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紫色の瞳に移る世界 下

サクッと楽しんで下さいね。


 イリウスは、ヘンリエッタのほっそりとした腰を引き寄せる。彼女がこちらを見上げた時、直ぐにその唇を塞いだ。


 ヘンリエッタがハドソン家に通い出して、一ヶ月になろうとしている。イリウスは、あまり彼女と一緒に過ごせるわけでは無かったが、午後のお茶の時間の前後は少し二人になる時間が作れた。


 そういった時間に、イリウスはヘンリエッタの傍に寄る。初めは緊張しい彼女だったが、今では少しずつ慣れてきたのか体を硬直させることも随分減った。


 彼女は、クリス()の様に女性として甘えるのが上手くない。寧ろ、甘えるくらいなら自分で解決しようとする所がある。それは、以前のイリウスが望んだ女性像としては理想的でもあったが、自分の気持ちが育った今では不安の種にもなった。


(もっと望んでくれたら良いのにと思うのは、自分の我が儘だろうか…。)


 表情に曇りは無いか、お茶は進んでいるか、笑顔は硬くないか、イリウスはそれとなく気に掛ける。

 そして、今日こそ口付けに応えてくれるか…。


 イリウスは、彼女を抱き締めてその香りを目いっぱい吸い込む。相変わらず、いい匂いのする彼女に思わず力が入った。


(まぁ、今はこの一生懸命さが堪らないんだよな…。)


 漸く、ヘンリエッタを解放したイリウスは俯きがちになる彼女を前に満足げに笑った。


 ◇◇◇◇◇


(今日も、抱き締められてしまったわ…。)


 ハドソン家からの帰り道、馬車に揺られるヘンリエッタはぼんやりと車窓を眺める。この一月で、公爵家の面々や敷地内の事は良く分かり慣れた。

 けれど、イリウスとの触れ合いはどうしても慣れない…。


 しかも、段々と濃厚な接触になってきているようにも思う。


(まぁ、嫌では無いけれど…。)


 そう思ったヘンリエッタの顔は、みるみるうちに朱に染まる。


(なんて事なの…!)


 そう思った所で、馬の嘶きと共に馬車が揺れる。


「どうしたの?」


 小窓からアンが御者に確認したのに聞いた。


「こちらの馬が、ちょっと驚いただけですが…。」


 珍しく歯切れの悪い彼女に、ヘンリエッタは外を見る。そこは既に屋敷の門前ではあったが、体軀の立派な灰色の馬の傍に見知った顔があった。


「アルマ…。」


 それは、数ヶ月ぶりに顔を見た幼なじみの護衛の姿。ヘンリエッタを乗せた馬車は、彼女に構わず伯爵家の門を潜る。


 馬車からアルマの姿を見送る主に、アンは堪らず言った。


「門番から時折、姿を見せると報告はあったのですが、セルマンさんと相談してお嬢様には黙っておこうという話になりまして…。申し訳ございません。」

「そう…。」


 ヘンリエッタは、俯きがち静かに言う。アンは、更に言葉を続ける。


「ランドール様は婚約されていますし、お嬢様にはイリウス様がいらっしゃいます。アルマさんは、公爵家の一護衛に過ぎません。関わるのは、お止めになった方が賢明かと…。」


 ヘンリエッタは、静かに頷く。


「貴女達の判断は、正しいわ。」

「はい…!」


 安堵の表情になった侍女に微笑み、ヘンリエッタは思う。


(もう数ヶ月…、ランドールの顔を見ていないけれど最後に会ったのがもう何年も前の様…。貴方は、どうしているかしら…?)






最後まで読んで頂きありがとうございます!

次回投稿は明日20時です。

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