噴出する声達 上
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メルトンでは、新聞にハローティの薬物関与の記事が載り、オーバルとケイトの結婚に反発する声が国中のあちこちから噴出した。それらの声に王宮側はだんまりを示すと、益々民の王宮不審は高まる事となる。
「こんな様子では、公爵家にも容易に出入りできないわ…。」
ヘンリエッタは、朝刊を畳みながら呟く。婚約関係にある、ドラメント伯爵家にも連日記者達が交代で張り付いている。
(誰もが、新たな情報を欲している…。トマスは、先週お兄さんが亡くなって王都に戻ると手紙を寄越してきたけれど、何処まで知っているかしら。)
考えるヘンリエッタの隣にいるリュシウォンは、心配げ見上げた。
「ハローティにいる、イリウス様達は大丈夫かな。」
ヘンリエッタは、その言葉に固まった。努めて落ち着いた笑顔を向けて言った。
「そうね…。公爵様も一緒だから、きっと大丈夫。」
「うん。」
リュシウォンを抱き締めるヘンリエッタは、心の内で自分に言い聞かせる。
(きっと、きっと大丈夫…。)
◇◇◇◇◇
次の日、ヘンリエッタの元にトマスが姿を現せた。
「トマス!戻ってきたのね!」
思わず駆け寄るヘンリエッタに、彼は礼儀正しく頭を下げた。
「ご無沙汰して、すみません。兄の件では、ご助力頂きありがとうございます。」
「大変だったわね。まだ、気持ちの整理は付かないでしょう…?」
「いえ、兄の最後を看取れましたし。お嬢様や、周りの助けで生活出来ましたから。良い時間を過ごせました。」
「そう、それなら良かったわ。…あら?それ。」
トマスの左手薬指にはめられた真新しい指輪に、気が付いたヘンリエッタは指を指す。
「あっちの生活を助けてくれた女性と、こっちに戻ってきた後に結婚したんです。式とかする金は無いんで、せめて指輪くらいはと…。」
「そうだったの。傍に居てくれる存在が出来て、良かったわね。おめでとう、トマス。」
「ありがとうございます。」
「それで?貴方が私の所に来たと言うことは、何か持って来たのでしょう?新生活は、何かと物入りよ。」
ヘンリエッタの言葉に、トマスは苦笑いする。
「流石、お嬢様。分かっていらっしゃる。」
そういうと、トマスは話し出した。
オーバルとケイトの結婚を取り止めを訴える団体が王都に幾つか出来たこと。
ハローティからの輸入品の検査が強化されたが、今の所新たな薬物は発見されていないこと。
公爵一行の成果が、今後の両国関係に影響があること。未だに、いつ帰国してくるかは未定。
「ケイト様がハドソン公爵家に居る限り、公爵一行が帰国するまでは人の出入りが制限されるそうです。」
「そう…。」
「イリウス様が、心配ですね?」
トマスの言葉に、ヘンリエッタは軽く睨んだ。
「今回は、そう目新しい内容は無かったわね。これでは、払うことは出来ないわ。」
「えぇ!?そんなぁ。」
「最近の新聞記事から推測できる域を、越えていないわ。もっと、精出す事ね。」
「はぁ、そうですか…。」
屋敷から素直に帰ろうとするトマスを、ヘンリエッタは呼び止めた。そして手に持っていたワインのボトルを一本差し出す。
「え、これは?」
「結婚祝いよ。奥さんと、今夜にでも飲んだら良いわ。」
トマスの表情は、ぱあっと明るくなった。
「ありがとうございます、お嬢様!また、来ますね!」
そう言うと、ご機嫌に帰って行った。
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次回投稿は、明日20時です。




