王政と言う名の籠
読みに来て下さり、ありがとうございます。
カイエンが卒業して帰国すると、直ぐに国王の執務室に呼ばれた。
昨夜会って色々と話したというのに、何事だろうかと尋ねると、執務室には父親もにいた。
オーバルは、カイエンの到着を確かめると人払いする。弟に座るように言って、自分はその前に陣取ると言った。
「単刀直入に言う、ドラメント伯爵令嬢と婚姻関係を結べ。」
カイエンは、飛び上がりそうになるほどに驚いた。
「えぇ!?そんな、彼女はイリウス兄さんの元婚約者でしょう?」
「嫌いか?」
「嫌い…とか、そんな事も考えた事も無いよ。」
「女として、見れないか?」
「いや、そういう目で見たことが無い。」
オーバルはニヤリとして言った?
「では、質問の仕方を変えよう。彼女を抱けるな?」
「ちょっとっ…!兄さんは貴族達の自由な婚姻を認める為に、法改正したのでは?」
「そうだな。」
貴族の子息令嬢の中には、本人達の意向を無視して婚約を結ばれている者も多い。
それは、由緒正しい血筋や伝統の保護、財産管理等の理由がある高位貴族達程、子どもが幼少期からそうする傾向にあった。
だが、当の国王自身が恋愛結婚をした為に法改正が成されたのだ。それにより、これまで親が決めていた子どもの婚約を、成人した当人達の決断で解消して良くなった。
その為、解消しないカップルもいるが、解消して新たな相手を見付ける者も出て来ている。
「家族は、含まれないと?」
「結婚には、親の許可が必要だな。」
「方々で、家族の諍いを生んでますよね。」
「貴族達の力が、多少は削がれるだろう?国は税収が有れば、問題ないからな。」
メルトンは平和な国だが、王政の反対勢力となる貴族達がいないわけでは無い。
(オーバル兄さんらしく、そういう所は抜け目が無いよな…。)
「父さん達は、了承済み?」
カイエンの視線に、静かに話を聞いていた父が口を開いた。
「カイエン、ドラメント伯爵家は、今では国の税収の二割を越える。本来なら、侯爵になってもおかしくない。」
カイエンは、目を見開く。二割以上なんて予想以上の額だ。
「だが、ドラメントは侯爵を辞退した。」
「えぇ!?」
「忠誠心だけは変わらない様だが、いつからか奴は何を考えているのか分からなくなった。」
「俺に、彼女を繋ぎ止めろと…?」
カイエンの言葉に、オーバルが頷いて言う。
「ドラメント伯爵家は、メルトンで着実に正攻法で地位を築いている。だから、反王制側に付かれるのは絶対に避けたい。ケイトや、クリスティーナ達と仲が良いだけでは、繋がりが薄いからな。」
「それなら、…僕に拒否権は無いな。」
溜め息を付くカイエンに、父が言う。
「カイエンは、今のヘンリエッタ嬢を知らないだろう。其方がこの四年の間で変わった様に、彼女だって変わった。見てみると良い。今なら、外務大臣のムスコムの所にいるだろう。」
「外務大臣…?」
二人が頷くのに、カイエンは首を傾げつつ兄の執務室を出ると外務大臣室を目指した。
◇◇◇◇◇
自室に戻ったカイエンは、白紙の便箋を前に考え込む。
彼が覚えていたヘンリエッタは、社交場で無表情に壁の花と化していた姿と、イリウスの隣で笑っていた姿。
それがどうだ。
先ほど外務大臣室で見たヘンリエッタ嬢は、大臣相手に資料の山を次々と渡しながら発言していたのだ。
四年ぶりの彼女は、しどろもどろのおじさんを相手に、やんわりとそれでいて的確に追い詰めていたのだった。
女としてどうかと答えるなら、確実に上玉だし。
抱けるのかと答えるなら、どんなに乱れて甘えられるのか考えるとぞくぞくする。
(まぁ…、色々と以前より変化が有り過ぎだ…。)
思案を巡らせるカイエンの中で、イリウスの顔がチラつく。
『彼女は、稀有な存在だ。』
自分は、覚悟を決める時だ。
(こういう場合、下手な小細工する程後々良くないんだよな…。)
カイエンは姿勢を正すと、便箋にペンを走らせた。
最後まで読んで下さり、ありがとうございます。
次回投稿は、明日20時です。




