?」


万事が昔みたいだ。


「わかった。折れるのはいつも僕だ。今回もラギィの勝ちにしてやるよ」

「結構よ。今回はテリィたんに従うわ」

「ありがとう。で、どこに行きたいの?」


闇の中で闇を指差す。


「あそこにスイッチがあるわ。暗いのは嫌でしょ」


ラギィがスイッチを入れると、コンクリートが打ちっぱなしの部屋の様子が明らかになる。扉は鉄製。


「暗い方が良かったな」

「鋼鉄のドアね。破れない」

「壁はコンクリートだ。床にデカくて黒い鉄の箱がアル。モノリスみたいだ。中には何が入ってるのかな?まさか、あの時のおばあちゃんが死体で入ってて、実はココは連続殺人鬼の館だったりして」


うるさそうに首を振るラギィ。


「無駄な妄想はヤメて」

「こんな状況で他に何をしろって言うんだ」

「犯人が戻る前に脱出する方法とか」


ソレもソーダ。


「寝てた時間は、どのくらいかな」

「数時間ね」

「なんでわかる?」


お腹をさするラギィ。


「腹時計ょ」

「そう言えば…忍者メシ、食べる?」

「何ソレ?」


ポケットから出した忍者メシを引っ込める。


「テリィたん。手を握って」

「抱こうか?」

「違うでしょ?単に手錠が邪魔だからよ」


月並みな提案をしてみる。


「ヘアピンで手錠を外せないか?」

「1940年代じゃないのよ。そんなもので警察の手錠を外せるわけないでしょ。諦めて」

「…助けは来るかな?」


来ないだろーなw


「ミユリ姉様とかスピアは?」

「2人ともメイドミュージカルのワークショップで週末は留守なんだ。ヲタッキーズの2人は?」

「テリィたんの部下でしょ?…まぁ失踪には気づくだろうけど、居場所までは無理ね」


溜め息。天を仰ぐ。


「アレは何?天井に何か…」

「ハッチだ。あそこから出られるかも」

「でも、高過ぎて届かないわ」


天井まで3mくらいアル。


「アレに登るのよ」


ラギィはモノリス?を指差す。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)に立ち上がった捜査本部。ヲタッキーズのエアリ&マリレ。因みに、彼女達はメイド服だ。だって、ココはアキバだからね。


「ルイナからだけど、ざっと検視した結果、被害者の死因は窒息だって。刺されてるけど」

「でも、抵抗した痕とかはなかったのょね?」

「抵抗出来なかった。象を眠らせるほどの鎮静剤を投与されていたンだって。似顔絵(まんが)は出来たの?」


マリレが1枚示す。


「コレょ。今、コレをもとにデータベースで照合中。聞き込みもしてもらってるわ」


マリレはラギィの空席のデスクを振り向く。


「ラギィ、遅いわね」

「遅過ぎるわ。スマホしても留守電になるし…ホントに捜査中かしら」

「未だロクに手掛かりもナイのに?まさかテリィたんとシケこんでるとか」


しばしケラケラ笑ってから真剣な顔になる。


「車を探してもらうか。通信指令にラギィの覆面パトカーを探してもらお?」

「そうね。信号を送ればわかるし」

「少し心配になってきたわ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


再び謎の地下室。モノリス?みたいな黒い鉄の箱を動かそうと2人で力を合わせる僕とラギィ。


「力が入らないわ。角度が悪い」

「お互いもっと腰を合わせよう」

「腰?ねぇ変な気を起こさないでよ」


バレたか。恋人気分だ。


「1、2、3!推して!」

「…ダメだ」

「中身は老婆よりも重いモノだわ」


珍しいラギィのブラックなジョーク。


「中身を出して空にしよう。この鉄の箱を立てれば天井のハッチに届きそうだ」

「鍵がかかってる。道具もないのに?」

「道具は僕の頭脳さ。幸い、コレはダイヤル錠だ」


早くもウンザリ顔のラギィ。


「だから?」

「僕は、SF小説を描くために、金庫破りの名人に手ほどきを受けてる。こんなダイアル錠ナンかお茶の子サイサイだけど、ホントに開ける覚悟はアルか?」

「あら。私は死体なら見慣れてる。開けましょ?犯人が戻る前に」


僕はダイヤル錠に耳を当てる。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


真昼の神田リバー沿いに続くモーテル街。ヲタッキーズのメイド達が舞い降りる。


「ラギィの覆面パトカー(FPC)がココらにあるハズだけど…あったわ。乗り捨てられてる」

「捜査本部に連絡して」

「ROG。あら?」


フト振り返ると防犯カメラ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)の捜査本部。


「コレは街頭カメラの5時間前の映像です。見ててください、ゲイツ司令官」

「ラギィのFPCです。でも、乗っていたのは全くの別人でした。迎えの車で仲間がやって来ます。ほら」

「アイツらは誰?」


モニター画面の中から吠えるゲイツ。


「わかりません」

「車のナンバーは?」

「遠過ぎます」


しばらくスナッピングツールで切り取っては拡大していたマリレだが諦める。


「相変わらず2人ともスマホはつながりません」

「きっと、またテリィたんが余計なコトにラギィを巻き込んだのね。万世橋(アキバポリス)の鑑識に、ラギィのFPCを徹底的に調べさせて。例の事件を調べていたのよね?どこに行ったのかしら」

