〜のあまりはまだまだ沢山いるぞ!
部下になりたいというサキュバストリオに一度お帰り頂き、私はすぐさま着替えて部屋の外に出た。
魔王様と共に、マルクさんとアースさんも私を待っていた。
「おはようイアン!」
「おはよう世蓮」
「おはようでござる」
女性に囲まれている……のだろうか……。
一人は美しい。だが迂闊に手を出すと廃人になる。
一人は魔王様だ。性別の概念があるのか怪しい。
一人は女騎士の体を乗っ取った霧の魔物だ。この中では一番女性だ。キャラが未だに定まっていない。
しばらくして、私は考えるのをやめた。
今たくさんの個性豊かな女性に囲まれているのであろう人間側の男のことや、愛しのお嬢様のことは一旦忘れることにした。
心の平穏を訪れさせたのもつかの間、足に何か柔らかいものが巻きついてきて、思い切り心身を乱される。
足元を見ると、そこに居たのは……
「何ですコレ」
蛇のようなものの後ろに心ばかりの羽が着いている、細長い謎の生き物だった。
凄まじい力で足を締め上げてきているため、振りほどけそうにない。
「それはコカトリスのあまりだ。世蓮の仲間になりたいって言うから連れてきた」
「コカトリスノアマリ……」
「蛇のしっぽと鶏のしっぽを持っている」
「……魔王様、それって意思疎通可能なんですか?」
「長い体で文字を表現するんだ」
「とっても器用なんですね」
コカトリスのあまりさんは足から離れることはなく、私は片足を魔物に憑かれたまま業務を行うことになった。
「ヒッポカンポスのあまりも仲間になりたいって言ってたぞ」
「申し訳ありません、ヒッポクラテスしか私存じ上げなくて」
「ヒッポカンポスは、馬の頭と魚の体を持ったキメラだ」
「あまりということは……」
廊下の曲がり角の端から、巨大な魚の頭が飛び出ている。
「ジェノー!」
その巨大な頭に、マルクさんが飛びつく。
「ヒッポカンポスのあまりとマルクは仲良しなんだ」
マルクさんに連れられて出てきたヒッポカンポスのあまり……ジェノさんは、本当に馬の体を持っていた。
馬の体と魚の頭と言うより、馬に巨大魚が刺さっているように見える。
「あの、ジェノと申します……。よろしくおねがいいたしますぅ……。」
その魚の頭から飛び出てくる流暢な言葉に、私は久々に混乱した。