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15. ヴァーリの決意

 愛らしいその容姿もさることながら、何よりも目を惹くのはその眼差しの強さと、輝くばかりの笑顔だった。

 前向きで、いつも明るくて、人のために怒ったり泣いたり出来る人だった。

 

 当時の自分は故郷の森を焼かれて人間の領域に出てきたばかりで、よくくだらないことで人間と揉めていた。

 人間と馴れ合う必要等ない、魔王を倒せれば、復讐出来ればそれで良い、そう思っていた。

 

 孤立して、遠巻きにされる自分に歩み寄ってきたのが彼女だった。

 

「私も、帰るところないんだ。仲間だね」

「……一緒にしないで欲しいな」

「一緒だよ。ヴァーリも、寂しいんだよね。……仲間を作って、失うのが怖いんでしょう」


 そういって、エーファは笑いかけた。

 図星をつかれた自分は、ただ無言で顔を背けただけだったけど。

 でも、おそらくは、その時から彼女に惹かれ始めたのだ。

 

 彼女と話すようになれば、だんだん他の人間とも打ち解けるようになって、いつしか自分は孤独ではなくなっていた。

 中心には、いつも彼女がいて。

 ――恋に落ちない方が無理だった。それだけ魅力的な人だった。

 ただ、その想いを告げることはしなかった。

 エーファと、クリストフが愛し合っているのは、一目瞭然だったから。

 もっとも、お互いはお互いの想いに気づいていないようだったけど。

 それが焦れったくて、橋渡しもした。

 なにが悲しくて惚れた女を恋敵に渡さなきゃならないんだ、とも思ったが、それも仕方ない。

 エーファには幸せになって欲しかった。

 

 クリストフは自分の想いに気づいていたらしく「絶対に幸せにするから」と涙目で宣言されてしまった。

 彼も良い奴だったから、笑って身を引くことが出来た。

 その子孫を見守れるだけで良い、とそう思っていた。

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 その日、ヴァーリは彼女を見つけた瞬間、心臓が止まる思いがした。

 数百年前に愛し、今も心の中心に居座る女がそこにいた。

 容姿もまるで同じなら、魂の気配も同質だ。間違い無くエーファの生まれ変わりだろう。

 傷ついた彼女に声をかけずには居られなかった。

 

 ティアナは『救世の乙女』として魔王と討伐するのだという。たった一人で。

 エーファと同じ顔で、彼女がしなかった影のある表情をするティアナに心が傷んだ。

 あまりの腹立たしさに、彼女の言う「仲間」を殺してしまおうかと思った。

 

 しかし、彼女の仲間がユースティア王国の王子だと聞いて気が変わった。

 あの国の王子なら、エーファとクリストフの子孫だ。

 殺す訳には行かないが、その腐った根性を叩き直してやらないと気がすまない。

 というか、こんな子孫を放っておいたらあの世でクリストフに顔向けが出来ない。

 しかも、どうやらティアナと王子は恋人関係なのだという。

 

(それは、ますます更生させてあげないといけないな)


 ヴァーリは心に誓った。

 今世のエーファ――ティアナとも結ばれることは難しそうだが、このまま不幸への道を歩むのを見過ごすわけにはいかない。

 ヴァーリはティアナの幸せのためには何でもする覚悟があった。

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