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魔法の使えない魔法研究者《マギシスト》

作者: zephyrusu
掲載日:2019/08/03

拙い文章で失礼します。


誤字脱字は見逃してください。


 王立フェリウス魔法学院。

 時刻は放課後、訓練場で一人の少女が魔法の訓練をしていた。


「ーーううう、、、 また失敗、もう無理だよー、、、」


 彼女の名前はユニ。

 肩まで伸ばした茶色がかった黒髪をした、容姿もそれなりで可愛げのある彼女だが、それを悲壮な表情が台無しにしている。

 しかし、彼女がそんな顔をするのにも理由がある。


 ここ王立フェリウス魔法学院は、貴族はもちろん、時には王族も通う由緒正しき学院であり。

 この学院の卒業生は、宮廷魔法師を代表する魔法に携わる職への就職が約束される。

 そのため、平民出で母子家庭であるユニは、給料の良いところに就職し、母親に恩返ししようと考えている。


 ーーしかし、、、


 彼女は成績によるクラスの振り分けで最低クラスになり、さらには追試を明日に受けなくてはならない状況なのである。

 その追試の内容が、今の今まで失敗し続けている魔法なのである。


「このままじゃ明日の追試は不合格、、、 そのまま退学なんてことも、、、」


 それだけは避けなくてはならない。

 だけど、このままではうまくいく未来が見えないので、気分転換に持参した飲み物を飲み始めた。


(そういえば、サーシャがなんか言ってたっけ?)


 ユニは今日の放課後、訓練に行きたいがために友人のなりげないセリフを流し聞きしていたのである。

 その友人サーシャは、とある商会の息女であり、この学院には王立魔法学院卒業という名目と人脈作りのために来ていると豪語している強者だ。

 その1年生といえ侮れない人脈から聞いて来た噂をユニに伝えていたのだった。


(ーー確か、魔法の使えない先生だっけ?)


 王立魔法学院の名は伊達ではない。

 そんな学院に魔法の使えない人が雇われるのだろうか、、、

 ーーそれであるならば、一体その先生とはどんな人物なのだろうか。


 それが噂の内容だった。


(駄目元で行ってみようかな、、、)


 魔法が使えないに、先生になれる。

 そんな人物なら私の現状を解決してくれるかも。


 ーーそんな期待を胸に秘め、彼女は噂の人物がいるであろう校舎に向かうのであった。


◇◆◇



Side ユニ


『魔法研究室・タクミ』


 そう書かれた看板の前で息を整えてから、少し控えめにノックする。

 いったい、どんな人なのだろう。


(怖い人じゃないと良いけど、、、)


「ーーどうぞー」

「失礼します」


 中に入ると、まず目に入ったのは書類の山だった。

 魔道具や魔石など魔法に関わるものよりも書類の方が目立つというのは、魔法の先生としては珍しいと思える部屋。

 その部屋の端の方にその人は座っていた。


「おじさん、、、」


 座っている姿勢からも分かる程度の曲がった背、ブサイクではないがイケメンでもない容姿。

 歳は40代と言ったところか。

 王立魔法学園にいる権威のある先生というよりは、実家の料理屋に頻繁に顔を出す近所のおじさんと言った方がしっくりくる人だった。


「おじさんって、、、ま、そうだけどね」

「ーー! すみませんっ!」


 ーーまずった。


 つい、馴染みのある雰囲気に口走ってしまった。

 冷静に考えると、いや普通に考えても、とても失礼なことだし、これから頼み事をする人の行いではないだろう。


「うん。まあ気にしなくて良いよ? 事実だし。 ーーそれで、どうかしたのかい?」

「あ、はい、、、!」


 私に気を使ったのか、優しそうな声で問いかけてくれる先生。

 悪いと思うけど、やっぱり近所のおじさんにそっくりな雰囲気だ。


 ーーこれなら、アレが役立つかも


「えーと、、、私1年Fクラスのユニと言うんですが、、、 魔法がうまく使えなくて、先生ならもしかしたらと思って、、、」


 ーー対おじさん用の『困ってます感じMAX+涙目上目遣い』。


 よく近所のおじさんはこれでお小遣いをくれた。

 先生も、おじさんたちが共有で見せる、視線の送り先に迷うような素振りをしている。


 ーー効果は抜群、と思ったけど、、、


 おじさんは他のおじさんとちょっと違った。


「ーーくっ、、、 でも、私は研究名目だからね。生徒を教える義務はないんだ。すまないけど担当の講師に当たってくれ」


 ーー手強いかっ。

 なら、次の手は、、、


「そんなこと言わずどうかお願いします! 私には後がないんです!」


 何か言い訳をするより、深く頭を下げながらお願いする!