「何度も調べたけど、わかりません。ロン毛の男の正体も不明です」


モニターの中で腕組みして唸る。


「とにかく!被害者の身元と彼女が何をしてたのかを調べて。絶対に何かに繋がってるハズょ。2人が誘拐されたのなら一刻を争うわ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「いつまでかかるの?」


ダイヤル錠を回す僕にラギィの心ない言葉。


「あぁ!惜しかったのに」

「はいはい。そればっかりね」

「ラギィ。ホントに悲観的だな。一緒に暮らす相手としては最低だ。僕達、別れて正解だ」


ラギィは僕の元カノ(の1人w)だ。


「手が疲れたわー」

「あのさ。檻の中の老婆。身元不明の死体。こんな状態で監禁されてる僕達。もっと現状を楽しめょ」

「この流れだと、どう頑張ってもハッピーエンドは無理そうね」


カモなw


「今頃は僕達の捜索が始まってるさ。さ、次こそうまく逝くぞ」


再びダイアル錠に挑む。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ヲタッキーズのメイド達が検視局に集合。遺体を前にして、モニターに超天才ルイナを呼び出す。


「被害者の情報をもっとちょうだい」

「初期の心臓病。腰が悪く、側湾症の傾向がある。

多分座る時間が長かったのね。最後に口にしたのはパストラミサンドイッチ。でも、身元の手がかりはゼロ」

「肉体労働者で座り過ぎって何かしら…わかった!ブルドーザーの運転手だわ」


ナイス妄想。いつも楽しいマリレ。


「あのね。急いでるの。ラギィとテリィたんが危険なのょ。貴女、平気なの?」

「平気なワケない。2人はヲタ友よ」

「ハイ。ブレイク!」


画面の中と外で始まる喧嘩にタイムのハンドシグナルで割り込むエアリ。


「ルイナ。ラギィに聞いたんだけど、指紋を採取出来る可能性があるんだって?」

「YES。何日かかっても良いんだったら」

「今、できないかな?」


笑顔で無茶を逝うエアリ。


「指紋を損傷させる可能性もアルの」

「させない可能性もアルのね!」

「え。」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


地下室。もはやダイアルに耳をすますコトなく無駄にダイアル錠をガチャガチャする。突然解錠スル。


「ラギィ、やったぞ」

「すごいわ。テリィたんを信じてたわ…そんなに怖がらなくて平気。死体は見慣れてる。何が出てきても私は大丈夫」

「OK。じゃOpenだ」


思い切ってフタを開ける。が、中は…死体じゃない。


「死体より…もっと悪いな」

「鎖と…拘束具?色んなナイフ?」

「しかも全部血がついてる」


ラギィと顔を見合わせる。


「ナイフに血塗れの拷問具だ」

「テリィたんの連続殺人鬼(シリアルキラー)説、実は当たっているカモ」

「老婆の死体じゃなくて喜ぶべき?怖がるべき?」


天を仰ぐ僕。現実的なラギィ。


「先ず逃げるべきね」

「賛成だな。脱出しよう」

「見て。血塗れの手錠が山のように入ってるわ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


超天才ルイナのラボは、パーツ通りの地下にアルSATO司令部の中にアル。ルイナは車椅子のママ顕微鏡画像を見ながら精密作業をしている。


「エアリにマリレ?貴女達の焦りが背中からも伝わってくるわ。でも、私を急かすなんて大間違いよ…あっ!」

「どうしたの?」

「充分柔らかくなくて破れちゃったわ。多分皮が未だ硬かったのね」


溜め息をつく超天才。


「指の中央部分しかワカラナイわ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)の捜査本部。


「…そこで!メモに残ってた部分的な指紋と、ルイナが検出した指の中央部の指紋を合体させるコトにより、被害者の特定に成功しました」


得意げなエアリ。モニターの画面上でスニッピングツールを駆使して被害者の指紋をつなぎ合わせる。


「被害者はハプナ・クンスです。個人営業のトラック運転手でした」

「その彼女がなぜ秋葉原に?」

「家族によれば、彼女は先週青森への仕事を受注。最後の連絡は2日前です」


モニター画面のゲイツ司令官が吠える。


「何を運んでたの?」

「特別な客からの急な依頼で儲かる仕事だとしかワカリマセン。仕事でモーテルに宿泊スルのは珍しいとも言ってました。普段はトラックで寝泊まりしてたそうです。その方が安全だし、安く済みますからね」

