表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/141

銀髪の喪女 上

読みに来て下さり、ありがとうございます。

サクッと楽しんで下さい。


〝トゥール家の薬物使用に、大国ハローティの関与の疑い〟


 聞いたことも無い様な、弱小新聞社から出たその記事に世間は凍り付いた。そしてその後、各大手の新聞社からも同様な記事が載ると更なる不安感が広まる。


 そして遂に、王宮内外でオーバルとケイトの結婚に異を唱える声が上がることとなった。


 ヘンリエッタは今朝の新聞の記事に目線を落とし、朝食のサンドイッチを食みながら物思いに耽る。


()()()()が出て以降、短時間で随分と量が増えた…。他の新聞社も、この記事を出したくて準備していたのね…。)


 ヘンリエッタが王都に帰ってきてから、ハローティの記事が世間に出るのは時間の問題だった。

 けれど、最初の記事に見え隠れするトマス(書き手)の怒りを、ヘンリエッタは否定出来ない。


(私はトマスから情報を買うだけで、彼が記事を出すのを止める権利は無い…。)


 そして記事の内容は、限りなく真実に近かった。その為に王宮側は、否定する事も出来ないのだろう。


(オーバル様や公爵家の方々が一緒にいて下さるけれど、私もケイト様の味方でいよう…。)


 ヘンリエッタが彼女の為に出来る事は、今はそれ位しか無いのだから…。


 ◇◇◇◇◇ 


「ケイト…。」


 ハドソン公爵家の二階の窓から騒がしい外を眺めていた彼女は、婚約者の呼ぶ声に振り向いた。そこには、珍しく疲れた様な顔をしたオーバルがこちらに向かって歩いてきている。


「あまり、外を見ない方が良い。毎日の様に集まる彼等の様子は変わらないよ…。」


 ここ最近は、ケイトの滞在するハドソン公爵家の周りには民衆達が集まり、オーバル達の結婚を反対する声を掲げていた。


「ええ、そうね。でも、少しずつ数は増えているみたい。」


 力無く微笑むケイトを、オーバルは抱き締めた。がっしりとした彼の体に包まれて、ケイトは目を閉じる。


「ケイト、どうか気をしっかり持っていてくれ。」

「ええ…、そうね…。」


 彼女の虚ろな視線の先には、少しずつ膨れ上がる民衆達を捕らえていた。


 そこに、軽やかにドアをノックする音が響く。来た主はオーバルの妹、クリスティーナ。彼女はにこにことして、ケイトの手を取った。


「ケイト!私の部屋で、一緒にベールの刺繍の続きをしましょう?幾ら刺繍の達人の貴女でも、あの難解な構図は日々やらなくては大事な式に間に合わないわ?」


 目を丸くしているケイトに、変わりに兄が妹に返事をする。


「ああ、そうしたら良い。クリスの部屋は中庭に面していて、静かだし穏やかに過ごせる。」

「そうだ!お兄様、この際ケイトの部屋をお引っ越ししたらどうかしら?場所が変わると、気分も変わるでしょう?」

「え…。」


 言葉の出ないケイトに、オーバルが言う。

 

「それもそうだな。俺からも母上に言っておこう。」


 婚約者の言葉に、ケイトは慌てた。


「で、ですが、それでは貴方の部屋から離れてしまいます!」


 目を丸くするオーバルとクリスティーナの反応に、ケイトはハッとして赤面した。これでは、オーバルから離れたくないのだと駄々を捏ねている子どもの様だ。


「ごめんなさい、私の為を思って言って下さったのに…。」


 俯くケイトに、クリスティーナのコロコロと笑う声がする。


「仲が宜しい様で、ご馳走様です。これなら、お兄様がケイトに振られる心配も無さそうだわ。安心致しましたわ。」

「な…!?クリス!」

「そんな事…!」


 そこでパチリと目線が合った二人は、お互いに顔を赤らめる。

 そんな恋人達を前に、白目をむくクリスティーナは言う。


「あのー、私がお邪魔しているのは承知ですけれど、お兄様はもう公務にお戻りになって?外で側近達が困っているわ。ケイトは、私が責任持って一緒に過ごしますから。」

「あぁ、そうだ。ありがとう、クリスティーナ。頼んだよ。じゃあケイト、またランチで。」

「はい。」


 そうしてオーバルを見送ったケイトは、そのままクリスティーナに手を引かれ、表の騒ぎが届かない彼女の部屋へと連れて行かれた。


 

最後まで読んで下さり、ありがとうございます。

次回投稿は、明日20時です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