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魔法使いの最高位の称号が一位様ってセンスないわと思いながら適性検査の順番待ちをしていた15歳の春。もっと華々しい称号があるよね、騎士様は白百合とか赤薔薇かいうのに、なんで番号なの?と友達と言いながら長くない列に並ぶ。15人そこそこの同級生。街では100人単位らしいよというので思わず顔を顰めてしまった。田舎のこの村で100単位っていたら牛の数しか思いつかない。
この国は魔法使い、非魔法使いが15の春の検査によってわかる。魔法使いは国が最も大切にするエリート様なので平民だろうとも貴族様になれるらしいし、たくさんの兵隊より強くて便利なものを作り出してくださる。だから国を挙げて大切にしないといけないからこの検査を実施するのですよと先生は言っていた。
エリートと非エリートの分別ように見えるこの作業は魔法使いか否かを判別するために行うのではない。魔法使いは生まれてすぐの検査でわかる。何より魔力を持った人は大なり小なり銀髪を持って生まれてするのだから本来検査なんて必要ない。この検査は非エリートでいる人間の中にいる魔法使い用の「パートナー」を探す目的で行われていると先生が教えてくれた。魔力の強いものは子供が授かりにくい。でも国力向上のため魔法使いを是が非にでも増やしたい国は魔法使いを授かりやすい祝福を持つ人間を名目上保護して多額の支援と共に絶対的な義務を課したのが今から数十年前。必ず魔法使い子供を産むという出産義務は当時世論を騒がしたらしいけど対象が人口の1%以下である事、民衆にとっては魔法使いが増えると国力が上がり攻められないし便利になるという事、1人産めば義務は免除される上一生暮らせるだけの恩賞をもらえるという事で王様以下偉い人が発布して今の今で反対なんて起きなかったと先日のテストで出たなぁとぼんやり思い出す。上手くいけば国推薦の魔法使いと結婚して玉の輿!ってこともあるし。ダメなら国の施設に子供を渡して何もなかったみたいに普通の結婚もできるらしいし。…親に変なとこに嫁がされるより幾分マシかとも思う。現にそこそこの農家の長女の私はこの検査を終えたら隣の幼馴染に嫁ぐ予定だし。周りも大体そんな感じ。「通過儀礼みたいなものだから」と先生も言ってたし。この村からは過去1人もいなかったから安易に構えていた。
まさか自分が「パートナー」だとは知りもしなかった。
あれから10年後。私はようやく「義務」を終えて自由の身になる。奇異の目で見られる村にはもう帰れない。もちろん玉の輿にものれていない。村から王都に強制移動している間に魔法使いは変わり者が多いと言うことと、番以外とは肌を合わさない言うこととかいろんな説明を受けた。魔法で受精とか。私は動物以下かよと思いつつも成人するまで出産しないとかできる限り番を見つけるため成人後数年までは強制的な出産は義務づけられていなかった。意外と居心地の良い生活で驚いたものの番なんて現れるわけもなく。
強制出産した後当たり前のように子供の権利は生物学上の父親のものになっていた。少し納得はいかないけど魔法使いの子供を育てるのは魔法使いでなければいけないらしくうなづくしかなかった。
「アメリアさんはこれからどうするですか?」
「王都で仕事を探します。」
「村には」
「帰れませんよ。とても閉鎖的な村ですし。」
「そうですか。…仕事先は?」
「まだ。一年は休みなさいって役人さんに言われましたから。どっちにしろ一年は検査とか色々あるから国の施設でご厄介になりますけどね。」
「体を戻すが一番ですよ!あ、聞きました?」
「何?」
「一位様が出てこられたって」
「ああ、あの研究熱心で王城に部屋を下賜されてる?」
「そうです。流石にいらっしゃるかしら?」
「どうかしら?就任して10年以上経つけど一度も見たことないですし…でもみんなそわそわしてるんでしょうね」
「勿論。アメリアさんも?」
「いやよ!私はようやく義務を終えて自由の身になれたんですよ」
「でも番なら?」
「番って。あんな御伽噺のようなものでしょ?大体!義務者なら貴族様たちから選出されるでしょうし」
「夢がないですよ」
「そこまで若くないですよ。でも。そうね」
「?」
「番が既に義務者になってたらとても大変な目に遭うって言いますから。そうでないことだけを祈ります」
「それこそ奇跡的な確率ですけどね。でもアメリアさんがそうならないことを祈ります」
見舞客である同じ「パートナー」のペネロペが苦く笑う。彼女は御伽噺的確率を獲得した猛者でもあるから身をもってこの意味を理解しているのだろう。
魔法使いは自分の興味がある事以外は無である。故に意識を持ってしまえば恐ろしいまで重い執着を持つ。今現在私の出産見舞いに来れるのだって根気強い説得の末らしく部屋の入り口で「俺を捨てるのか?!」と言う絶叫されていた。「捨てませんよ。お見舞いです」「嘘だ!」と言う押し問答を「恐れながら、いつか来るお二人のお子様のために勉強されたいらしいですよ」と言う私の鶴の一声で、渋々ながらも嬉しさを隠しきれない魔法使い様は只今入り口に置かれた椅子で座られている。
銀色がハイライトのように入っている髪をされた魔法使い様はいらいらしつつもデレデレである。
「ペネロペさん」
「はい」
「幸せそうね」
「はい!」
悶えた。面白い。
My life didn’t please me, so I created my life.01 1/4
「でも流石ね」
「?」
「10位なの銀の髪がわかるわ。高位の方は銀髪の部分が多いと聞きました」
「そうですね。」
「ふふ」
「アメリアさん?」
「あなたのライラック色の髪とお似合いだわ」
「!」
「お二人が並ばれるとため息がつくほどに。」
「ありがとうございます。イーサン?」
「…髪の色をそういう風にいう女は初めてだな」
「そうですか?」
「高貴な色だ。どうせ、お前が義務を果たしたものなどは銀髪擬だろう。暗い青の髪にはお似合いだ」
「イーサン!なんてことを言うの。」
「う」
「アメリアさんはここで唯一私に親切にしてくださった方なのよ!?この方が居なければ私はあなたに会うことすらできなかったのに…ひどい言い方しないで!」
「す、すまん。泣くな、頼むから」
「ペネロペさん」
「ごめんなさい、アメリアさん」
「愛されているのね。本当によかった」
「「?!」」
「パートナーは魔法使い様の消耗品ですから。あなたがその枠に入らなくて本当によかったわ」
「う、アメリア、さん」
「泣かないで。あなたが居たから私も楽しかった。本当にありがとうございます。幸せになって」
「う、うわぁ」
「な、泣かないでください、ね?…十位様?」
「イーサンだ。特別だ。許す」
「え?」
「君は良いパートナーらしいからな。特別だ」
「い、いえ。それはペネロペさんが呼べる特別な名前ですから。」
「む?!」
「ペネロペさんがいい気が致しません。」
「そんなことないです…ほら!」
「…もし、この先就職に窮したら私を尋ねるがいい。」
「ありがとうございます。もし、そうなりましたらお願いします」