役目発見
「世蓮! 世蓮ー!」
「世蓮はこちら!!」
屈強な男が私を呼ぶ声がして、同じように叫びながらキッチンから顔を出す。2m強ありそうな男は、ほっと胸をなでおろして私を見下ろしている。
「見つかってよかった、魔王様が呼んでるんだ」
「ロリ魔王様がですか?」
「ロリ……? ロリってなんだ?」
「救世主風の敬称です。ロリがどうしたんです?」
「そうそう、魔王様がお前のこと呼んでるから、早く行ってくれ」
了解しました、というと、巨体は猛スピードで廊下の先まで消えていった。改めて、この城は大きいなと感じる。腕を大きく開いて回転しながらでも余裕で走れる廊下を普通に走り、迅速に魔王様の部屋まで来た。
「魔王様、世蓮です」
ノックをすると、帰ってきたのは魔王様の怒った声だった。
「世蓮遅い!」
入室許可の返事ととっていいだろうなと勝手に判断して、扉を開けて閉めて魔王様の元まで歩いていく。
「この広いお城で人を探させるのは酷ですよ、ロリ魔王様」
「ロリ?」
「そのくだりはもうやりました。どのようなご要件でしょうか」
魔王様はガックリと肩を落として、机の上に上半身を乗せた。その状態のまま、目線だけでこちらを見てくる。
「また人間に負けた。お前、何とかできないか?」
「なんとか……。随分とアバウトですね。勝利に導くということでございますか?」
「救世主だし、雷落としたりとかできないか?」
「雷はほぼ無理ですね」
「人間軍は落とすやついるのに〜……」
「人間軍に雷落とす奴いるんですか? 世も末ですね」
「末なのは、魔王軍だけだ……」
相当追い込まれているらしく、魔王様はしょんぼりと更に縮んでしまった。その魔王様を励ますべく、私の鉄板ネタを差し込んでみる。
「私に出来ますのは、執事の仕事、主人が呼び鈴を鳴らした場所に瞬間移動することの二つくらいですよ」
「……瞬間移動かー……」
落ち込んだ魔王様の瞬間移動への反応は芳しくなく、もはや目線すら机に沈めてしまった。
「おやおや。この特技、昨日までなら驚かれたんですがね」
他は他はと急かす魔王様に、自分のやれることを捻出する。
「給仕や管理ぐらいしか、私にはできませんね」
捻出するものがなかったので、諦めて答えた。それに魔王様の耳がぴくりと反応する。
「管理……そうだ!」
バン、と机を叩いた魔王様は、勢いよく体を起こして私を見た。
「お前の仕事は魔族の管理だ! ヒョロいし戦えないみたいだし、でも救世主なんだろ? なら、多分そうだ!」
私の使い道を見つけたらしい魔王様は、わーいと両手をあげて喜ぶ。この魔王様大丈夫かな、と、心配になった。