プロローグ
どもー、お久しぶりです。やっと新作を投稿できました。
これからは毎日投稿していこうと思いますので、評価、ブックマーク、感想お待ちしております!
「おら! おらぁ!! 奪え!! 殺せ!! 女子供、老人だろうと容赦するなぁ!!」
「ひゃっはぁ!! 今日の剣の切れ味は一味違うぜ!」
それは、まさに惨劇。
巨大な船を襲っているのは、武装した集団。突如として、火を放ち、帆を切り裂き、船の進行を阻んだ。
突然の襲撃に、乗船していた者達は混乱するも共に乗っていた傭兵集団が応戦。しかしながら、それでも相手のほうが一枚上手のようだ。このままでは、全滅は逃れないだろう。
「さあ、こっちだ!!」
「お父さん! お母さん! こ、これって」
そんな中、一人の少女を連れて船をかける男女。
「俺達が囮になる! その間に、どこかに隠れてるんだ!!」
傭兵達が、剣を抜刀し男女と少女の三人を逃がす。
「きゃあ!?」
「た、助けっ!?」
悲鳴が響き渡る中、男女は必死に駆けるが少女は不安で一杯のようだ。
「お父さん! いったい何が起こっているの!?」
「襲撃だ。お前は、ここに隠れてるんだ」
詳しい事情を話してくれない。男は、少女をとある隠し部屋へと下ろしナイフを地面に突き刺す。
「顕現せよ、守護精霊。汝に、大いなる守りの力をここに」
呪文の詠唱後、少女を守るように薄い膜のようなものが出現する。更にそこへ重ねるように、ナイフへと文字を刻んだ札を貼り付ける。
「これで、お前の存在は簡単には気取られない。もし、気取られる時は……私達が命を落とした時だ」
「ま、待って! どうして、私だけ! そうだ! ナナリー!? ナナリーはどうしたの!?」
「……大丈夫だ。ナナリーは、私達が助ける。だから、お前は安心してここで待っていてくれ」
そう言って、男は剣を手に持ち優しく微笑みながら立ち上がる。
「絶対に戻ってくるから。だから……待っててね」
「お母さん……!」
意を決した男女は、少女に背を向ける。
「いくぞ、ナタリア。覚悟はできてるか?」
「もちろんよ、ロイ。守りましょう……私達の愛しい娘センリを」
・・・・・
「ひゃっほ-い!!」
「この馬鹿兄! 準備運動しろー!!」
照りつける太陽の下で、少年少女達はプールで大はしゃぎ。一人の少年も、準備運動をせずに海に飛び込んでいる。
そんな少年をスクール水着を着用した小さな女の子が注意する。しかし、少年は髪の毛をかき上げ、満面の笑みを作る。
「大丈夫だって、亜美! 俺が運動神経いいって知ってるだろ?」
「だからって、準備運動をしないなんてだめだよ! 足攣って溺れちゃうよ!!」
もっともなことを言う亜美だが、少年―――海兎の隣に、友人達が集まってくる。
「心配し過ぎだって、俺らだってこの通り準備運動してねぇけど大丈夫なんだぜ?」
「そうそう。そんなことより、亜美ちゃんも早く来なって!」
「も、もう」
そんなことを言われても、心配なものは心配。亜美は、しっかりと準備運動をしてから海兎達が待つ海へと静かに入っていく。
「よーし。そんなさっそく競争だぁ!!」
「おー!!」
「だめだよ! ここには、他のお客さんも居るんだから!」
「はっはっは!! 市民プールじゃないんだから、自由に泳げばいいんだよ!! 気にし過ぎだって!」
海兎は、異様なまでにテンションが上がっていた。その理由は、来週から夏休みだからだ。そして、夏休みになれば家族と一緒に船に乗って外国へと旅行に行くことになっている。初めての海外旅行、大きな船ということで海斗は年端も無くはしゃいでいる。
妹の亜美も、平常心を保っているが海兎以上にテンションが上がっている。ただ、家族以外の人達の前ではしゃぐのは恥ずかしいと我慢しているのだ。
「来るぞ! 流れに逆らえ!!」
「おっしゃぁ!!」
「うわっぷっ!? ま、負けねぇぞ!!」
