第03話 水車小屋と鍛冶場
シズクとギルド長の『ミッキー』は、ギルドから少し歩いた所にある橋を渡り、川沿いにある水車小屋を目指した。
水車小屋までの途中の通りには、この街にも……。
『PUB』……ハンターや街の住人が集う大人の交流場<酒場>。
『宿屋』……宿屋ラパン。この町唯一の宿屋兼レストラン。
『協会』……???、セーブや蘇生が出来るのか?
……など、よくある街の施設の案内を受けた。
――初期装備で辿り着けない第2の街程度だ。
付け加えると、『港町』である。
――Lv10位で訪れる街並みだ。
そして……とても静かすぎる街だった。
流れる川の音と小動物や鳥のさえずりが聞こえるだけだった。
街の住人とは出会わなかった。
シズクは『モブキャラ鍛冶屋の店主』として1ヶ月間は生活出来ることになった……か?
「嬢ちゃん、まあ、一ヶ月の間でフライパンとか家財道具位は錬成出来る位は上達しておいてくれよ」
「素材類はギルドに納められる物を自由に使ってもらってもいい」
「しかし、『スフィア』だけは提供できないからな」
――スフィアとは。
≪『生命力の結晶体』FS・素材解説編より≫
「ありがとうございます」
「材料さえあれば……何とかしてみます!」
FSの最大の欠陥は『錬成』や『スキル』『属性』の説明はあるが、『使用例』が載っていない。
合成に必要とされる材料名とイラストは記載しているが……。
スフィアを使用して『ドーン!と合成結果星3つ!』の方法が記載されていない。料理本で材料は載ってはいるが、大さじ3杯入れろ!など記載されていない。
「あのう……フライパンの合成の方法ってどうするのですか?」
――シズクは馬鹿正直になってミッキーに尋ねた。
「フライパンか……鉄板を曲げたりハンマーで叩くんじゃないか?」
「鍛冶場に『ある程度のマニュアル』は置いていた気がするぞ」
——シズクは鉄板を叩いて作成しなければならない事実を知った。
同時に、鍛冶屋を1ヶ月で追い出されない為にも、フライパンと鍋位は作成する技術をマスターする事が目標となった。
「着いたぞ!ここが鍛冶屋だ!」
――シズク達は、大きな水車がある鍛冶屋に到着した。
外観は意外とオシャレな風格だ。
鍛冶屋らしく鉄を加工する『溶鉱炉』もあるようだ!
事前に聞いていたとおり、水車小屋に鍛冶場が合体していた。
「前の店主さんが『自分探しの旅』に聞いてましたが……」
「意外とキレイに保存されていますね?」
「そうだな、ここは作業場としては2年以上使用してない」
「だがな、手入れは小まめにしてある」
「鍛冶士の娘『フィーナ』がメンテナンスしてくれている」
「フィーナからも『鍛冶士』の求人が出されていてね……」
「思うことがあれば、真向かいのフィーナの家を訪ねるといい」
「フィーナは鍛冶士としての能力は全くダメだが……」
「鍛冶士の娘としてサポートは小さい頃からしていた」
「鍛冶職人としてやっていけるまでに『成長』してくれたらありがたいが、まあ……何でもいいから『この場所を使って稼げる位』にはなってくれ」
「出来れば『フライパン』は作ってもらいたいがな……」
「2年も鍛冶屋が閉店状態では『朝食の目玉焼き』すら焼けない家が出てくる危機だ!行商にフライパン持って来てくれとか注文するとか大恥だからな!!」
「最悪、調理器具の『再付与』さえやってくれれば街としてとても助かる。……まあ……港町のくせに『鍛冶士不在』とか港町として成立すらしていないからな」
……ミッキー曰く。
街の鍛冶屋は2年放置されている。何とか使って欲しい。
営業さえしてくれれば、街の為に貢献になる。
――だが、現在は放置状態だ。
≪プロット帳≫
――『フィーナは鍛冶士の娘』を記載した!
――『まずはフライパン作成?』を記載した!
――『意外とオシャレな鍛冶場』を記載した!
……そして重要な事がもう一つ。
――『再付与』が最低限出来ればいいとのこと。
シズクは『鍛冶屋』は難しいと思っていたが、予想よりはハードルが下がった事に安堵した。あと、『フライパン』を作らないと、『朝食の目玉焼きクライシス』が発生する!
「わかりました!では、この工房お借りします!……1ヶ月以内に……フライパンですね!」
「そして、最低でも再付与……?ができればいいのですね!」
「ああ、そうだ!特に『再付与』は重要だ!やり方は判らん。フィーナに詳しく聞いてくれ」
≪ミッション:朝食クライシス!?をミッキーから受けた!≫
報酬:再付与手数料100%
≪クエスト:工房の営業開始!と同時に完了した!≫
準備金:『200ゴールド』、『ギルド貯蔵素材自由に利用可』をシズクは獲得した!
『住』と『職』は何とかなった……が、今日の目標として『食』と『衣』も何とかする必要があったが……。
ミッキーの計らいで、フィーナが世話してくれるようになった。
フィーナは仕事で留守にしていることだが……。
夕方には向の家に帰るとのことだ。
シズクはこれから世話になる工房の掃除を始めることにした。
しばらくすると『お昼を知らせる鐘の音』が鳴った。
『時間』感覚がようやく掴めたタイミングでもあった。
――転生される前は、放課後だった。
シズクは時差ボケらしき状態でもあった。
空腹よりも『安心した事による眠気』が増してきた。
――シズクは工房のソファーに座るとシズクは寝落ちした。
ウツラウツラとソファーで寝落ちしていると、ドアに取り付けている『鈴の音』が工房に来客が来た事を知らせた。
シズクは鈴の音に気づき、目を開けると……。
――『年が近そうな女性』がバスケットを持って立っていた。
「あら、起こしてしまいましたね?シズクさん」
白銀でロングヘアーの髪が特徴的な……。
――『ヒューマンタイプ』の女の子だ。
人種に関しては、『FS』に『ヒューマン』『エルフ』『ドワーフ』……以下略が存在、この世界の人口の半数は『ヒューマンタイプ』が占める……。
――っと記載されていた。
「……あ、あの、何方ですか?」
彼女が『鍛冶士の娘』だとほぼ確信していた。
シズクは『美人で優しそうな彼女』を見て、心から安心した。
「ミッキーさんからお話を聞いて来ました」
「一応ですが、ここの大家になります『フィーナ』です」
これからお世話になる『フィーナ』との日々がスタートした……。