「彼女のトラックを見つけて。今すぐ!」


無茶だw


「主要なトラックストップを全部調べるのょ。運が良ければ、ハプナ・クンスが殺された理由がわかるカモしれない」

「ソレは、俺に心当たりがある」

「誰?」


太い声に全員が振り向く。ヒッピー風の大柄の男が捜査本部にノシノシと入って来る。


「俺を探してたな?」


男は、ホワイトボードから自分の似顔絵を取って、自分の顔と並べて見せる。うーん確かに似ているw


「麻薬取締局のマルテ・ネイスだ」


バッジを示す。


「なぜ私達が探しているとわかったの?」

「ハプナ・クンスの指紋を検索したろ?ソレで俺にお座敷がかかった。自動的に通知が来るように設定してアル」

「昨日、彼女に会った?ハプナ・クンスは殺され、ウチの人間が2人消えたの。単刀直入に聞くわ。貴方がハプナ・クンスを追っている理由は?」


モニター画面から吠えるゲイツ司令官。


「OK。良いだろう。奴は、年に6回ほど秋葉原に何かを運んでる。いつも集荷は"リアルの裂け目"にある辺境の街、デルョだ」

「"リアルの裂け目"を利用して別アースから"覚醒剤"を密輸してると言うの?」

「証拠は不足してる。でも、アソコら辺は"覚醒剤"カルテルの活動が活発な地域だ」


アキバに開いた"リアルの裂け目"の影響で腐女子がスーパーヒロインに"覚醒"する例が多発してる。

"覚醒剤"は"覚醒"を焦る腐女子相手にアキバの地下で売られる違法ドラッグで、モチロン人体に有害。


「なぜハプナ・クンスを逮捕しなかったの?」

「俺達が捕まえたいのはハプナ・クンスのような下っ端じゃなく、カルテルの背後にいる黒幕だ」

「どうしてあのカフェにいたの?」


モニターのラギィからの質問に丁寧に応える。


「逮捕の決め手が欲しかった。ハプナ・クンスに近づくために、運び屋を探してる売人のフリをして囮捜査をしたが、バレちまった…でも、ハプナ・クンスは逃げもせず、逆に俺に会いたいと言ってきた。奴は、ビビってたンだ。カルテルと手を切りたがってたが、ソウすればヤバいコトになるとわかってた。だから、全てを話す。代わりに身の安全を保障してくれと言ってきた。俺はその準備を進め、上司の了解も得ていたが…」

「その直前に殺されたのね?」

「残念ながらそうだ」

「ラギィ警部」


会議室の窓ガラスの向こうから書類を示す制服警官。書類を受け取るラギィ。


「おい。アンタの仲間は何処へ消えた?」

「わからないわ。捜査中に消えたの。忽然とね」

「アンタは、ハプナの仕事について、何か話したか?」


肩をスボめるラギィ。


「彼女は、俺の想像とは違うとだけ言ってたぜ」


ソコへ good news だ。


「ラギィ警部!ハプナ・クンスのセミトレーラーが見つかりました」

「やったわ。何処で?」

「妻恋坂のトラックストップ」


第3章 トラックストップ

トラックストップとは、トラック専門の道の駅だ。ロードムービーの定番。もちろん一般人も利用可。


「ヲタッキーズさん、コッチです。ココに3日前から停車していましたが、ここ2日間は運転手の姿も見えません」


万世橋警察署の制服組。なぜかカウボーイハットを被ってる。暗いトレーラーの後部ドアを開ける。


「中を見てください」


明かり取り?の穴が空いた仕切り。ライト片手に入って逝くと何か…獣みたいな匂いがスル。


「何かの毛だわ。仕切りの穴は空気穴かしら。動物運搬車?競馬場行きとか」

「マリレ。コレ見て」

「まぁ」


床が濡れている。大量の赤い血で。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


再び地下室。僕に肩車されたラギィは天井のハッチに手を伸ばす。


「…ダメだわ。未だ届かない。ねぇ私がテリィたんの肩の上に立つってのはどうかしら」

「でも、手錠してるから無理だょ」

「ねぇ悲観的なのはどっち?犯人が戻る前にチャチャっとやっちゃお?」


チャチャっとやっちゃうコトかなw


「前はスニーカーだったょな。何で今日はヒール…」

「わかったわ。靴、脱がしてくれる?」

「服の次は靴を脱がせろか。胸踊る展開だな」


鼻で笑うラギィ。


「妄想は脱出してからにして」

「許可されると楽しさも半減だ。しかし、こんなヒールでよく走れるような」

「良いから早くして」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)の捜査本部。モニター画面のゲイツ司令官が尋ねる(吠えてナイw)。


