青い瞳は悲しみに揺れる 下
サクッと楽しんで下さいね。
どれくらいの時間、ヘンリエッタはランドールに抱き締められていただろう…。
ランドールの体の緊張が徐々に解けて、彼が落ち着きを取り戻していくのを、彼女は腕の中で感じていた。少し拘束が緩んだ時、静かに言った。
「私達も、大人になってしまったわね。」
「うん…。」
「貴方の力を発揮出来る場所は、これからも貴方を幸せにするわ。」
ランドールの体がぴくりと跳ねた。
腕の拘束が緩んで、ヘンリエッタはランドールから少し離れる。微笑みを浮かべて、悲しみに揺れる彼の青い瞳を覗き込んだ。
「これまでも、そうだったでしょう?」
「だから、君の事が守れる。」
ヘンリエッタは、無言でゆっくりと首を振る。
「それは、貴方が責任と義務を負っているから。貴方は一人ではなくて、家族や周りの支えがある。そして皆が、貴方を必要としているの。」
ヘンリエッタは、ランドールの背中をトントンと軽く叩いた。
「ランドール…、貴方はこれからも自分の責任と義務を果たして。私も、そうする。」
「そんな…。」
「私達が、そういう立場で生きているのを、貴方は理解しているでしょう?」
「ヘンリエッタ…。」
「そうしなければ、私達は本当に全てを失ってしまうわ。」
ランドールの瞳に映る、自分の姿も揺れていた。その姿は、酷く儚げで弱々しくも見えた。
ヘンリエッタは、彼に微笑む。
「私が居なくたって、今の貴方なら何でも出来るわ。もう、子ども頃の貴方じゃ無い。自分の役目を果たせる人。そんな貴方だから、皆が着いてくる。貴方は、大きな力を上手く集めてそれを使えるの。そんな事、誰でも出来る事じゃ無いわ。」
ランドールの拘束が更に解かれて、ヘンリエッタはホッと安堵した。彼の大きな手を握り、揺れる青い瞳を見上げた。
(こんなに近くで、この瞳を見る事も無くなるわね…。)
「ランドール、私とお友達になってくれてありがとう。貴方が居てくれたから、私は寂しくなかった。私が頑張れたのは、貴方がいてくれたお陰。」
「僕は、…。」
ランドールは、何かを言いかけたが止めた。目を閉じて、両手でゴシゴシと顔を擦る。
「忘れない。」
ポツリとそう言った彼の顔は、何か意思を固めた表情をしていた。
ヘンリエッタは、無言で彼に頷いた。
日が落ちて辺りが夜の闇に包まれる中、アルマを従えてドラメント伯爵家の門を出て行くランドールをヘンリエッタは屋敷の扉の前で見送る。彼の後ろ姿を、しっかりと目に焼き付けた。
(私の方が、もっと取り乱すかと思っていた…。)
ランドールと離れた自分の気持ちは、驚く程に落ち着いている。
寂しさが無いわけではない
そんな事よりも
ただ、愛しく…
ただ、大切で…
そして、幸せを祈っている
誰よりも
最後まで読んで頂きありがとうございます!
次回投稿は明日20時です。