 ここまでのコンボで落ちなかった男はいない!

 ーー近所のおじさん方しか経験ないけど


 少し迷っていた先生も、やがて小さい溜め息をついた。


「ーーまあ、ちょうど研究も行き詰まっていたし、いいか。わかった、手伝おうか」


 一撃ならぬ二撃必殺、、、なんちゃって。



◇◆◇



Side タクミ


「ーーで、どんな状況なんだい?」


 私のところに助けを求めて来た少女ーー名前はユニだったかな?

 わかっているのは、追試で指定された魔法が使えないとのこと。

 手伝ってあげることにしたのは、彼女の事情に同情の余地があったからである。

 ーー決して、可愛かったからではない。


 1年生でこの時期なら、試験の内容は彼女が持っている魔法適性にあう中級魔法の発動ってところだろうと見当をつけているのだが、、、


「指定された魔法は、雷属性の中級魔法『ライトニング』ですが、、、全然発動に成功しなくて、、、」

「ーーそうか」


 雷属性とは羨ましい、、、

 もとい、この世界の住人には比較的難しい種類だ。

 理由は、異世界転生に詳しいものなら分かるだろうが、化学的に理解しにくいからである。


「一応、見せてもらってもいいかい?」

「あ、わかりました、、、」


 何度も失敗しているせいか、それとも失敗するであろう姿を見られるからか、少し辟易した様子だが、それでも魔法の準備を始める。

 拙い様子で体内の魔力を活性化させ、発動のために右手に集めていく。

 

(足りないとは言わないが、かなりギリギリか)


「雷の精霊よ。我が祈りに応えたまえーー」


(詠唱は精霊をイメージの具現化の対象にする一般的なもの)


「ーー『ライトニング』」


 詠唱が完成し、彼女の右手に集まった魔力が電気へと変質し、、、


 ーーぽふっ


 変質しきれず、集まっていた魔力が拡散した。


「ううう、、、 やっぱり失敗、、、」


 落ち込む彼女には悪いが、このぐらいなら問題ない。

 彼女の頭にポンと手を乗っけ、私は笑ってみせる。


「大丈夫。これだけできるなら直ぐに習得できるよ」


◇◇◇


「さて、君の魔法だけど、問題は3つだね」

「ーー3つもですか?」

「ああ。と言っても深刻なものじゃない。言葉にするとわかりやすいかな? えーと、『魔力がギリギリで、イメージがふわふわで、変質の時に行う魔力操作が辿々しい』って感じ。ざっくり言うと未熟なだけ」

「未熟ですか、、、」

「そう。細かく説明してもいいんだけど、追試も近いようだし、まずは解決策から挙げようか」


 普段から持ち歩いている道具袋マジックボックスから、携帯式の魔力用ホワイトボードを取り出す。

 これは、魔力を纏わせた指先でなぞると、反応して文字が書けるというものだ。

 そこに箇条書きで解決策を書いていく。


 ーー1つ目、魔力の最大値の上昇

 ーー2つ目、雷の原理の理解 ←非常に難しい

 ーー3つ目、魔力操作の技量向上 ←1日では厳しい

 ーー4つ目、高性能な補助道具の購入 ←それなりのお金がかかる


「とまあ、こんな感じだけど、下3つは現実的じゃないから、方法は実質1つだね」


 4つ目も可能性はなしではないが、彼女は貴族ではなさそうだし、買い与えるのは流石に無しだ。


「でも、魔力を増やす方法って確か、、、」


 彼女が困惑する。

 それもそのはず、魔力を増やす方法で、一般的に知られている方法はダンジョンでの魔物狩りしかない。


 ーーそうダンジョンである。



◇◆◇



Side ユニ


「ーーここがダンジョン、、、」


 先生に私の魔法の問題点を指摘され、解決策を教えてもらった後、直ぐに私は先生に連れられてダンジョンにやって来た。

 一応先生は「私がついて行くとはいえ、ダンジョンには命の危険もある。それでも行くかい?」と心配して聞いてきたけど、私は「追試に是が非でも受かりたいんです」と答えた。