「マルテ・ネイス捜査官。ハプナ・クンスが"覚醒剤"を運んでいたと言うのはホントなの?」

「ん、SATOか?あぁ確かとまでは言えねえがな」

「ゲイツ司令官!」


ヲタッキーズが現場から戻る。


「ハプナ・クンスの運送状がダッシュボードにありました。2日前に家具店に配達してますね」

「調べて」

「ROG」


飛び出して逝くメイド達。ゲイツはロン毛の捜査官の方を向く。キツい眼差しに身じろぎするロン毛。


麻取(まとり)の捜査資料を全て見せて。どんな手を使ってでも、私は必ずテリィたん達を救い出しますからね」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


同時刻。地下牢のような地下室。


「いいわ…そこょ」

「ココかな?」

「1、2の…」


僕の肩の上で何とかバランスをとるラギィ。


「あぁダメ…おろして」

「わかった。汗びっしょりだ」

「ココを出れたら一緒にサーカスに入る?空中ブランコとか」


ラギィのショー用レオタード姿を妄想。元気出る←


「ココを出られたらな…よし!逝くぞ」

「行くわよ」

「1, 2の…」


一気に肩の上に立ち上がるラギィ。


「よし。良い感じだ。右手を離すぞ」

「OK。GO…やったわ!」

「ハッチに手が届いた!」


思ってたほど楽しくないが、とりあえず凱歌。


「ラギィに足蹴にされるのはもうたくさんだな」

「ハッチに手が届いた!開くわ!」

「よじ登れ!」


突然ハッチが開く。見知らぬ翠髪が覗き込む。誰?


次の瞬間、僕とラギィの肩車は崩壊して、僕達は臭いマットの上に転がり落ちる。


「貴女!ココから出して!」

「僕達をどーするつもりナンだ!」

「…」


翠髪はニヤリと笑い、音を立ててハッチを閉める。鉄鎖をグルグル巻きにして施錠スル音が響く。


第4章 虎ょ

万世橋(アキバポリス)の捜査本部。


「家具店のオーナーと話しました。ハプナ・クンスから配達されたのはタダのコーヒーテーブルだったそうです」

「エアリ。ソレを信じたの?」

「ゲイツ司令官。オーナーは家族持ちで前歴もナイ善良な市民です」


ホワイトボードの前でモニターに映るゲイツ司令官に報告するヲタッキーズ。


「で、荷下ろしの際に奥の箱が落ちてオーナーに当たったそうです。その箱がヤタラ軽かったんで、中は空気か綿でも詰めてるのかと冗談で言ったトコロ、彼は急にソワソワして隙間を埋めるためだと言いワケをしたそうです」

