アローナ防衛戦 第07話 謎の少女と鍛冶士
雑多に埋もれるアイスシルバーの美少女(仮)の、仮と表現したのは、このセカイに来てマトモな連中がフィーナさん以外に未だ出会っていない気がしたからだ!という前提を置いておく。
美少女(仮)をテラス席から眺めていると私と美少女(仮)と目と目があう!
『……あら、意外と簡単に目的の鍛冶士さん見つけたのかしら?』
噴水広場からさほど距離も離れていないせいか、彼女の独り言が聞き取れた。
クロスバイク風の自転車をスーーッと走らせテラス席まで彼女は寄ってきた。
『お嬢さん、どうしたん?話をお聞きしましょうか?』
完全に『ソーセージ騎士団』の男性だ!
道の駅とかでソロの女性ライダーにお話をそっと聞こうとする、あわよくば夜のライディングモードまで持っていこうとする悪しき文化だ!
文化と言って良いのですか?
「いえ……今、忙しいのであっち行って下さい!丁度あそこにハンターギルドがございますので、そちらで『ミッキー』という仕事と街の情報を提供していただけますよ?」
『本』能的にこの女の子はヤバい!と感じ取った!
『あら、そうですか?残念ですわね。私は、このアローナを焼き払われるのを指を咥えて見ていれば良いのかしら?折角、助けになろうと思い、遠路はるばる「日本国・ネオサイタマからオオグンタマの貴重な産卵シーン」を観るために千葉・滋賀・ロマンシング佐賀から来たというのに……』
おい!よりにもよってVIPから来たぞ!
「あ、ありえない……事無いな……ありえそう!!」
私が本なら彼女(前世?転生前?は男)はネットの廃人からの転生とかありえそうだ!
『あら?あらあら?私は、身も心も女性ですわよ!ご心配なさらず』
『あと私は、転生前から絶世の美少女1億年に一人と言われた程の美少女でしたが、どうやらその美少女故に、嫉妬の海の雨嵐に襲われ殺されてしまい現在に至る有り様ですわ』
さすが……VIPPERから来ただけある。三行で説明した!!
見た目を大きく裏切る内面が滲み出す美少女だ……!
この美少女は相当やばいぞ!
「それで、その一億年に一人の美少女様は、この帝国より果にある、今や帝国に蹂躙される一歩手な小さな港待ちに何の御用ですか?」
とりあえず、村人Aに徹することにした……!
『あれ?あれれ?私の想い違いです?貴方は、「アローナの鍛冶士さん」ではないのですか?』
何故わかる!?
『胸のバッチはただの飾りですの?その飾りは「鍛冶士が錬成に使う為の法具」ではなくて?』
鋭い!!なんだこの美少女!?
最近の反帝国のレジスタンスになりつつあるアローナで軍拡を大忙しで行ってる最中に、ノンビリと宿屋ラパンでクリスと駄弁っていた。
『あらあら?あと、お隣の可愛いお嬢さんは「旧王国のレイバンㇳ家のクリスティーナ・レイバンㇳ公」ではなくて?』
『他人のそら似だ!そのような貴族とは関係ない』
『そうでしょうか?私は「一度会った事ある好みの美少女」は脳内SSDに書き込みますので絶対にお忘れにならないわよ?』
想像を絶するヤバい美少女であることが再確認できた。
これはやばい、早くなんとかしないと!手遅れになるぞ!
どう切り替えて話をしようと上手くあしらわれてドツボにハマりそうだが。
「それで、クルーズ船から来た美少女さんは何用でしょうか?用があるならハンターギルドにどうぞ」
『私は、そもそもですが「ハンター」ではありませんの』
異世界転生おじさんが、ハンターで無いわけがあろうか!
99%ハンターだ!ラッキースケベとおなごを5人は囲っているぞ!
もしくは、女主人公なら悪役令嬢モノだ!
例外がここに居るじゃない!それは私です!
鍛冶士でゆるふわ生活を送れるどころか、スフィアの回収やレリクスの再付与から武器防具、フライパンの錬成までとオシゴト満載です。
さらに、今やレジスタンスになりつつある。
「何処から来られたか存じ上げませんが、今、今、今!『帝国に領土を蹂躙される3秒前』みたいな状態なので、何処から来たか判らない人の相手をしている暇などないのです」
「クルーズ船に乗って他の生配信へ行ってもらえませんか?」
『あら、その帝国から私は来たのですが?』
なんだ!バリバリの敵襲来『四天王最弱の一人』イベントです!
――敵は一人、例え四天王幹部の一人だとしても!
私は、デザートイーグルをドローした!!