アローナ防衛戦 第04話 帝国勅令
残された時間は1ヶ月のうち、既に2日使ってしまった。
帝国からは、さぞ立派な私を閉じ込める檻をこさえてお迎えになるだろう。
端からフライパン10000枚納品させて万事丸く収める気は帝国にはない。
帝国の皇帝は私の体が目的であることは、明白になっていた。
――時を遡ること2週間前のある日。
◇
『勅令!!!アローナの元首、シズク・アローナは心して聞け!』
アローナの噴水にいきなり乗り込んできたと思ったら、ただの兵隊に呼びつけられて、少しイラッとした。
――シズクは強硬派であることは、アローナの住人には知れ渡っている。
アローナの住人たちは、そそくさと噴水から逃げ出す!!
避難が完了したと同時くらいに、約1kmは離れているであろう鍛冶士のアトリエから、ニョキニョキっと、一人の女子高生風……実際に現役女子高生だった……死亡により神となった関係で若干ややこしい……女子が2階の窓から何かを構えてる!
――ズギャ~ン!
彼女は、凄まじい火力のMAP兵器を放った!!!
少しだけ噴水をかすめてしまった!!
『コラッ!!!シズク姉ぇ!!噴水がちょっと欠けたぞ!!!』
宿屋ラパンから暗黒騎士のバニラ♂が咆哮をあげた!
――シズクは、勅令役の謎の兵隊を焼き払った!!?
っと思ったが、どうやら帝国の勅令を持つ者は別にいたようだ……!
「ちっ……!やりそこねた?」
『てか、シズク姉ぇ!!、帝国からの使いっぽいやつを何も聞かずいきなり焼き払うのはやーばいぞ!!』
――ドッ!ドッ!ドッ!ドッ!!
シズクはミアスに跨り、勅令を持っているであろう、『綺羅びやかなシルクの高級そうな胡散臭い下品極まりない格好をした、いかのにも夜な夜な村から誘拐してきた女子を舐め回していそうな』絵に描いたような勅令役の元に来た。
「よし、射殺しよう。うちの村の若い~おなごを~守るべ!!」
シズクは容赦なくデザート・イーグル改からぶっ放す気満々だ!
『まてまてまてまて!皇帝陛下からの勅令であるぞ!!心して聞け!!』
綺羅びやかなシルクの高級そうな胡散臭い下品極まりない格好をした男は、何やらこれまた『綺羅びやかな胡散臭さそうなやたら金糸で織り込んだ、お仏壇に飾っていそうなそれはそれはありがたそうな巻物』を懐から出した!
っと、同時に。
――ズギャ~ン!
――『綺羅びやかな……以下略』を射殺した!
『し、シズク姉ぇ……容赦ないな……ありがたそうな巻物以外の胴体全部吹き飛ばしやがった!?』
巻物を握る腕以外を綺麗さっぱりにふっ飛ばした!
『か、可愛い顔しておっかねぇ……』
「必要なのは、このさもありがた迷惑そうな巻物だけでしょ」
「アポ取って来訪しない時点で有象無象と変わらない。例え帝国の皇帝でもぶっ放すわ」
とてもとても好戦的な領主だ!
その勅令の巻物には。
・フライパンを69日以内に10000個用意しろ
・※発行日◯☓△日
・備考:蓋も付けろ
「ふーむ……発行日換算だ既に二週間経過していることになる」
「あと、69日1万個かもうどう考えても私をハーレム行き決定みたいな隠語になっている……」
◇
「うーん……どうも引っかかる……なんで69日?」
『そりゃーアレでしょ!万国共通の数字だからね!』
そのようなことは判っていますミッキー。
――カーン!
フライパンでミッキーは頭をクリスに強打された!
『ふん……さすが、シズクさんが創ったフライパン。固いわね。ミッキーの頭殴っても変形すらしない』
……貴重な戦士は一人旅だった!!
『まあ、皇帝自体、謁見したことある人が、フィーナさんのお父様一人しかしらないし、その後行方不明になっているのも不思議なのよ』
『ああ、確かに。それは不思議だ。かの英雄王であるフィーナの父が帝国如きにやられるとは考えられない。建前上死んだとか失踪したとかになっているが、あり得ない話でもある』
今回のように帝国との戦争になりかけた時、フィーナの父が犠牲になった。
そこまではほぼかくていしているのだが、簡単に倒れるようなやわな御仁でもないらしい。街の住人は『どこほっつき歩いてんだ!』とまで言われる始末。そのレベルのバゲもの級の戦士兼鍛冶士らしい。
『鍛冶士=神に近しき存在』
であるからこそ、人である軍勢に堕ちることも考えられないという理屈だ。
帝国の皇帝は今なら捕まえて手籠めに出来るチャンスだと高を括って攻め込んできているようだ。
ただ、フィーナの父を亡き者にしたほどの実力があるならば、わざわざ勅令を出し、錬成不可能枚数であろうフライパン10000個作らせるようなまどろっこしい事をして、街の住人を人質に取るような事までする必要性がない。
「すぐに、略奪に来ればいいのに?わざわざ相手に準備期間を与えるような回りくどい方法を何故皇帝は取ったのか?と69日と10000個の隠語まで……」
「私を、無傷で、欲しいんだ……と思った」