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暗闇に指した一筋の光 上

読みに来て下さり、ありがとうございます。

サクッと楽しんで下さいね。


 アルマは、助けを求めて走った。


 街の警備兵に頼っても、時間を食うだけ。痛む体に鞭打って、彼女は目的地を目指して走り続ける。


(ランドール様…!)


 既に顔馴染みである門番の男は、彼女の姿を見てぎょっとして駆け寄った。


「アルマさん!?どうしたんですか?」

「無礼を承知で申し上げる!どうか、どうか、主を助けて下さい!!ヘンリエッタ様のお力をお貸し下さい…!!」


 ただならぬ事態に、アルマは直ぐにヘンリエッタに引き合わされた。


「アルマ!?」


 ボロボロのアルマを目にして、ヘンリエッタは目を見開く。アルマは構わず、膝を折って頭を地面に擦り付けた。


「失礼を承知で、お願い致します!どうか、トゥール伯爵家に囚われたランドール様をお助け下さい!!お願いします!」

「ランドールが、トゥール伯爵家に囚われた?…両家は、婚約関係にあるのでしょう?」

「表向きはそうですが、内実は違います。ランドール様は婚約解消される為、密かに侯爵家を出られ両家に追われる身でした。それを、終息させるためにランドール様はトゥール伯爵家に向かわれたのです。」


 ヘンリエッタは、アルマを見下ろす。


「そう…。ランドールが囚われたのは、いつなの?」

「一時間ほど前です。御身が心配です…。」


 黙ったヘンリエッタは、セルマンを見た。家令は、僅かに眉間にしわを寄せる。


「分かったわ。」

「お嬢様…!」


 主の決定を分かってはいたが、セルマンはその意向に待ったをかけざるを得ない。

 

「ランドールの事を、放っておけないわ。」

「ですが、お嬢様がお一人で動かれるのは大変危険です!せめて、ハドソン公爵家、いえイリウス様のお帰りを待たれた方が宜しいかと。」

「私だって、そうしたいわ。でも、知らせを出して帰りを待てば手遅れになってしまうでしょう…!?」

「ですが、婚約関係にある彼等の問題に、今のお嬢様が首を突っ込めば貴女様のお立場を危うくしかねません!」

「分かっている、分かっているわ。でも、出来ることをやらなければ…!」

「…はい。」


 セルマンは、若い主の決定を受け入れながらも拳を握り締めた。

 危機詰まった状況とはいえ、ヘンリエッタの温情が受けられると分かって助けを求めるアルマに苛立ちさえ覚える。


「セニアル侯爵家と、ハドソン公爵家の別荘に早馬の知らせを出して!街の警備兵にも協力の打診を!ドラメント伯爵家(うち)の護衛や警備の非番の者を集めなさい。私達は、先に動くしかないわ。」

「畏まりました。」


 ヘンリエッタは、集まる使用人達の不安げな顔を見渡し柔やかに言った。


「トゥール伯爵家に、お見舞いに行きましょう。急いで馬車を準備して頂戴。」

「「「はいっ!」」」


 ◇◇◇◇◇


「本日、お約束は無いはずですが…?」


 トゥール伯爵家のバネッサ付きの侍女は、ヘンリエッタに素っ気なく言った。


「ええ、ですがバネッサ嬢がお加減が悪いと聞いてお見舞いに参りました。お会い出来ないほど、悪いのかしら?婚約者のランドール様とは、お会いになっていると伺いましたの。」


 ヘンリエッタの言葉に、相手の眉根がピクリと動く。


「婚約者様は貴女様と違い、お嬢様とは特別なご関係ですので…。」

「ですが、()()()二人は会うと聞きましたの。貴女は、彼等の事をご存知でしょう?」

「それは…。」


 侍女は、ヘンリエッタから目を逸らした。


「事実を隠せば、私と話した貴女の身はただじゃおかないわよ。」


 侍女は、目を見開き震えた。


「その様な事…。」

「あら、余程牢に入りたいのね?」


 ヘンリエッタは、畳み掛ける。


「貴女はバネッサを、見殺しにするの?」

「まさか…!」


 そこまで言った所で、応接室の扉は開かれた。


「あら、ご機嫌よう!ヘンリエッタ嬢!」

「ご機嫌よう、トゥール伯爵夫人…。」

「娘の見舞いに来て下さったとか?お礼申し上げるわ。生憎、今日は体調が悪くて会えませんの。」

「そうなのですね、ランドールがバネッサ嬢とお会いになると聞きましたので、私もお見舞いに参りました。」


 トゥール伯爵夫人は、僅かに眉間にしわを寄せるが柔やかに言った。


「そんなこと、ありませんよ。貴女が勘違いされているのでは?」

「そうですか?確かな筋からの話ですが?」

「そうなんですか…?」

「ランドール様は、護衛を付けておられますよね?今日は、女の護衛でしたか。」


 伯爵夫人は、バサッと扇子を開いて口元を隠した。


「覚えに、無いわ…。」

「娘の有名な婚約者が、いつも連れている護衛ですよ?私でも、知っていますが。」

「そうでしたかしら?」

「アルマという、青い髪の毛で背の高い方です。」


 伯爵夫人は、無言でヘンリエッタを見る。


「先程、我が屋敷に来ましたの。」


 伯爵夫人は、目を見開いた。


「傷だらけで、私に助けを求めて来ましたの。」

「お黙りなさい!」


 伯爵夫人は、ヘンリエッタを睨みつけた。対するヘンリエッタは、柔やかに言う。


「やはり、ご存知ではないですか。」

「貴女、どういうつもり!?」

「私は、ランドール様を解放して頂きたいだけです。」

「他人の貴女が、口出しする事では無くてよ?」

「でしたら、身内のセニアル侯爵家はご存知なのですよね?ランドール様が、こちらに居る事を…。」


 ヘンリエッタの言葉に、トゥール伯爵夫人の目が見開かれた時、外でラッパの音が響いた。


「何事なの!?」


 伯爵夫人が驚いて窓の外を見れば、門が破られ兵士達が流れ込んで来るのが見えた。


「な!?」

「奥様、外にセニアル侯爵家の兵と警備兵が…!」

「どうして…!?」


 伯爵夫人が、ハッとしてヘンリエッタの方を見た時、彼女は既に走り出していた。その手に、娘の侍女の手を引いて…。

 




最後まで読んで頂き、ありがとうございます。

次回投稿は、明日20時です。

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