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暗闇に指した一筋の光 下

読みに来て下さり、ありがとうございます!

サクッと楽しんで下さいね。


 外の騒ぎを遠くに聞きながら、ヘンリエッタ達は薄暗い使用人通路を歩いて進む。

 そしてヘンリエッタに手を掴まれた侍女は、震える体で突き当たりの一つの扉を指差した。


「あの、扉の部屋です…。」


 そう言った時、扉が開き細身の赤毛の男が出て来たと思えば鍵を掛ける。


「捕まえて!」


 ヘンリエッタの言葉と同時に、二人の護衛がその男に飛び掛かる。一人が男の腕を縛り上げ、一人は鍵を探った。


「有りました!」


 ヘンリエッタは鍵を受け取ると、直ぐさま扉を開いた。同時に、中から甘ったるい臭いが漏れ出てくる。

 薄暗い中に、二人の人影が見えた。


「誰!?」


 ヘンリエッタは、ハンカチで口を覆いながら叫ぶ。


「窓を開けて!!」


 一人の護衛と共に部屋に入り、窓辺に急ぐ。勢いよくカーテンを引いて、窓を開け放した。

 甘ったるい臭いは、サーッと部屋から流れ出る。同時に、叫び声や怒号が聞こえ屋敷の方からは煙りが上がるのが見えた。


(あっちも、直に終わるわね…。)


 ヘンリエッタがホッとして振り返れば、二人の護衛がベッドの上のランドールを起き上がらせた所だった。案内してきた侍女は、部屋の隅で呆然とするバネッサを抱き締めて泣いている。


 ヘンリエッタは、シーツにくるまり俯いてベッドに座るランドールに近寄った。彼女には、彼に掛ける言葉が見付からなかった。


(どうして、こんな事に…。)


「お嬢様、我々もあちらに合流しましょう。」

「そうね。」


 促されたヘンリエッタは、迷ったがランドールの肩に手を置いた。彼は、ビクリと体を震わせてから顔を上げる。

 

 (あぁ…。)


 久しぶりに見た彼の姿に、ヘンリエッタの胸は痛いほどに締め付けられる。


 優しい眼差しも、甘いマスクも、鍛えられた肉体も、光輝くあの空気感でさえも…。


(失われてしまった…。)


 ヘンリエッタは、涙が滲むのを必死に我慢する。


「来るのが遅くなって、ごめんなさい…。」


 ランドールは、目を見開き固まった。ヘンリエッタは、ランドールの返事を待たずに踵を返してバネッサを見た。


 ランドール同様に、久しぶりに見た彼女の姿もまた変わり果てていた。


 ボサボサの紫色の髪、泣き腫らして腫れた黄色い目、ボロボロの肌、やつれた顔付き…。

 かつての、華やかなバネッサ・トゥール伯爵令嬢の姿はそこにはいなかった。


 ヘンリエッタの視線に気が付いた彼女は、ギッと睨む。


「これで、勝ったつもり!?」

「お嬢様…!」


 侍女の制止を無視して、バネッサはヘンリエッタに言う。


「さぞかし良い気分でしょうねぇ!」

「いいえ。」

「ふははははっ、アンタみたいな醜女に渡さないわ!ランドール様は、私の物よ!」


 ヘンリエッタが口を開こうとした時、後ろから手が伸びてきた。


 バシッ。


 静な部屋に、乾いた音が響く。バネッサは左頬を押さえて、その場に崩れ落ちた。


「ランドール…。」


 ヘンリエッタの声に、ランドールは無言でそのまま部屋を出て行こうとする。


「あ…。ランドール様…。ランドール様ぁ!」


 バネッサが泣いて縋ろうとするのを、ランドールは見向きもせずに歩いて行く。


「いやああああああぁぁ!!」


 取り残されたバネッサの泣き叫ぶ声だけが、響き渡った。











最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

次回投稿は、明日20時です。

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