「ところが、その時、箱の奥の方から息遣いのような音を聞いたとか」

「ハプナ・クンスは身を隠すため、表のお仕事も受けていたワケね。隠れ蓑として。そして空箱の奥に密輸品を隠してた。家具店の他の配達先は?」


ヲタッキーズはお手上げポーズ。


「不明です。ドライブレコーダーも切ってます」

「テリィたん達は、一体何を追っていたのかしら」

「わかっていた唯一の手がかりは、スターボックス珈琲の住所だけです」


エアリは、ホワイトボードに貼ってあった、証拠品用の透明な袋に入ったレシートを摘む。


「ココは、徹底的に調べました」

「貴方達は何かを見落としてるわ」

「ソレじゃ」


もう1度ホワイトボードに戻そうとするエアリの手を止めてマリレが気づく。


「待って。レシートの後ろにバーコードがアルわ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


薄い木製のドアを蹴破って、完全武装の特殊部隊が突入スル。


「行け!行け!行け!」

「アキバP.D.!アキバP.D.!」

「手を挙げて出て来い!」


ビームライト付き短機関銃を構えて突入していく。ライトと音波銃で後に続くヲタッキーズ。


「クリア…こっちもクリア」

「誰もいないぞ。ホントにココに来たのかな」

「少なくとも今はいないな」


特殊部隊員がフロアを指差す。


「ヲタッキーズ。ココにハッチがあります」

「開けます…1, 2の」

「Open!」


暗闇をライトで照らすと、中は地下室になっている。倒れた椅子が転がる。思わず顔を見合わせる。


誰もいない。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


地下室の僕とラギィ。僕は、拘束具や血染めのナイフやらで手錠を切ろうと悪戦苦闘してる。


「クソッタレ」

「テリィたん。鍵がなければ手錠は切れないわ」

「他に方法がアル。手錠が外れないなら…」


息を飲むラギィ。


「テリィたん。まさか…」

「マットマックスや23.5時間でもやってた」

「自分の手首を切るのね?」


僕は怪訝な顔をスル。


「おい。僕のじゃない。ラギィのさ」

「私の手を?なんで私の手なの?」

「細いからさ」


冗談だ。笑ってくれょラギィ。


「静かに。誰か来るわ」

「…お買い得だと伝えてくれ。気に入ったら他の子も割引するぜ。悪くないだろ?コッチも早く売りたいんだ」

「ヒャラヒャラヒャーラ」


答えは…アラビア語か?


「隣の部屋に入ったわ…きっと隣の部屋にも誰かがいるのね」

「…きれいな子だな」

「お安くしとくぜ」


漏れ聞く会話に顔を見合わせる僕達。


「隣にも誰か監禁されてるみたいだ。きっと囚われのプリンセス、少なくとも美女であるコトは間違いなひが、多分レオタードの似合うその女子を何処かに売り飛ばす気だ(いくらかな?)」

「人身売買が行われているの?」

「恐らくYES。美女、じゃなかった、人間を拉致しては売ってる。僕達を殺さないのも、売るコトが目的だからだ」


ラギィは怪訝な顔w


「…何だょ人気SF作家が高く売れないとでも思っているのか?」

「おいくらなの?」

「知る気もナイけど…ちょっち気になるな」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


地下室のある家。特殊部隊とヲタッキーズが意見交換。


「何かわかった?」

「はい。ハッチは取り付けたばかりです」

「何のためのハッチなの?」


完全武装の隊員は天を仰ぐ。


「わかりません。万世橋(アキバポリス)の鑑識が指紋を調べてます」

「近所の人は何て?」

「ランフ夫妻は、半年前にこの家を差し押さえられて引っ越してます。最近また新しい入居者が入って来たばかりらしい」

「誰?」


聞き込みを仕切る制服警官が割り込む。


「2人姉妹らしいです。車種を教えてもらいました。黒の150(ワンフィフティ)です」

「黒のワンフィフ?街頭カメラに写っていた犯人の車だわ」

「それだけじゃありません。その上、近所の人の話では、数日前の深夜に物音がスルから、向かいの人が覗いてみたら、ココにセミトレーラーが来てたそうです」


顔を見合わすヲタッキーズ。


「ハプナ・クンスのセミトレーラーだわ!」

「やっと繋がった。事件にはココが絡んでる」

「誰がこの家を買ったのか調べましょ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


地下室。壁を叩く手にも力が入る。


「おーい!美女、じゃなかった、誰かいるのか?」

「待って、テリィたん。誰かの息遣いが聞こえる」

「踊らされてるのかもしれない」


妄想が闇を駆け巡る。


「ねぇ聞こえてるでしょ?誰か答えて!…テリィたん。壁のこの部分はタイルょ」

「だから?」

「他はコンクリートだけど、この部分ならナイフでタイルを割れば、壁を崩してお隣サンを助け出せるわ。まぁ助け出しても、コッチの牢獄に移るだけだから意味なし芳一だけど」


いや。コッチに(美女が)移るコトには大いなる意味がアル!しかしラギィ。君は僕を自在に操るねw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


再び万世橋(アキバポリス)の捜査本部。


「OK。わかったわ。また連絡を…鑑識だけど、あの洋館の指紋は完全に抜き取られてたわ」

「洋館の購入者は?」

「何と所有者はイチゴ銀行だった。差し押さえ物件を例の2人姉妹が不法占拠していたのね」


ふとヒラメくエアリ。


「待って。イチゴ銀行?」

「そうだけど?」

「捜査資料で見たわ…コレょ!スプナは2ヶ月前にも配達してる。制服組が配達先を捜索すると、もぬけの殻で床には地下につながるハッチがあった、とあるわ」


顔を見合わすヲタッキーズ。


「今回と同じだわ」

「ソコもイチゴ銀行が所有してた。今回の犯人の拠点は、常にイチゴ銀行の差し押さえ物件だわ」

「イチゴ銀行が所有している秋葉原にある地下室付きの差し押さえ物件を全て調べましょ!片っ端から

調べれば、そのどれかに犯人がいる!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


僕は、凄まじい気迫で壁をナイフで崩してる!


「テリィたん。壁は大分崩れたわ。そろそろ蹴り崩してみない?」

「おおっ!ライダー1号2号のダブルライダーキックだね?OK。前向きな良いアイデアだ」

「じゃ2人で(同棲してた頃みたいにw)息を合わせてね。行くわょー!」


2人で蹴り飛ばす。徐々に崩れ出す壁。何回かのダブルライダーキックで向こう側に足が飛び出す!


