第68.1話 災悪の時<汚い大人の事情> side 花梨の物語
私は……止められなかった……。
止められるはずだった……災悪の天災を……。
「……どうして……どうしてだ!」
目を覆いたくなる災害が紀伊半島全土を襲った。
私達は……地のシードを止めることが出来なかった……。
何のために私達は戦ってきたんだ……!
逃げることしか出来なかった。
……何度も……何度も繰り返しても、私達は護ることが出来なかった。
「花梨ちゃん……もう辞めよう……リスクを取らないで大義を果たす<リターン>を得るとはできなよ……」
「……次で……次のループで……諦めよう……」
ゼロディバイドである七海が輪廻転生を止める。
「これ以上は、花梨ちゃん……花梨ちゃんの心が保たない!」
「きっと、私が止めてみせるから!!花梨ちゃん……次で最後にしたい……」
終わらない……終わらない……永遠に大量の人が地のシードと水のシードの怒りに焼かれる……!受け入れなければ未来に進むことは出来ない。だが、受け入れれば『10万人』の和歌山の人々が生贄になってしまう……。
そんな未来……誰が受け入れられるか!
天災なら受け入れらる……だけど、これは私達が招いた人災だ!
「……七海……10万人の人々を……犠牲になんて……出来ない……」
そうだ、10万人だ。10万人の怨念・無念が集約し絶望のセカイが築かれる……。
神のセカイがあればきっと人々の無念・怨念を受け入れてくれただろう。
だが、このセカイには『神』など存在しない輪廻のセカイ。
私と七海、日花梨、愛芽の4人はこの絶望のセカイがどうしても救えない。
「花梨ちゃん……やっぱりダメかなかな……私……なんの役にもの立たない……『死神』だから……」
死の選択を業とする死神……。人の命を救う行動を繰り返す異常事態。
日花梨の精神は幾度も崩壊している。
10万の人々を救って自分を保てる訳がない。
日花梨は死神だ。
「花梨さん……私も……尽くしました。力及ばず……申し訳ございません」
当然だ。愛芽は調律し、弔う者……。死者に最高の敬意を示す存在。
人の命を救う行動を何度も繰り返して精神は崩壊寸前だ!
……もうダメだ……私たち……水槽楽部のメンバの精神が壊れる……!
たった4人で10万人の想いを紡ぎ救う事など。『神』にでもならなければ救う事など……。
――私たちは受け入れる事しか出来ないのか。
10万人が死ぬ『この時』を。
「……!」
「七海……もう一度だ……!もう一度、12月10日を……『災悪の時』に戻る!」
七海はセカイをゼロ除算する。
セカイを歪める……!禁忌を犯す……そして彼女たちは12月10日へと戻る……。
◇
……12月10日……東京スカイタワー特設会場……。
「それでは、全世界アクアリウムコンテスト!!優勝者の発表です!!」
私たちは、七海の希望でアクアリウムコンテストへ出場した。
……当然、私はコンテストへの参加はあまり好まなかった。
特に、『大人が本気で戦うコンテスト』だからだ。
そのコンテストに私は『中学2年』の時に参加した。
当然、自分の創り上げた『アクアリウム』に絶対的自信があった。
もちろん、優勝を目指した。
水景を創り上げるために『時間・金・技術』の全てを全力で注いだ。
――結果は――。
汚い大人共にドス黒い想いで踏みにじられた。
――だから、私はこのコンテストは嫌いだった。
きっと、今回も同じ結果になるだろう。
だから、私は七海を止めた。
だけど……七海となら、きっと……優勝できるんじゃないかと一片の想いを抱いてしまった。
結果……。
『災悪』を迎えることになった。
「花梨ちゃん!!いよいよ優勝者の発表!!」
七海は私の手を『ギュッと』握る!
私達、水槽楽部の優勝を願い。
最初は七海の言い出したことだが、今では水槽楽部全員の願いでもある。
私が師と仰ぐ『天野』さんの遺産の水槽の前で、私たちは最終結果を待っていた。
「優勝者の発表の前に、今年は『特別賞』を設けることになりました」
会場がざわめく……拍手で沸く会場。
4年前と同じだ……。
汚い!汚い!汚い!!!
やっぱりこの展開だ。
七海の作品が汚される……私たちが全力で創り上げたセカイがまた大人共によって汚される!だから嫌だったんだ……。七海に私と同じ思いをさせたくなかった。だから、私はコンテストへの参加を拒んだ。
「花梨ちゃん!!特別賞!去年は……なかった賞だよね!?それだけ今年の優勝作品は素晴らしいって事だよね!?」
そうだ、『私たちの水景が優勝』だ。誰が観ても私たちの水槽を観て感動してくれた。
私たちの作品は『ある意味チート作品』だからだ。
女子高生『5人』だけど、器用貧乏の七海、天才的センスの日花梨、安定性と知力の化け物の愛芽、そして私だ。
「うーん!!!私たち優勝しちゃうよん!」
日花梨は無駄にデカい脂肪の塊のメロンを二つ揺らしながらはしゃぎ出す!
「もちろんですよ、私たち東高校水槽楽部に向かうところ敵無しですよ」
愛芽も浮き足立つ。普段冷静に行動する愛芽もキモチが荒ぶる。
そう5人目の奈良は……。
コンテスト会場には来なかった。
彼女曰く……。
「結果は……解ってるし。大体、お姉様と花梨……まあいいわ。でも……」
奈良は4年前の私の結果を知っていた数少ない人物だ。
――だから彼女は参加しなかった。
誤解を招かないように付け加えるが、作品創りに協力は人一倍してくれた。
奈良の想いも詰まった5人で創った水槽だ!
「さあ!それでは特別賞の発表です!」
……。
……汚い……これが大人のやり方か……!また、私を……私の大切な仲間の想いを……!
「特別賞は、『東高校水槽楽部!!』です!!」