 ただ、不安はある。

 いや、最初は気にしてなかったんだけど、ダンジョンの目の前まで来たから感じたと言うか、、、

 はっきり言おう、不安の源は私たちの状況だ。


 私のイメージのダンジョンといえば、冒険者がパーティーを組んで、しっかりとアイテムなどの事前準備をして挑むって感じなんだけど、、、


 今の私たちの状況はーー


 まず私

 ・初級魔法を使える。

 ・戦闘経験、ほとんどなし

 ・ダンジョン経験、なし


 評価・足手まとい。


 次に先生

 ・魔法使えない

 ・武器や防具なし

 ・魔法袋マジックボックスあり、中身不明。


 評価・ただのおじさん(見た目だけで判断)


(これじゃ、若くて可愛い女の子(私)が、おじさんとダンジョンデートだよ、、、)


 周りの冒険者たちを見渡すと、私のイメージ通りの人たちが大半だ。

 貴重な残りの少数派の人たちは、イメージよりもさらにゴツい人たちである。

 女性の姿はなし。


(浮いてる。絶対私たち超浮いてるよー!)


「ーー何をしているんだい? 早く行くよ」


 おっと、周りに気を取られすぎたのか、先生がもう入り口まで行っていた。


 ーーまだ不安も残るけど、しょうがない。

 女は度胸。お母さんの口癖に従おう。


「今行きます!」


◇◇◇


「じゃあ、まずは軽く説明するね」


 ダンジョンの中に入った先生の一言目がこれである。


 いやいや、一応ここダンジョンだよ?

 もっと危機感とか必要じゃないの? とか

 来る前に説明しとけばよかったんじゃない? とか


 まあ、思うわけですが、とりあえず先生に愛想よくしておかなきゃ。


「ーーはい!」

「まず魔力を増やす方法だけど、知っているかい?」

「吸収ですよね?」

「そう。ダンジョン内の魔物は魔石を核に魔力で体が作られているんだけど、倒した時に体を作られた魔力が霧散する。それを近くにいた人は自然と吸収できるってわけなんだけど」


 結構有名な話だ。

 私たち、学院の生徒も魔力を増やすことは魔法の成績に直結するので、よく話題に上がる。

 実際、知り合いの生徒の中にもダンジョンに行って来たと言う人もいた。

 ただ、その人の話では、、、


「でも、あんまり増えないって話だったはずですけど」

「そうなんだよね。低層の魔物じゃ魔力量も大したことないし、そもそも魔力の吸収効率自体高くないんだよね」


 先生はしみじみと言う。


「じゃあ、どうやって、、、」

「魔石を使うんだよ」

「魔石ですか」


 魔石とは、ダンジョン内の魔物の核ーーすなわち魔力の塊。

 大体は魔道具の材料になるので、冒険者の資金源になっている。


「これはあんまり知られた話じゃないんだけど、魔石をうまく割ると魔物の霧散化と似たように霧散させることができるんだ。それを利用する」

「そんなことが、、、」


 初耳というか、それが知られていれば世の冒険者たちや魔法使いたちがこぞって行っていそうだ。

 さすが、腐っても王立魔法学院の先生ってことか。


「じゃ、納得してもらえたってことで、さっさとボス部屋まで行こうか」

「はいっ!」


 ーーん?

 

 ぼす?

 ぼすってあのボスですよね?


 先生、何の装備もないようですけど、そんな装備で大丈夫なんですかね?

 大丈夫なんですかねー!!


◇◇◇


「ーー多分そんな時間かからないと思うけど、あんまり前に出ないようにね」


 はい。そんなわけで、私たちはボス部屋の前までやって来た。

 ここまでかかった時間は、おおよそ10分。

 私は冒険者じゃないので、確信はないけど、多分相当早いはずだ。


 ん?

 道中の敵。


 それが不思議なことに遭わなかったんだよねー。


 そして、そんなことを疑問に思わないのか。

 ーー自信満々、もしくは、当たり前、って様子で先生はボス部屋へと入って行くので、慌ててそれを追いかける。


「ーーって、本当に大丈夫なんで、、」、


 私が先生に追いつき、不安をぶつけようとした瞬間。


 ーーソレは生まれた。


 緑色の巨体に、どこからか現れたのか棍棒を担ぐソレ。


 学院にある魔物図鑑で見た通りならば『オーガ』だったはず。

 その強さは、熟練の冒険者パーティーなら、ちゃんと準備すれば問題ないくらい。


 だけど、それは逆にいうと、、、


 ーー初心者パーティでは勝てない

 ーー熟練の冒険者たちでも不意を突かれれば負ける


 ってことである。


 これは、さすがにきついよなー。

 私まだ死にたくはないなー。

 退学もこの際しょーがないかなー。


「先生、、、 やっぱりあきーー」


 諦めましょう?