「ラギィの足、大したモンだ。綺麗なだけじゃナイんだな(レオタードにしたいw)」

「テリィたんの足も悪くないわ。次の警察ピクニックで一緒に二人三脚でもやる(健全だw)?」

「いいとも(死語)!…待てょ聞こえるか?聞こえるだろう。微かなトドロキ…」


スペースラナウェイ?


「どうぞお先に。譲るわ。美女がお待ちょ」

「そっかな。じゃ遠慮なく…」

「お願いね、ダーリン」


崩れた壁の穴から頭を突っ込む僕。


「大丈夫かい?やぁ君を助けに来た…ぎゃ!」


慌てて頭を引っ込める僕。次の瞬間、虎が…


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「虎ょ!虎ょ!虎がいるのょ!」


ラギィの絶叫に被さり、リアル虎の咆哮!


「テリィたん、虎なの?」

「ウソじゃない。危うく顔を半分食べられるトコロだったぜ!」

「そっか!拘束具や鎖は虎用だったのね?ナイフは餌をやる時に使ったンだわ」


しかし、何で虎が秋葉原に?


「犯人は虎ビジネスをやってたのね」

「虎ビジネス?」

「虎は絶滅危惧種なの。だから、虎の売買は違法なワケ。つまり、ココは虎の、文字通り地下取引の現場ってコト」


ソンなビジネスがあるのか。しかし…


「今、問題なのは、あの虎がコッチに来たら一大事、僕達が虎の餌になるかどうかの別れ道ってコトだ」

「大丈夫。あんな小さな穴じゃ虎は通れないわ」

「そぉかな?」


背後で空腹?な虎がスゴい勢いで壁を崩す音w


「お腹が空いてるみたい。壁をエサと勘違いしてハデに噛み付いてるわ」

「ホントだ。コレはマズい展開だな」

「ちょっと!テリィたん、何する気なの?」


僕は立ち上がり、壁の向こうの虎に向かう。


「ちょっち虎の機嫌をとってみるょ」

「テリィたん、ダメ!近寄らないで!」

「大丈夫さ、ラギィ。食ってるぞ」


僕が投げた忍者メシを食べる虎。


「そうね」

「な?コレで時間が稼げる」

「でも、直ぐ食べ終わって、もっと欲しがるわ」


なるほど。パワーアップして壁を崩す虎w


「来たわ!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


同時刻。万世橋(アキバポリス)の捜査本部。


「イチゴ銀行の100件近い差し押さえ物件の中から、犯人の傾向を考慮し、先ず地下室がナイ物件を除外。さらに、過去2件の不法占拠物件の共通点は、首都高に近くて広めのトラックストップがあり、隣が必ず空き家になってて、人通りが少ないって感じ?」

「近所の目を気にしたのね」

「で、全ての条件に合致したのは11件」


モニターを半画面にして、マップとゲイツ司令官を並べて見せる。なかなか笑える画像だ。


「この11件に、全警官を派遣して2人を生きて連れ戻すわよ!」


吠えるゲイツ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


さらに同時刻。地下室。


「テリィたん!早く穴を塞がなくっちゃ!」

「拘束具が入ってたモノリスで塞ごう。推してくれ。せぇーの!」

「もっと力を入れてょ!」


徐々に動き出すモノリス。少しずつ"リアルの穴"に近づくが…虎は虎で元気良く穴を拡大中だw


「ダメだ。間に合わない」

「どうすれば良いの?」

「モノリスの中に隠れよう」


即座に反対するラギィ。


「嫌ょ!獣臭いし窒息するわ」

「じゃ虎に食われる?」

「何か、何かもっと妄想してょ!」


ソンなコト逝われてもw


「間も無く虎は壁を崩すわ」

「僕の後ろに隠れて」

「はーい」


え?その瞬間、僕はヒラメく。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


裏アキバの廃ビル。


「この工場ビルは8ヶ月前に抵当流れになってる」

「とりあえず、ここも人の気配はナイわね」

「裏に回ってみる?何かあるカモ」


廃工場の中を覗く。窓を拭き、ライトで室内をアチコチを照らし出す。空き部屋だ。ホコリまみれ。


「ちょっと探してみるわ。応援を呼んで」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


いよいよ虎が入って来て、まるで自分のリビングみたいに歩き回る。僕達は…立てたモノリスの上だw


「テリィたんのヒラメきってコレ?あのね、虎の跳躍力って知ってる?」

「知らない。ラギィは?」

「…知らないわ。理系じゃナイもん。でも、きっとスゴいわ」


でも、とりあえず僕達は未だ生きてる…虎も生きてて舌なめずりしてモノリスの周りをグルグル歩く。


「参ったな。サーカス団入団の案は撤回だ(さよなら空中ブランコのコスプレしたラギィw)」

「虎は私達をモテ遊んでルンだわ。いずれモノリスごと倒される。どうしよう」

「こーゆー時すべきコトは1つ。女みたいに叫ぶのさ!きゃー、助けてぇ!」


呆れ顔で僕を見てたラギィだが、やがて声を合わせ一緒に叫び始める。きゃー!ココよぉ!助けてぇ!


