金色の大地 上
読みに来て下さり、ありがとうございます!
第四章に入ります。
サクッと楽しんで下さいね。
「お父様、それは何ですか?」
急に領地に来た娘達の姿を見たドラメント伯爵は、一瞬目を見開いたが和やかに迎えた。
「わぁ!リタちゃんのその髪型、斬新だねぇ。」
相変わらずの父の反応に、肩透かしを食らった気分だが、ヘンリエッタは苦笑いして肩の上で短く揃えてもらった髪の毛を撫でる。
(お父様らしいだけだわ。こう言うときは、その能天気さに救われるのね…。)
落ち込んでも仕方が無いかと、ヘンリエッタは思い直す。先ほど再会したノートンの様に、この父が悲痛な涙を流して泣いたとしても自分にはどうしようも出来無いのだ。
「あ、これはね、箕っていう風の力で籾とゴミを分ける機械なんだ。東の方の国で知ってさ、当時集めた資料から作ったんだよ。これで、麦の収穫後の作業が楽にならないかなと思ってね。」
「これ、どうやって使うの?」
リュシオンが、興味津々に一見箱のようなフォルムを見ている。
「ああリュシー君、こっちにおいで。この上の枠の中に、収穫して茎と分けた状態の穂先をカスごと纏めて入れる。そして、ここの横の棒を回すんだ。」
ドラメント伯爵は、言いながら上に開いた口からバラバラと麦を入れ、横のハンドルをぐるぐると回した。すると風が中を吹き抜け下からは麦の籾が、横からは分けられたがパラパラと飛ぶ。
「すごいね、これ!」
「褒められちゃった。嬉しいねぇ。」
男達が箕を前にワイワイと騒いでいるのを、ヘンリエッタは苦笑いして見守る。
ロマニエルでは絶対に食い付かない内容に、食い付いてくるリュシオンの事を父は嬉しく思っているのだ。
(お父様がこんな嬉しそうに話す姿を見るのは、いつぶりかしら…。)
そんなことを考えていたら、急にこちらを見たドラメント伯爵が言った。
「それでリタちゃんは、暫く領地に居られるんでしょ?」
「暫くって…。」
正直、今回は滞在期間を決めずに来てしまった。それを、これまでの経緯を加えながら父に話す。
聞いた方は、柔やかに言った。
「そっかー、じゃあやっぱりリタちゃんは暫く領地にいたら?僕はその間、王都に行ってくるからさ。」
「え…?」
「リュシーくんはさ、蜻蛉返りで申し訳ないけれど僕と一緒に王都に戻ってくれないかな?」
ヘンリエッタは、目を見開いて飄々とする父を見た。
「お父様!?」
「ねぇ、リタちゃん。確かに、僕はリュシーくんを君に託したけれど、今の君は休んで元気になる必要はあるよ。リュシー君だって、一人前の紳士を目指して居るんだからさ、いつまでも子どもみたいには出来ないよね?」
ヘンリエッタは、リュシウォンの方を見た。目が合った少年は、にこりと笑うと頷く。
そして、伯爵を見上げると言った。
「伯爵様の、お言葉のままに。」
「リュシー!」
「じゃあ、決まりだね。」
「お父様!?」
焦っている娘を、父は宥める。
「僕だけだったら無理だけど、王都にはセルマンも侍女達もいるんだからさ?心配要らないよ、大丈夫。」
(あ、結構、他力頼みだったわ…。)
そういう、線引きをするところが父らしいと思う。
ヘンリエッタはもう一度、リュシウォンの方を見る。少年は穏やかに言った。
「リタさん、僕の事は心配しないで。ユリアもいるでしょう?」
「リュシー…。」
ヘンリエッタは両手を握り締めれば、顔を上げて父を見た。
「分かりました。リュシーの事、お願い致します。」
対する父は、柔やかに頷きながら言った。
「じゃあ、決まりだね。ノートン、僕等は明日の朝王都へ発つよ。」
「畏まりました。」
「お父様は、王都でどうされるのですか?」
「ん?まぁ…、リタちゃんの汚名返上はしないといけないよね。後は、ハドソン公爵家に話に行ったり、セニアル家やトゥール家の事にお灸据えとかないと、だし?」
「お父様、ランドールは違います!彼は、今回の被害者です。」
「うん、まぁ、そういう面はあるかもね…。でも、男としてのケジメは必要かな?」
ヘンリエッタは、にこにことする父を見上げる。
(この人は、どうして領地にいながらにして、王都の事を見てきたように話すの…?)
「まあまあ、そんなに心配しなくても大丈夫だからさ。リタちゃんは、少しゆっくりとしたら良いよ。ね?」
屈託のないその見慣れた笑顔を、ヘンリエッタはただただ見上げるしか無かった。
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次回投稿は、明日20時です。




