第04話 初めての合成と属性付加
夕方に家に戻るはずのフィーナが鍛冶屋に訪れた。
「フィーナ……さんですか?今日からお世話になります!柊 シズクです」
シズクは今日からお世話になるフィーナに好印象を……爽やかな挨拶をした!
「あれ?お伺いしていたのって、ラストネームの方だったのですね。柊さん」
「あ!すみません、ファーストネームは『シズク』です。私の国では逆なのです……」
シズクは『御都合主義の記憶喪失』をピンと思い出した。
「名前とかは覚えているのですけど……」
「最近の事がイマイチ思い出せないんです……」
「いえいえ、西の国の方かなーっと思ってましたが……」
「この街では珍しいお顔立ちなので」
この異世界にも『日本風』の国が存在しているようだ。
シズクはまだ『ファバーダ・ストーリー』を第1章4節までしか読んでいない。
ざっくりした世界地図と種族までは確認できている。
「もしかしたら、お昼……まだですよね?」
フィーナは持って来たバスケットから美味しそうなサンドイッチを取り出した!
「是非、ご一緒に昼食をと一度家に戻ってきたのです」
『自分探し中の鍛冶士の娘』フィーナは仕事の昼休憩中にシズクの事訪ねてきた。
シズクは『本』能的に、『ほのぼの生活』展開の異世界パターンを願った。
――但し、『鍛冶士』だ!
「まだお昼なんですが……眠くて眠くて……」
「寝ている場合じゃないのですけどね……」
「ゆっくりで結構ですよ?もう長い間鍛冶屋も閉めたままだったので」
「正直、父が帰ってくるまで掃除して、いつでも使えるようにと思っていた位です」
「でも、街の皆さんは鍛冶士が不在で困っていらっしゃるのも心苦しくて……」
「行商の方に『高い調理器具』を買っている状況はなんとかしたいのですが……」
『美味しいお茶』と『サンドイッチ』を食べながら二人の会話が弾んでいった。
街の事も色々訪ねるた。
街には一通りの設備・施設はある。
電気・ガスなどはまだ無いようだ。
アルコールランプ・石炭・タイマツなど、『ドラゴ……ト』位の科学技術力だ。
大雑把な説明は『ファバーダ・ストーリー』を読めば何とかはなる。
しかし、『初めてのスローライフ!生活指南書』ではない。
シズクは仮に『鍛冶屋』として勤まらない場合の事も考えていた。
フィーナはシズクの生活が安定するまでの間の『食事と衣服』の提供を約束した。
もちろんシズクは快諾をした。
シズクは鍛冶士の事に関しても色々と聞くことが出来た。
『ギルド手帳』も手に入れることが出来た。
——『ギルド手帳』とは、冒険者が所持している『ギルド・ライセンス証』とは異なり、『冒険者』・『ギルド』との『素材』『ゴールド』の取引き帳になる。
――特に、『スフィア』の取引量は確実に記録する必要がある。
『スフィア』は大量に集めると、『村』を吹き飛ばす程度の事ができるエネルギー源となるためだ。また、武器・防具の合成時に利用をし、『属性付与』する時に使用する。ベテラン鍛冶士になると『武器』の製造も行うため、『スフィア』の取引も多くなる。
「フィーナさん色々と教えてもらって、ありがとうございます!」
「休憩時間なのにスミマセン……」
「いえいえ、それでは協会に戻りますので、何かあれば訪ねてくださいね」
フィーナは『協会』の用務員の仕事をしている。
協会には『孤児院』も併設されているため、雑務が多いがゆったりと働ける。
協会には『図書室』もあり、利用してもいいとの事だ。
フィーナが帰ったあとシズクは鍛冶屋の状態を確認することにした。
鍛冶全般をする為に必要な素材・部品、釜に使う石炭など確認した。
――道具や素材は一通りキレイに揃えられていた。
——鍛冶を行うには『全く問題ない』、問題は、シズクの技術だけだ!
フィーナの父は『几帳面』だったようだ。
武器・防具や生活雑貨の製造方法を丁寧に記録してくれていた。
――問題は、シズクの技術だけだ!!!!
「ま、まさかの設備が完璧に揃っているチートとか!……」
『金』以外の『銀』『銅』『鉄』などは、『インゴッド』と厚みの違う『鉄板』数種類あった。
試しに、当面の目標である『フライパン』の合成方法を調べることにした。
「ちゃっちゃちゃちゃーーん!合成クエスト開始!パラパラッパー!」
――シズクはセルフ効果音を奏でた!
