薄曇りの荒野 上
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イリウスの目線の先には、街の向こう側に北風の吹き抜ける荒野が広がっている。自身の滞在する発展した街と豪奢な建物との不釣り合いなこの光景が、あの大国のハローティとは思えなかった。
(これが、現実なのか…?)
技術はあるが、根本的に支える物が見当たらない。それは、ここまでの道中で明らかだった。
(だから、ある場所から奪うしか無かったという事なのか…。)
イリウスは微かな足音に振り向く。そこには、小柄な銀髪の少女がこちらを見据えて立っていた。
◇◇◇◇◇
イリウス達がハローティに到着して、翌日には統治者と面会した。
公爵が訪問の挨拶を述べる後ろに控えて、統治者と呼ばれる男をイリウスは観察する。
統治者は、肌ツヤがあり恰幅の良い体格だった。豪快に笑い、公爵と握手を交わす。今回の一行の訪問を、好意的に受け止めてはいるようでイリウスは安堵する。
「遠路、よく来てくれた。滞在中は、不自由なく過ごせるよう手配する。何か不都合があれば、屋敷の世話役に遠慮無く申せ。」
「ありがとうございます。」
そして、対面で席に付いた公爵から今回の訪問の目的を話し始める。
統治者はそれを静かに聞いていたが、話が終わった所で統治者は控えているイリウスを値踏みするように眺めた。その、刺すような視線の鋭さを、彼はぶれずに全身に浴びる。
「ふっ、肝は座っているな。」
統治者はそう呟くと、公爵に言った。
「丁度、末娘が彼と釣り合う年頃だな。」
「そんな、ご冗談を。息子は先日、婚約したばかりで…。」
「ほう。したばかりなら、解消した所で大した問題も無いだろう?」
「その様な事…。」
「あの兄の様な可笑しな奴に、可愛い末娘をやる気は無い。その点、彼は見所ある若者だ。」
統治者は静かに、それでいてハッキリと言った。
「果たされなかった血縁を、結ぶ時が来た。それが叶うなら、同盟の話を受け入れるつもりはある。」
(果たされなかった血縁…?)
イリウスが訝しんで公爵を見れば、彼は僅かに躊躇し、そして言った。
「果たされなかったのでは、ありません。あの時は、そちらも納得されたはず…。」
(あの時…?)
統治者は、吹き出す様に言った。
「ふっ。公の場でああも大々的に、公言されたのではな。まぁ、そうするしか押し通せなかったという事も確かだ。」
(押し通せなかった…?)
「兄の不義を、弟が清算するか。」
目を見開く公爵に、統治者は不敵に笑う。
「ふふふ、今回は私情より国益方を取る方が、賢明な判断だと思うが?」
「それは、そうですが…。」
「ハローティに、庇護を期待するには材料が無いな。」
「庇護等とは…。」
「我が国が隣国に無いという、余裕か?直ぐに、そうなろうぞ。」
言葉に詰まる公爵に、統治者の態度は変わらない。
「血縁関係にも無ければ、先々攻め落とすのに躊躇する事もあるまい?」
この二人のやり取りを後ろで見守るイリウスは、自身の事を言われているのに、容易に口を挟む事もままならない状況に耐えていた。
統治者は、席を立ち上がる。
「儂の末娘との婚約と、結婚までの息子のハローティ滞在が同盟成立の条件の一つとする。」
この言葉をもって、その日の面会は強制終了となった。
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次回投稿は、明日20時です。




