薄曇りの荒野 下
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宛がわれた立派な屋敷に戻ると、公爵は配下を下がらせた。
「父上、どういう事ですか。」
息子の問いに、長椅子に深り天を仰いで座った父は暫く黙っていたが口を開くと言った。
「オーバルのハローティ留学は、統治者の娘との婚姻関係になる目的に含まれていたんだ。」
「え…?ですが、兄上にはケイトが…。」
息子の言葉に、父は頷く。
「オーバルは、こうと決めたら絶対に譲らない所がある。それが、ケイトだった。彼女と出会う前には、アイツもハローティとの政略結婚にも肯定的だったんだが…。その事で、ハローティは面子を潰された形だったんだ。」
「私が此処に来たのは、始めから血縁を結ぶ材料だったのですか?」
息子の問いに、父は首を振る。
「そうでは無かったが、統治者の言葉通りになるならそういう結果になるという言うことだ。オーバルは、次期国王として即位する。私が短期間の国政を敷いた所で、国庫を食い潰すだけだからな。若い頃ならまだしも、今のオーバルは簡単には外には出せない。だから、難しい外交問題はお前が支える必要もあったから今回は連れて来たんだ。」
父は、難しい顔をして言う。
「メルトンは豊かだが、ハローティに叶う程の力は無い。それに、戦争すら望んでいない。利益も無いからな。だから、其方とヘンリエッタの婚約を解消する方が、国は望むだろう…。」
父は、息子を見上げた。
「お前はどうだ?もし、ヘンリエッタと婚約を解消し、ハローティで新たな婚約を結ぶとなれば、兄の行いを、メルトンの行いを許せるか?」
イリウスは、眉間にしわを寄せる。
「それは、即答出来ません…。卑怯な、問いです。」
父は「そうだな。」と、呟いて立ち上がる。伸びをして、窓辺に歩いて行った。
「だが親として、そう簡単にこの話を進めて良い話だと思ってはいないさ。」
◇◇◇◇◇
イリウスは、自分を見据える少女に言った。年は、自分より幾らか下だろうか…?長く下ろした銀髪は豊かで艶やか、身に纏う物も美しい刺繍が施されて手の込んだ物だ。
ぱっちりっした青い瞳をこちらに向けたまま、一向に話し掛けてこない彼女に、イリウスは言った。
「貴女は、ハローティの統治者の末娘ですか?此処に来たのは、誰かの差し金か?それとも、自身の意思か?」
イリウスの言葉に、彼女はにこりと笑う。
「私の意思ですわ。イリウス・ルイ・ハドソン様。私は、マリアナ・シュバルツと申します。」
イリウスは、少し冷たい視線を向けるとそれを逸らした。
「男の部屋に、未婚の女性が訪ねて来るなど些か常識に欠けるのでは?」
「あら、そうでしたかしら?未来の夫となる男を、自分の目で確かめるのは当然でしょう?」
「な!?…それは、決まっていません。性急ですね。」
にこりとするイリウスに、相手も笑顔を崩さない。
「性急では、ありませんわ。メルトンは、ハローティの要求を応じるしか無い。」
「とはいえ」と、彼女は、自身のその豊かな銀髪に指を通す。
「愚かな男に、嫁ぐ気はサラサラ無いの。」
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