黄色い歓喜の裏側で 上
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ヘンリエッタとイリウスが揃って王都に帰ると、次の週には王宮を通じて二人の婚約が正式に発表される。
半年後に控えたオーバルとケイトの結婚の事もあって、メルトン中が王族の新たな慶事の知らせに喜び合った。
そんな中、ドラメント伯爵家を訪れたトマスはヘンリエッタを目の前に、憮然として言った。
「やっぱり、ハドソン公爵と親戚になるのは本当だったのか…。」
「あら、発表される二日前には貴方に情報を与えたじゃない。」
「そうだけどさ…。」
「そして、知っていたにも関わらず公表前には紙面を出さなかった。」
「そりゃ、ウチみたいな弱小出版社なんか国に睨まれたら即消されるだろ!俺なんか、捕まるレベルだろ。公表前に、出せるわけ無い。」
ブスッと不機嫌に椅子に座るトマスを、ヘンリエッタは苦笑いする。
「それで、本題は何?」
執務室の席を立ったヘンリエッタの言葉に、トマスは軽く溜め息を付くと言った。
「トゥール家の薬物の出所は、ハローティが絡んでいるんじゃないかって話だ。」
ヘンリエッタは僅かに目を見開いたが、平静を装ったまま頷いて話の先を促した。トゥール家の不法薬物の取り扱いは、ヘンリエッタが王都に戻る前に世間の知るところとなっていた。
トマスは、彼女の様子をチラリと見て話を進める。
「まぁ、元々ハローティはサバナの儲かる利権を掌握して実質的な支配下に置いている。その手段の一つに、あの薬物を密かにばら撒いた訳だが。作用としての一時的な興奮状態を、強壮剤として銘打ったらしい…。トゥール家は、新たな強壮剤として個人的な理由で輸入に着手した様だ。」
「強壮剤…。」
「まぁ、あっちの具合が悪かったんだろ…。」
「あっち…?」
首を傾げるヘンリエッタに、トマスは盛大な溜め息を付く。
「勃たないって事じゃねぇの?男にとっちゃあ、死活問題だよな。アンタ、婚約したんならその辺の事情を察しろよ。」
「な…!?」
ゴンッ!
「いって!」
「悪ふざけが過ぎます。」
顔を真っ赤にするヘンリエッタの前で、侍女のアンはトマスの後ろから彼に鉄拳を振り下ろしたのだ。
「何だって…。」
振り向いて侍女を睨もうとしたトマスは、一瞬で固まった。ヘンリエッタはにこりとして、トマスの視線の先を見る。
そこには、ヘンリエッタの婚約者であるイリウスが柔やかにこちらを見ていた。
「私の婚約者に対して、あまり品の無い事を吹き込むのは頂けないな。トマス・ダーマン?」
笑ったままトマスを見据えるイリウスに、彼は苦笑いしてヒュッと息を吐く。慌てて立ち上がると、恭しく頭を下げた。
「申し訳ございません、ハドソン公爵子息。」
イリウスはトマスに頷くと、ヘンリエッタに近付いて右手の甲に軽く口付けを落とした。
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