魔物と
逃げるように旅立ってあれから3日。
まだ次の街にはたどり着けていない。
見込みではあと1日程度でつける見込みだが、そこまで焦っていない。
「うぜえな。。。」
それよりも気になっていた事があった。
見られている。
城を出た時からずっと。
どこから見ているのかもわかっている。
始末してもいいが、その場合謀反ということで、軍隊が出るのだろう。
そして、その理由が『他国の間者だった』みたいなことにされ、戦争の口実にされる。
別に家族がどうなろうと知ったことではなかったけど、
自分が戦争の口実になるのも、その結果、知らない他人が大勢死ぬのも嫌だった。
別にいい人ぶるわけではないが、嫌なものは嫌なのだ。
だから放置することにした。
別に見られて困ることをする予定も無い。
野営には慣れていた。
家族は俺が二、三日居なくても何も言わないし、『修行』と言っていれば別に鑑賞してこなかった。
それを理由して、俺はよく遠出していたし、こうして野営する技術も自然と身についていた。
そういえば、こういう技術を取得するきっかけは何だったか、
今ではもう覚えていない。
「きゅー」
焚き火に枝を供給しているとどこからか声が聞こえてきた。
見ると、木の陰に小さい球体の生き物が居る。
どこにでも居る魔物で、おとなしい性格の魔物だ。
知らない人からみたら魔物と一括りにしてしまうだろうが、この魔物は安全と、俺は経験則で知っている。
むしろ懐かせることも出来る。
「。。。」
だが、普段と同じように接するのは抵抗があった。
見られている。
ここでいつものように接した場合、どうなるのか、あまり想像したくもない。
「*********」
俺は呪文を唱える。
手をその魔物にかざし、呪文を放つ。
すると、その魔物は姿かたちも無く消え去った。
これで、監視している奴には、俺が魔物を倒したように見えるだろう。
だが、実際には、放った魔法は空間移動の魔法で、移動先は昔遊んだこともある、魔物の生息地にした。
これで、誰も傷つけずに旅を続けることができる。
食料になった動物には申し訳ないが、これは俺が生きるため、無益な殺生ではない、と思いたい。
「めんどくせぇ。。。」
俺は焚き火に枝を放りながら、再び呟くのだった。