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「ねぇ聞こえるか?聞こえるでしょ?微かな驚き等々(とどろき)目黒逝き」

「マリレ、誰か叫んでる?」

「ココにいるわ。急いで!中ょ!」


ライトと音波銃を手に廃工場に飛び込む。何と床の下から掻き消えそうな微かな悲鳴が聞こえてくる。


「誰か…ココょ…助けてぇ」


声に導かれ、床のハッチを見つける。難なくハッチをこじ開ける。暗闇をライトで照らす…


「ラギィ警部!」

「エアリ!マリレも?」

「僕も忘れるな!」


その瞬間、虎も自分を忘れるなと吠えるw


「虎?飼ってるの?趣味?」

「早く出して!」

「ちょっと待って。直ぐ助けるから」


エアリが錆びた天井クレーンを引きずろうとすると、背後から音波ライフルを手にした老婆が登場。


「メイドさん達。武器を捨てな。さもないと、音波銃で撃つょ。アンタら"BLUE"だろ?」

「何してる?助けてくれ!」

「ハッチから出して!」


音波ライフルを構える老婆。さりげなく離れて互いに距離をとるエアリとマリレ。


「メイドさん、も1度言うょ。銃を下ろすんだ」

「おばあちゃん。私達のどっちを撃っても残った方がおばあちゃんを撃つわ」

「じゃ可愛い方から撃つとしようかね」


ふと顔を見合わせるエアリとマリレ。私かしら?


「あのね…選ぶのは私じゃない」


横からアラフォー姉妹が安い音波銃を手に現れる。


「銃を下ろしてょメイドさん」

「あら。貴女達からおいてょお嬢様方」

「ママ。さっさと撃っちゃえば?下の2人は虎のトニ助が片付けてくれるわ」


ママ?孫じゃナイのか。しかし"トニ助"ってw


「おばあちゃん。おばあちゃんの娘が私を撃てば、私は死ぬ前におばあちゃんの頭をブチ抜くわ。良く考えてね」

「おやおや。秋葉原のメイドは、インドの警察に比べてちっとも怖くないね。でも、警察は数を頼みに推し寄せて来るから厄介だ。だから、私は娘達を連れて逃げるとするよ。私達の邪魔をして友達を見殺しにスルか、私達の邪魔をして自分達まで殺されるか、どっちか選ぶんだね」

「あらまぁ。どーしよーかしら」


音波銃を構えたままジリジリと後退スル老婆一家。一方、その地下では僕とラギィが大騒ぎをしてる。


「おい!先ず僕達を助けろ!」

「助けてぇ虎の餌になるために狙撃から生き延びたワケじゃナイの!」

「ラギィ、マジすまん。コレが最後の手段なんだ。許してくれ」


僕は…足元のモノリスを蹴り倒す!すると、モノリスは歩き回る虎の上へとユックリと倒れて逝き…


きゃー


一方、様々な銃を思い思いの相手に向け合う老婆一家とヲタッキーズ。床下から、きゃーと言う悲鳴w


「エアリ、マジどーする?」

「行かせるわ」

「ROG」


錆びたクレーンに駆け寄るエアリ。マリレは突撃銃モードの拳銃で一家を威嚇。姿を消す老婆の一家。


「待ってて!」


ハッチからクレーンのチェーンを下ろす…ところが!


