死者に逢えたら
人は死んだらどこに行くのか。それは分からないし、知りたくもない。
それを知ったところで、今の地獄のような世界を俺は生きていかなければならない。
通り沿いで、俺のことを見ていた少女が俺に向かってかわいそうなんて言いやがった。
俺にしてみれば、何も知らないお前の方が哀れだ。
俺は、必死に走った。この寒い町の中を立った布切れ1枚まとってだ。
俺には、ちょっと変わった力が生まれつき備わっていた。まさしく天からの贈り物、ギフトだ。
俺は、その力を使って金儲けをしていた。
あまり高い金額を払わせると、目立っちまうから、良心的な金額で行っていた。
しかし、それがついに国の偉いやつにばれて大騒ぎだ。
散々いいように使われてやったのに、今じゃ、国のお尋ね者だ。
くだらない。
どいつもこいつも、能力を使った瞬間は俺に対して、嗚咽を出すほど感謝する。しかし、1ヶ月もたたないうちに、頭がイかれだす。
そして最後は、俺に対して、こんなの自分が思ってたのと違う、とか言って怒鳴り込んでくる。
まったく馬鹿な奴らだよ。1度死んだ人間が、1度死を味わった人間がこれから先まともに生きていけるわけないのだ。
ただ、俺だって黙って、蘇らせたりしない。毎度、警告はする。
それなのに、国のトップもそれを補佐する馬鹿どもも、俺の力で気が狂っちまった。
皆、過去にすがりつき、現実が見えなくなってしまった。
この国も滅びるだろう。
まったく困ったものだ。
さて、次はどこへ行こうか、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、
生きた人間は本当の死を知らない。
死とは闇。死とは永劫の暗闇の中に入ることだ。
そんなところにいた人間が、まともに生の世界に帰れるわけがないのだ。
戻ってきたとしてもそれは、もはや人間ではない。
俺の力は、死者を生前に戻す能力ではない。
そう、俺の能力はもっと神聖で、完璧なのだ。
俺が天から授かったギフトは死者を蘇らせること。
完璧に器にあった魂を俺は取り出し、型にはめることができる。
まさに、天からおくられし、天に刃向かうギフト。
だからこそ俺は、誰よりも人として生きなければならない。
生きていながら、死の世界にも触れることができる。それは、非常に危険なことだと俺は理解している。
生と死の境界がおかしくなれば、人は壊れていく。俺が、関わった人間で幸せになったものは一人もいない。
俺自身が死の世界に引っ張られてはいけないのだ。つまり、俺は自分の力を否定し続けなければならない。
しかし、人は弱く、脆い。
私は死が怖い、凡人がうらやましく思えるほど。
私は死を知っている。いずれくる自失の海のはやさを。
私は生きたい。誰よりも生きたい。
私は、死なない。
私は、誰よりも生き抜かなけらばならない、例え、全てを犠牲にしても。
私は死者を蘇らせることができる。