ゴトン!ゴトン!……。
――『水車の回る音』だけが虚しく響き渡っていた。
家庭用雑貨・キッチン編『初級 フライパン』
……著者『アイアンマン=ヒューデリッヒ』
プレス機に注文のあった大きさの鉄板を乗せプレス……以下略。
在庫棚には『フライパン用ー0.2メール』と記載されていた。
棚から鉄板を取り出しプレス機に載せ……。
「で、出来てしまった……!」
「あらかじめ用意していた『円盤状』の鉄板をプレスするだけで出来た……けど」
シズクは道具と素材が揃っている工房なら、『フライパン自体は簡単に作成可能』であると判った。
「思ったより難しいかも……」
「今は『フライパン用の鉄板』の在庫がある程度あるけど」
「無くなったら製造できないよね?」
「……でも1から製造していると思えないんだけど……」
中間素材の製造が難しい事が判明した……!
あと、この工房で『鉄板を作る工程を行える機材』が無い事も気付いた。
ふと思ったのだが、初期段階の製鉄作業は工房では出来ないし、設備が無い。
「もしかして、中間素材の製造は商人から買っていたのかな?」
「インゴッドはあるから、武器とかは炉を使って作っているのかも」
シズクは取引の際に記帳する『ギルド手帳』の事を思い出した。
ギルド手帳には……。
取引を行った『素材』『量』『大きさ』等を記入できるように印刷されていた。
――ギルド手帳を全ページパラパラめくると……!
「あった!中間素材取引!……フライパンは……」
「取引商品に記載されていない……」
「この工房も、ある程度は中間素材に関しては仕入れていたのね」
「あと、『持ち手固定用金具』『カシメ金具』『ネジ』など一通りある!」
無骨な出来栄えではあるが、『フライパン』の製造を1日目で確立出来た。
「よーし!明日からも何とかなる!」
1枚のフライパンを作成出来たことに喜んでいたら、フィーナが工房へ訪ねてきた。
「シズクさん、どうですか?」
「あ!フィーナさん!フライパンできましたよ!」
「ふむふむ……売り物にはなりませんが……次からはもっと上手に出来ますよ!」
――仕上がりが不合格だった!
「やっぱりダメですか……1つめなのでチョット歪なの出来ちゃいましたね……」
「いえいえ、形とか持ち手が悪いって訳じゃないですよ?」
「フライパンに『火属性』を付与しないと」
「これはフライパンの形の鉄板ですね」
「これでは目玉焼きが焼けますけど、火にかけても熱が伝わり難いです……」
「フライパンは『火属性』付与しないと……美味しい料理が完成しませんね」
シズクが異世界っぽい事が出来る事がついに!来た!?
「あのう、『火属性』を付与……って、どうやって……するのですか?」
「あ!もしかして!鍛冶職人の『スフィアブローチ』を持ってないですよね?」
「シズクさんは鍛冶士としてご加護を協会で受けても……ないですね」
「ブローチのレベルは低いですけど、私のブローチお貸しします」
「私って……鍛冶職人の娘なのに適正が『0』なんですよ……」
「お手伝いとか仕入れは、お父さんの補佐していたので出来ますが……」
「練成と『属性付与』が出来ないのです」
「鍛冶士として重要なのは、『属性付与』なのですよ」
「ベースの武器とかは『アシスタント』が中心になって『鍛冶士』さんの理想に近づけるお手伝いするのです」
「シズクさんは先ずは『再付与』をマスターすることから始める事をオススメします」
「いずれアシスタントが付いて、理想の武器とか道具の製造したり」
「……まあ、私の父のように自分で理想の一品を製造したりとかになります」
――シズクは『製造』より『属性付与』を先にマスターするべきだとフィーナから教わった。
≪プロット帳:『属性付与のマスター』が初心者脱出の鍵を記載した!≫
≪プロット帳:『ギルド帳』の心得を記載した!≫
「鍛冶職人の加護って……私も受けることが出来るのですか?」
「もちろん!できますよ!でも、もう夕方ですので、明日になりますけど」
「今日のところは夕食にしましょう!」
今夜はフィーナの家でお世話になる事になった。
この世界の事も大事だが、まずはこの街に慣れることを目指して……。