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ハロウィン ホラー

トリッキー ハロウィーン ~Truck or Yourself  2

作者: メイズ

〈トリッキー ハロウィーン ~Truck or Yourself 〉続編ですが、そのままでも読めます。

 今日は黒猫メイドの仮装の私だけれど、この店の中では普通過ぎる。



 店の名前は 《Truck or Alternatives 》



 中にいたメンツは、イカれた奴らばかり。しかもホンモノと来た。


 カウンターの中にいるのはこのバーの責任者、顔が半分溶けてる緑色の肌したゾンビのマスター、メルティさん。


 客を演じてるのは、墓場から這い上がって来た4匹。


 内臓さらした若いゾンビはビセラさん。理科室の骸骨まんまのMr.フレイムは、メチャ短気。生きてる不気味なフランス人形のマリーちゃん、顔色が悪い、つぎはぎだらけの皮膚の美少女シーム。


 この店のホントの客は基本、1人しかいない。それが今は私。私は私の身代わりを街で拾って連れて来なければこの店から逃げらんない。


 私は友だちのユナに嵌められて、このままではこの謎の店 《Truck or Alternatives 》の今年の生け贄になってしまう。



 ハロウィーンの夜、真夜中の12時の時点で身代わりを連れて来れなかった人は次の年のハロウィーンまで今年の生け贄として、この店に閉じ込められてコイツラの暇つぶしに付き合わされる。


 身代わりの人の条件は、外見は美しく中身はゲスな人間。そのギャップが激しいほど彼らの好みらしい。何で私が合格しちゃったのか謎。きっと若い子なら誰でもいいんだと思う。


 タイムリミットはあと90分。さあ、急がなきゃ! 



 私は自慢の、漆黒のストレートロングツヤツヤの髪を振り乱し、厚底ブーツで転びそうになりながら、B1の店からの仄暗い階段を地上に駆け上った。



 ***



 ────嘘でしょう?



 メチャ急いで身代わりを街で連れて来たのに!!


「スズさん。その男性では、我々にとっては何もかもがあなたの身代わりには不足です。私たちはゲスだとか、鬱とか、悪意の感情を撒き散らす、かつ、若く見目麗しい人が好きなのです。この方からはお人好しの、いい人オーラが溢れてますよ? ほんの5分10分前までスズさんを見も知らなかったくせに、『何やら困ってるらしき女の子を俺が助けてあげなきゃ』・・・みたいな」



 もう、時間が無いからそこまで選んでらんないんだって!


「ええーっ!! マスター、何でよッッ! いいにしてよ、それくらいさぁー! ちゃんと連れて来たじゃん!」


「スズさん。私はどのような場合でも店のレギュレーション(きまり)を守らなければなりません」


 何なのよ? バーテンダーのゾンビが、真面目な風紀委員みたいなこと言ってさ!


「マスターの意地悪ッッ! ったく、あれもこれもみんなユナのせいだってのッ!」


 ユナ、次会う時はただじゃおかないから!



「すみません。あの・・・?」


 私が連れて来た、殺人鬼のクラウンのコスプレしてる男が戸惑ってる。親切男が殺人鬼のカッコしてんじゃないよッッ! ウザッ!! マスターのとり澄ました顔も、鼻についてムカつく。



「ええと? スズちゃん? どういうこと???」


「ああーッ! もうあんたはいいわ。不合格、バイバイ。私、他の人連れて来なきゃっ!」


「・・・えっと? スズちゃん?」



 オタオタしてる白塗り赤鼻男を放って、私は店を飛び出した。


「えっ?! 待ってよスズちゃーん!」


 ゾンビマスターの声がそれに続く。


「(ΦωΦ)フフフ… いいですねぇ、スズさんって。こんなゲスぶりな所が我々の好みなのです。さあ、置いてけぼりクラウンさん。あなたは、この地獄になる赤い実入りのスペシャルカクテルを飲んだらお帰りなさい。たくさんの血を吸い取って育ってますから、それはもう特上の風味です。大丈夫ですよ。お代はスズさんにチャージですから」


 後ろで声がしたけどシカトした。



 早く、早く、早く、次を見つけなきゃ!! 12時まであと、45分しか無いじゃん! 次の人とリリースのカクテルで乾杯までしなきゃ、私は解放されないっていうのに。


 マスターのお目に叶うゲスっぽい人を早く探さなきゃ。12時までにリリースのカクテルを一口飲まなくちゃ私は今年の生け贄・・・・!


 道端に座り込んで飲んでたアニメキャラに扮した男二人組に話しかけた。ダメだ、こいつら完全キマってる。ヤバい人たち。会話通じない!



『やだぁ、見て見て・・・あの子恥ずかしい。あんなヤバい人たちナンパしてるよ? 飢えてる?』


『クスクス、何かの罰ゲームじゃないの?』



 冷笑の視線。私を蔑む女の子二人組のヒソヒソ声が聞こえて来た。私だって好きでこんなことしてないって!! なんならあんたら、私の代わりになってみろって!!



 あ。────そういや、べつに声かけるのは男じゃ無くったって。


 方針転換。私を嗤っていた魔女のコスプレ女の子たちに声をかけることにした。



「ねぇ、あなたたちすごくかわいいね。実はあるサイトでさ、可愛いハロウィーンコスプレの特集組んでて。あなたたちなら人気出そう? 収益も貰えるよ。興味ない?」


「なにそれ? 怪しくない? ね、ひまり」 「それな! あかり」


「うちらのマネジャーが今ならすぐそこのお店にいるから、お話だけでもどう? 私、イケてる子にしか声かけないし」


「う〜ん・・・でも」


 これならどうだ?