流れが強くなる波に、逆らうように海兎達は、全力で泳ぐ。もう少し高ければ、サーフィンでもできるかのような波へと勇敢にも突撃していくのだ。
「こ、こらぁ! そういう危ないことしちゃだめだってばぁ!!」
危険なことをする度に、亜美が注意するも海兎達は止まらなかった。それから時間が経ち、急に空が曇ってきた。天気予報では一日中晴れと聞いていて、人々は大喜びで海水浴へと訪れていたのだ。しかし、昼時になってでかい雨雲が青空を覆いつくした
風も大分強くなり、もう海には海兎達しかいない。
「おーい! 早くしないとバスが来るぞぉ!!」
「雨も大分強くなってきたしよ!」
「おう! そうだな! 亜美、そろそろ」
「きゃっ!?」
これ以上ここに居たら大波が襲ってくるかもしれない。さすがの海兎も荒れた海では、泳ごうとはしないようだ。すでに友人達も着替え終え、帰りのバスを待つためにバス停へと向かおうとしていた。海兎も亜美と一緒に向かおうとするが、突然の突風で亜美が被っていた麦藁帽子が飛んでいってしまう。
「わ、私の帽子!」
すぐに取りに行こうと走り出すも、麦藁帽子は突風に乗って海を渡り、近くの岩場へに引っかかってしまう。
「待った! この波じゃ、泳ぎが不得意なお前じゃ無理だ」
亜美は、この間ようやくビート板から離れたばかり。それなのに、こんな荒れた海を泳げるはずが無い。だが、麦藁帽子を諦めたわけではない。
あの麦藁帽子は、多大好きな祖母からのプレゼントなのだ。海兎もそれはわかっている。
「俺が取って来てやるよ。ちょっと、待ってろよ」
「お、お兄ちゃん!」
「ちょっ!? さすがのお前でも危ねぇって!!」
海兎自身も、この荒波の中を泳ぐのは危険だと思っている。しかし、それでも亜美の麦藁帽子は、今は無き祖母からプレゼントされた思い出の品。
考えるよりも先に、体が動き、友人達が止める間もなく海へと飛び込んでいた。
「くそっ! やっぱり、げほっ! 波が……!」
流される。口に、目に海水がかかる。亜美達が見守る中、それでも海兎は荒波に負けじと豪快な泳ぎで、確実に麦藁帽子がある岩場へと近づいていく。
早くしないとまた突風で吹き飛ばされてしまう。
その前に。
「つい、た!」
普通の海を泳ぐよりも、疲労が極度に溜まってしまった。
「帽子!!」
危なかった。辿り着いたと同時に突風が吹いた。ギリギリのところで帽子を掴むことができたため、飛ばされずに済んだ。
「おーい!! やったぜぇ!!!」
「おー!! すげぇよ! 海兎!!」
「マジすげぇ!!」
「お、お兄ちゃん!! ありがとう! でも、早く戻ってきて! なんだか更に風が強くなってきたからぁ!!」
亜美の言うように海とが飛び込んだ時よりも、風が強くなってきた。このままではさすがに戻れなくなってしまう。麦藁帽子のゴムをしっかりと首下に引っ掛け、深々と被り、海へと飛び込む。まだ疲労が残る体だが、そうも言っていられない。
(くそっ! 思うように前に進まない! だけど、足がつくところまで行けば!)
後は、どうにでもなる。荒波で前が思うように見えないが、友人達や亜美の声を辿りただただ進んでいく。もう少し、もう少し、後もう少し。
「お、お兄ちゃん!?」
進んでは戻され、進んでは戻されを繰り返していると、亜美のより一層大きな叫び声が耳に届く。なんだ? と思った刹那。
「ぐあああっ!?」
背後から巨大な波が海兎を襲う。いや、だがこれでいいかもしれない。このまま浜辺まで……。
(あ、あれ? なんだ……下に吸い込まれて)
まるで、何かに引き込まれているかのような感覚。なんだ? と目を開けると眩い光が海底からあふれ出しているではないか。
(なんだよこれ! なんで、戻れない!!)
なんとか海面に戻ろうと必死に泳ぐも、全然上に行けない。
(どういうことなんだよ!! これは!!!)
そして、光に包み込まれた瞬間……意識を失った。