晴れ渡る青空の元 下
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ドラメント伯爵の屋敷に、迎え入れられたイリウス達は直ぐに手厚い持て成しを受ける。
彼等は身に付けていた甲冑を脱ぎ去り、風呂に入ってシャツとトラウザーズという軽装に。そして、食事の並んだテーブルへと案内された。
食事を終え応接室へと案内されれば、イリウスはゆったりと長椅子に座った。
用意されたお茶を飲み、ヘンリエッタに話し掛ける。
「なんで、そんな隅にいるの?ここは君の屋敷でしょ?」
「ええ、そうね。」
人目を憚らずイリウスに抱き付いた事を、冷静になったヘンリエッタはもの凄く恥じ入っていた。
壁際に立ったまま動かない彼女に、イリウスは自分の隣をポンポンと叩く。
「ほら、ここ。」
「…、はい。」
ヘンリエッタが素直にイリウスの隣に座ると、彼はガバリと彼女を抱き締めた。
「わっ!?…イリウス?」
「ヘンリエッタ…、コルセットをしていないの?」
「あ…!しているけど、してないわ。」
その事実に気が付いて、そそくさと離れようとするヘンリエッタを、イリウスは引き止める。
「いやいや、待って。まだこのままで。」
「や、落ち着いたら恥ずかしくなってきたから。」
「丸一日馬で走ってきた褒美として、もう少しだけ。いつもより、凄く触り心地が良い…。」
イリウスは、ヘンリエッタを抱き締めたまま言った。しかも、抱き締めた手を上下に撫でるようにして首筋の匂いまで嗅がれている。
「ちょっと、イリウス。本当に、恥ずかしいから!」
「そう?それなら、ちょっと二人にしてくれないか。」
「「畏まりました。」」
「え、ちょっと。そういう問題では無くて…!?」
イリウスの腕の中から顔を上げたヘンリエッタが振り向いた時には、控えていたアンもイリウスの護衛達も姿を消していた。
「え…?わっ。」
二人になると、イリウスはヘンリエッタを抱き締める腕に一層力を込める。そして、ポツリと呟いた。
「安心した…。」
目を見開くヘンリエッタに、イリウスは言葉を続ける。
「君が元気そうにしていてくれて、良かった。本当に、どうにかなりそうだった。」
「ごめんなさい。」
暫くイリウスに抱き締められていたが、やはり気恥ずかしくてヘンリエッタが動き出せば、首筋に顔を埋めるイリウスが聞いた。
「で、コルセットしてないんだ?」
「ええと、布のコルセットをしているの。王都では革のコルセットだけれど、あれだと重いし硬いから動き辛くて…。領地にいるときは使わないの。」
「ふーん…。俺は王都でも、布が良いな。」
「革ほどのしっかりとした固定が出来ないから、ドレスが綺麗に見えないわ。」
「そんな心配しなくても良いのに。」
「大事な事よ、女性に取っては!」
「そうか、ごめん…。」
そのまま、イリウスは無言になる。
「ちょっと、イリウス!大丈夫?先に休んだ方が良いのでは?部屋も準備させているし。」
「いや…、ちょっと違う。」
「違う?わっ!」
ヘンリエッタはイリウスに引き上げられて、向かい合う様にして彼の膝の上に座る事になる。密着度が高いのが恥ずかし過ぎて、俯くと頭に数々のキスが落ちてきた。
彼女は、両手で彼の口元を塞ぎ言った。
「イリウス、待って!私、貴方に話があるの。」
「俺も話がある。一緒だな。」
「それなら、ちょっと離れて冷静に話しましょう?」
「婚約者とやっと再会したのに?」
ヘンリエッタは目を丸くして、イリウスを見た。
「私達の婚約は、続いているの…?」
イリウスは苦笑いして言った。
「続いてって、ヘンリエッタは解消したいのか?」
「だって、…セニアル侯爵家とトゥール伯爵家の事に、他人の私が首を突っ込んだのは知っているでしょう?」
「それは、誘拐事件を解決した事?それとも、輸入品の売買契約の癒着を暴いた事?あ、無認可の薬物使用が発覚した事かな?」
イリウスの言葉に、ヘンリエッタは彼の顔を見て首を振る。イリウスは笑って言った。
「君は、先に知らせてきただろ?〝ランドールを助けたい〟って。」
「ええ。」
「君は、その言葉の通りに〝幼なじみ〟を助けた。」
「ええ。」
「そして次いでに、トゥール伯爵家と高官達との癒着と、無認可の薬物使用した事実が明らかになったんだ。」
ヘンリエッタは少し考えて言った。
「無認可の薬物使用?」
「これは未だ、新聞社にも公表されていないんだけどね。トゥール伯爵家が使用人達に対して、輸入した無認可の薬物を使用した事実が出てね。」
「そんなに、危ない物なの?」
イリウスは、眉間にしわ寄せして俯く。
「精神を酩酊に近い状態にして、一時的なトランス状態を引き起こす薬物。けど中毒性と、依存性が高くてね。一度使えば、薬を絶つことが出来なくなる…。」
「そんな物が…。」
ヘンリエッタの顔色は青くなる。イリウスは微笑んで、彼女の両手を握るとその指先に口付けをした。
「それが、巷に出回るのが防げたんだ。まぁ、どっからどう入手したのかは、これから調べる事なんだが。」
「そうなのね…。」
「ムーアス隊長に会ったんだろ?彼も、癒着にくっついてこんな事実が発覚するなんて思っていなかっただろう。」
ヘンリエッタがリャットの顔をぼんやりと思い出していれば、イリウスはその唇に触れる様なキスをした。
「国の危機を食い止めた君と、どうして婚約解消するのさ?王宮中が安堵したというのに。」
「だってランドールとの事は、貴方と何も話していなかったから。」
「ランドールは幼なじみで、一時期は君にとって特別な存在だった。でも、君達の間には何も無かった。」
「分かるの…?」
怪訝な顔をヘンリエッタに、イリウスはまた口付けをする。
「最初の頃、キスするだけで緊張していたヘンリエッタの姿を見れば分かるよ。」
ヘンリエッタは思い出して、顔を赤らめ俯いた。イリウスは笑って、そんな彼女を抱き締める。
「でも、次に似たようなことが有っても少しはストッパーになる存在して君の隣にいたいと思う。」
イリウスは言って、ヘンリエッタを見据えた。
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