オレンジな彼女
オレンジジュースのグラスに、
オレンジをのっけてみたい。
彼女はそう言って、
そのグラスには大きすぎる
オレンジを、挟み込んだ。
そんなことをして、何になるのと、
聞いてみたくなったけれど、
一見意味のなさそうなことを、
終わらせていくのが、
彼女のいいところだと思って。
すごいねぇ……きれいで、
美味しそうだと言った。
彼女はご満悦な笑顔で、
目をきょろきょろさせ、、
オレンジジュースを飲んでいた。
そして、ぼくは言った。
ねぇ……少し飲ませてよ。
彼女は、今度は目を丸くして、
首を縦に何度も振った。
感染症のことは忘れられた。
コミュニケーション、
未来へのパス、それはきっと、
一見、意味のなさそうなことを
丁寧に終わらせていくことから、
始まるんだろう。