表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
113/141

充実した生活 上 

読みに来て下さり、ありがとうございます


「リュシウォン、準備出来た?」

「今行く。ハロルも行くだろ?」

「ああ。」


 リュシウォンは、寮で四人部屋に入った。同室者は、イヴァンとエリオット、そしてメルトンの辺境の地出身のハロル。

 一年生は四人部屋、進級すれば二人部屋になり卒業年は個室になる、という具合だ。留年や飛び級もあるので、来年以降はどういった部屋の割り振りになるかは分からない。

 週末ではあったが、遠方の入寮者が多いので寮は賑やかだった。


 寮生活は食事の仕度や洗濯、共同のトイレや浴室の掃除等共同のスペースの事以外は各自が自分でやることになっている。

 最低限の掃除をしたことも無い者は、掃除の仕方を入寮前にチェックされる。とはいえ、自己責任とされている個人スペースの掃除や片付けは個人の管理となるので個人差がでる場所だった。


「エリオットの所は、相変わらずすごいな…。」


 部屋を出る前に、イヴァンが見て呟く。これには、同室者の二人も苦笑いするしか無い。


「まぁ、本人は何が何処にあるか分かるみたいだから問題は無いみたいだけどね。」


 リュシウォンの言葉に、ハロルも頷く。

 

 寮部屋では、食事が禁止されているから最低限虫は湧かないからいいものの、家事労働全般やる必要の無かったエリオットは片付けや整理整頓が苦手だった。教科書や資料が雑多に床で散乱し、窓際の机が遠い様な錯覚に陥る。


 それでいて個人スペースから全くはみ出していないから、三人は温かく見守っているのだ。


「俺達みたいに、地方貴族ならまだしも王都に屋敷を構える貴族なら、わざわざ寮生活する必要が無い様にも思うけどなぁ…。」

「まぁ、エリオットにも色々あるんだろう。」

()()()な、リュシウォン。」


 イヴァンの言葉に、リュシウォンは目を丸くする。


「いや、俺は居候だからさ。」

「居候って言っても、お前は既にドラメント伯爵家の家族みたいなもんだろ。」

「まぁ、そう見えるかもしれない。」


 イヴァンは、リュシウォンと一番付き合いが長い。だから、彼の事は大体知っているし、寮生活の理由も何となく見当は付いている。

 隣の友の背中を、バシッと叩いてニヤリと笑った。


「応援してる。」

「…ありがとう。」

「まぁ駄目だったら、成人後ならヤケ酒に付き合ってやるよ。」

「お前な!」


 二人が戯れるように小突きながら部屋を出る後ろを、元々口数の少ないハロルは静かに着いて出た。


 ◇◇◇◇◇


 大学校に入学したリュシウォンの生活は、毎日充実していた。


 気の置けない仲間との時間や、新たな知識を得る楽しさがあって充実していた。ドラメント伯爵領地の仕事の方がリュシウォンには大事な事だったから、大学校に入るのを辞めようかと思う時期もあった。

 けれど、ヘンリエッタに行っておく方が良いと説得され今に至る。


 それが正しい判断だったと思っている。今の所リュシウォンが飛び級する予定は無く、順当な年齢での卒業を目指している。


 長期休暇に入るまでヘンリエッタには会えないのは辛いが、護衛を連れないで行動できることも、自分の事を自分でする事も苦では無かった。そして何より…。


(ヘンリエッタに会えない期間に少しでも成長して、どうにかしてこちらへ振り向かせたい。)


 リュシウォンの揺るぎない思いであり、イヴァンの言葉通りなのだ。


 ◇◇◇◇◇


 三人が鍛練場に来ると、先客がいた。


「キャロライン!」


 真っ先に気が付いたイヴァンが言った。髪をアップにしたキャロラインは、タオルで汗を拭いながら言った。


「おはよう、休日だからってたるんでるのじゃない?エリオットは、…実家か。」

「おはよう、キャロライン。頑張っているね。」

 

 リュシウォンの言葉に、キャロラインはにこりと笑う。


「お前が早いんだよ。そんなに鍛えて、どうするんだ。ムキムキのご令嬢は嫁の貰い手が無くなるぞ。」


 イヴァンの言葉に、キャロラインはツンとして言った。


「イヴァンは、ばあやみたい。小言ばっかりで、いちいち口煩くて嫌になるわ。」

「な、んだと!?お前がじゃじゃ馬過ぎるんだ!」

「ほら、()()始まった。」

「ぐぅ…!」

「余計なお世話って言うのよ!私が、貴方の所に嫁に行くわけじゃあるまいし。」

「な…!?」


 イヴァンが、キャロラインの前でぐうの音も出なくなる事もすっかり日常となった。彼女は、何かと煩く言ってくるイヴァンにうんざりしている。 

 イヴァンの気持ちが分かるリュシウォンの役目は、彼に助け船を出す事だった。


「キャロライン、その辺にてやりなよ。イヴァンは、君が大事だから言うんだから。」

「リュシウォン!」


 イヴァンが目を丸くして真っ赤になるのを、キャロラインは無視してリュシウォンに駆け寄った。


「リュシウォン、相手になってよ!」

「キャロライン、君は先に少し休みなよ。水も摂ってないだろ?俺は、ウォーミングアップするからさ。ハロル、相手になってくれる?」

 

 こうして、リュシウォンはハロルを誘い鍛練場の中程に向かって歩いて行った。








 

最後まで読んで下さり、ありがとうございます。

次回投稿は明日20時です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