「この人がマネジャーだよ? すっごくかっこいいの。彼と一緒に写真撮るだけでも今夜の思い出だよ?」



 私は私の餌として、ユナから送られて来た、ヴァンパイアコスプレのサイさんの写真を見せた。


 この人、私の前の前の生け贄だった人。私も会ってないし、ユナを生け贄に置いて、もうとっくに帰ったらしいから。


「〜ん。ちょっとだけなら行ってもいいかな?」 「・・・だね!」



 写真だけでもイケメン持ってりゃ、ご利益アリアリじゃね?



「ありがとう。なら、私、せっかくだしカクテル一杯ずつ奢ってあげるね。そこの店、ハロウィンだけの素敵なスペシャルドリンクがあるから是非。あっちの裏の通りのビルの地下一階にあるの」



 《Truck or Alternatives 》



「ここがそのお店だよ」


 もう15分前! 時間経つの早い!


「マスター、カクテル急いで! この二人にはハロウィン地獄の花の蜜のオレンジベースのヤツ。あれ、最高なんだよね。私はもちろんリリースのカクテルよ!」



「きゃー! このマスターさん、スッゴーイ! 本物のゾンビみたい! 写真撮ってもいいですかぁ?」


 ひまりとあかりがはしゃいでる。それ、ホンモノだけどね。


「いいですが、私がちゃんと映るかはわかりませんよ? はい、どうぞ。お二人には当店自慢スペシャルジュースです。地獄の百科の花の蜜入りですよ。スズさんには、こちら、リリースのカクテル」



「ねえ、スズさん。あのイケメンマネジャーはどこなの?」


「えっと・・・取り敢えず乾杯してからね。ハイ、私たちの出逢いにカンパ~イ!」


 やったわ! 3人とも一口飲んだわ!


「ヨッシャ!マスター、これで私は解放よね?」


「スズさん、お会計がまだですが? クラウンさんの分も含めて4杯分。これが済みませんと」



 ヤバい。私、今夜は全部誰かにゴチして貰う予定だったからSuicaしか持ってないよ。スマホには少しだけ入ってるけど。


「えっと、支払いは現物じゃないと駄目ですか? 何とかペイとか、交通系電子マネーは取り扱って無いですか?」


「申し訳ありませんね。・・・創られた概念で取引するのは人間だけですよ。取り敢えず手には取れるキャッシュならまだしも、さらにそれを仮想化させたものなど我々には通じません」


 現物主義なんだ。


 確か、サイって人はイヤーカフで、ユナは転売するためにちょうど持ってたレアカードで払ったって。私は・・・何もないよ・・・


 どうしよう・・・ここまでこぎ着けたのに!!



「ええと・・・・」



 内臓さらしたゾンビのビセラさんが、私に言った。


「じゃあさ、俺にスズのその腹の肉をくれよ。したら俺がかわりに払ってやるよ。最近腸がこぼれて来がちでさ、いちいち丸めて戻すのもうっとおしくて」


「ハァ? あんた黙ってな! 口と腸にガムテ貼っときな!」



 今度は骸骨男のMr.フレイムが、


「じゃあ、俺が代わりに支払うから、スズの心臓をくれよ。したら俺にも筋肉が出来るかもしれないし」


 無言で腹パンしてやったらバラバラに崩れ落ちた。ザマア。



 つぎはぎだらけの皮膚の美少女シームがボソボソとうつむきながら言った。


「あの・・・スズさん、あの・・・顔だけでいいんです・・・顔の皮だけあたしに頂くことは可能でしょうか?」


「可能なわけないでしょッ! 私、まだエステのローンがリボで2年半残ってんのよ? このお肌にいくら注ぎ込んできたと思ってんの? タダでキレイは作れないのよッ! んな、カクテル4杯と比べんなッッ!」


 ああ、時間がないわ。どいつもこいつも腹立つわぁ・・・



 生きてるフランスお人形のマリーちゃんが金色の巻き毛を指で遊びながら余裕で上品に微笑む。


「やあね、皆さん。うふふ‥‥わたくしはパーフェクトな美しさですもの。スズ様のものなど何も必要ではありませんわ」


 巻き髪を指先に巻き付けて遊びながら、私を意味ありげに上目遣いで見てる・・・


「けれど、お可哀想に。スズ様がお支払いにお困りのようですわ。このままでは・・・ふふ」


「いや、助けてよ! マリー様様! 来年何かで返すからさぁ」



 この店は12時で閉まって、また来年のハロウィーンまで閉まる。それまで地下への階段も消えてしまうらしい。そして閉じ込められちゃう!!


 もう時間無いし、この子にしか頼れない。



「仕方がないですわね。 それならばスズさんのその────────」




 ***




 私は私を地獄の入口の店に置いていったユナに、自分の今の写真とメッセージを送信した。すぐに返信しないとヤバい写真晒すって脅して。



〈あ、スズ大丈夫だったんだ? 良かったぁ。スズなら楽勝だとは思ったけど気にしてたんだよ? 今夜は色々あって楽しかったね。スズ、この写真なあに? いきなり髪を切ったの? 随分短くしたね。それもかわいいよ〉


 しゃらっと都合の悪きことはスルーしてる。メッチャ腹立つ!! あんたが私を生け贄にしたのよ!



〈・・・だよね。ほんともったいなかった。自慢の髪だったのに。これも全部ユナのせいだからね!〉



 大丈夫。真夜中12時を過ぎたって、まだ人間界ではハロウィーンの夜は続いてる。《Truck or Alternatives 》の夜は終わっても。





 私は『黒猫メイド』から、『シザーハンズメイド』にお色直し。



 待ってなさい、ユナ。今行くわ。あんたのもズタズタに───────











                           おしまい ☆彡

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