 そう問いかけようした瞬間。


 ”先生の魔力が弾けた”


「ーーうそ、、、」


 魔法の使えない先生が、戦う手段でとると思われるのは『魔導』のはず。

 魔力を練り、強化したい身体に集めることで、身体強化する技術なんだけど。

 魔法使いが接近戦を強いられた時に重宝するってことで、私たちも教わっているし、他の先生のものも見たことがある。


 だけど、先生のは次元が違う。


 ーーまず、魔力の量と練り方が違う。


 一般的な魔力を練るというは、ただ魔力を圧縮することである。

 でも、先生の魔力の練り方は、まるで織っているという言葉がしっくり来るほど、高密度になっている。


 ーーそして、纏い方が完璧だ。


 魔力を強化したい身体に集める。

 それを綺麗にできたものを纏うというのだが、他の先生たちが見せた時よりも鮮やかだった。


(ーーどうやったら、これだけ技量を、、、)


 王立魔法学院にいる実力のある先生たち。

 その人たちすら、子どもと思えるほどの『魔導』の技術。


 ーーそんなもの、一朝一夕どころか、何年、何十年とかかるだろう。


 この時初めて、私は先生に近所のおじさんたちに向けるものとは違う、本当の興味を先生に持ったのだろう。


◇◇◇


「ーーじゃ、そこに立って、なるべくリラックスしててね」

「はい」


 先生が指定した、オークの魔石が置かれたすぐそばに立つ。

 そして、先生が行うことを興味深く目で追う。


 ーーえっ? オークとの戦闘?

 そんなの描写することもないほど、一瞬で終わったよ。


 魔導で強化した先生の一撃で瞬殺だった。

 いっそ、オークが可哀想に思えたくらい。


「さて、始めるよ?」


 先生が、あの綺麗な魔導を使う。

 さっきよりも魔力が感じづらいから、多分だけど魔力制御にさらに力を入れているっぽい。


「魔石を壊したら結構な量の霧が出るけど、体に害はないから、落ち着いて深呼吸しながら消えるまで待つこと」

「わかりましたっ!」

「じゃ、行くよ? ーーーー1、2、の3!」


 多分、先生がパンチをしたと思うけど、早すぎて見えなかった。

 パキッて音ととも魔石が割れて霧になり始める。

 それを見送った先生がそっと離れて行く。

 やがて、先生の姿が見えなくなるほどの霧が立ち込めていく。


(タクミ《・・・》先生か、、、)


 ーー私は、胸を高鳴らせながら、それを落ち着かせる意味でも深呼吸をした。


 胸が高鳴っていたのは、魔力が増えることへの期待か、それとも、、、



◇◆◇



Side ユニ


「ーー雷の精霊よ! 我が祈りに応えたまえ! ーー『ライトニング』!」


 私の右手に集まった魔力が雷に変わり、指定された的めがけ放たれる。

 

 ーードカン!


 爆発音と共に土煙が上がる。

 土煙のせいで、的がどうなったのかわからない。

 でも、自信はある。


(ーー大丈夫。だって先生のお墨付きだから)


 土煙が晴れるまでの一瞬、私には長いように感じたそれは、ついに訪れる。


「ふむ。1年F組ユニ。追試、合格だ!」


「やった!」

「やったね! ユニ!!」


 私が喜んだと同時に、追試に付き合ってくれていたサーシャが抱きついてきた。

 こういう直接的な感情表現は嬉しいものの、少し恥ずかしいものがある。

 多分、こういったところが彼女の友好範囲が広い所以なのだろうけど、、、ここまで直接的なのは真似はできそうにない。


「では、追試は終わりだ。片付けはこちらでやっておくので帰っていいぞ」


 追試を担当した先生が、散らばった的の方へ歩いて行く。


「おめでとうユニ! お祝いに甘いものでも食べに行こっか!」

「ありがとっ! でも、私ちょっと行きたいところが、、、」


 サーシャのお誘いは嬉しいのだけど、それより他にやりたいことがある。

 私はサーシャに別れを告げ、走り出した。


 ーー思い浮かべるのは、あの『おじさん』の姿だ。



一応連載バージョンも考えていますが。


主人公が召喚された直後の話。

奴隷エルフの話。

この話の後、どうにか魔法を使おうとする話。


など、時系列がバラバラなネタが多いので、ある程度まとめてからと考えています。

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