「大変ょ!ラギィもテリィたんも虎に食べられちゃったわ。黒い箱の上を虎が歩いてる」

「しまった、遅かった?でも、食べられちゃったモノは仕方ナイわ。諦めましょう」

「未だ食べられてないわ。早く助けて」


開いたハッチの端から顔を覗かせる僕達。最後の瞬間に天井の梁にぶら下がって難を逃れたのだ。


「早く助けてくれ!未だ生きてる内に」

「テリィたん、さすがは主人公。簡単には死なないわね」

「あら?おばあちゃん一味は?」


外ではハプナのセミトレーラーが静かに動き出す。ハンドルを握るのは老婆。

その真正面にムーンライトセレナーダー。必殺技"雷キネシス"のポーズだ。


「何?やれやれ。また秋葉原のメイドかい?いったい、この街にはメイドが何人…」


次の瞬間、一家全員が見事に黒焦げw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


僕達が地下室に閉じ込められてた廃工場は、事業相続に失敗してイチゴ銀行に差し押さえられた物件。


「テリィたんと地下室でずっと一緒だったの?よく喧嘩しなかったね?」

「したけどね」

「でも、最後はコツをつかんだんだ」


まばゆい陽光の中で胸を張る僕。傍らのムーンライトセレナーダーは推しのミユリさんが変身した姿だ。


「コレはラギィのバッジね。ソレから音波銃と手錠。今回は"ウチの"テリィ様がスッカリお世話になっちゃって…ハックション」


ムーンライトセレナーダーのコスチュームは作者の趣味でセパレートのメイド服でヘソ出しナンだ。もう12月なのにw


「ありがとう、ムーンライトセレナーダー。テリィたんをお返しスルわ。でも、あの抜け目ナイ老婆一家をどうやって黒焦げに?」

「あーゆーおばあちゃんは、話し相手が欲しいの。だから、相手をスル時は、おばあちゃんがダラダラ喋ってる内にサッサと手を打つのがコツ。エアリ、マリレ。OK?」

「はーい。姉様」


メイド達は声を揃える。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


解散が決まり、後片付けが始まった万世橋(アキバポリス)の捜査本部。


「彼女の名前はルスル・パロク。2人の娘達と絶滅の危機に瀕した虎を秋葉原で飼育しては世界の富豪に売り飛ばしてた」

「待ってょマルテ・ネイス捜査官。ソレってスーパーヒロイン殺人を犯すほどのビジネスなの?」

「100億円産業だモノ。アキバ特別区(D.A.)は、世界でも稀に見る、虎の飼育や販売が自由に出来る規制緩和天国なの。だから、ルスル婆さんも秋葉原の地下飼育場で虎を繁殖させていたのね。そして、ハプナ・クンスは、国内はトラック輸送、海外の虎好き富豪には、彼等の自家用ジェット飛行艇で神田リバー水上空港から密輸してた。ゴーン同様、税関で引っかかるコトもナシ。ただし、秋葉原を出れば、絶滅危惧種である虎の売買は犯罪だから、ルスル婆さんはパプナ・クンスから情報が漏れるのを恐れて、その口を封じた」


麻取(まとり)の説明に唇を噛むラギィ。


「ソレで、1周遅れで私達が洋館に行った時は、自ら檻に入って被害者を装い、スッカリ油断させてから、虎用の鎮静剤で眠らせたってワケね?」

「アレ、人体に無害かな?未だ僕の口の中に、変な味が残ってルンだけど」

「あはは…じゃ虎の密輸については、桜田門(けいしちょう)と税関に引き継ぐょ。殺人については、所轄のラギィ警部、頼むぜ」


立ち上がるマルテ・ネイス捜査官。


「ありがとう。外まで送るわ」

「ラギィ。セミトレーラーの床の血だけど、ルイナの分析結果が出たわ。予想通り虎の毛と餌の血だった。多分、あのハッチは餌や薬の投与用にこしらえたのね」

「エアリ。因みに、あの虎はどうなるのかしら。処分されちゃうの?」


さすがにソレは可哀想だ。


「多分保護されるわ。でも、どーして?動物園に会いに行く?」

「ヤメてくれ。遠慮スル…しかし、あんな危険で奇妙な体験は初めてだったな。でも、今回の件で夜通し手錠で繋がれるなら、ラギィでも構わないかなって思ったょ」

「ホントに?じゃ次回は虎抜きで…いいえ。やっぱりヤメとくわ。ムーンライトセレナーダーに黒焦げにされちゃう」


惜しい。もう1推しだったが。


「あれ?エアリ、マリレは?姿が見えないけど」

「シン彼と神田リバーでカヌーだって。この寒いのにバッカじゃナイの」

「カヌー?」


おしまい

今回は、海外ドラマによく登場する"絶滅危惧種ビジネス"をテーマに、正体不明の老婆をめぐる捜索劇を描いてみました。虎が出るあたりからSF要素が抜けて苦手なミステリー要素が出て、描写などに苦労しましたが、何とか日曜夜までに描き上がり、週1作ペースをキープ出来ました。毎週ヒヤヒヤですが、人気作家気分を勝手に味わう仕掛けとして、自らに課していますが、さて、今週はどーなりますやらw


主人公と元カノが手錠で結ばれ一昼夜の行動を共にしますが、その微妙な心理描写や今カノのヒロインの絡ませ方などに苦労しました。上手く繋がってるでしょうかw


海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、すっかりインバウンドが多国籍化してる秋葉原に当てはめて展開してみました。


秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。

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