第104話 ぽんぽこ日和⑨寿 奈良
『古民家レストラン ハッピーエンド』を出て、シズク達はチズミ達の
『土の神一派』の本拠地のある『交通科学博物館公園』へ移動した。
隣にお馴染みの『免許センター』が併設されいた。
東高校からも目と鼻の間にある為、お馴染みの施設ではある……。
「……ふむ。まさか、公僕の巣が裏世界では土の神一派の根城になっているとは」
まさかの警察組織の建物が異世界で大変な事態になっている。
魔改造を重ねて地下108階まで存在する建物というより地下迷宮だ。
チズミ曰く、裏話になるが……そもそも、異世界で裏話となるとシズク達のいる世界での話になるというややこしい設定が存在する。
その、シズク達のいる世界での転移前の交通センターで、東高校の生徒が一発免許の受験をして、トンデモナイ、テクニックを見せつけて1発合格したらしい。
……しかも2名同時に。
1人は小学生に間違われる程の小柄な『金髪英国風JK』で、もう1人は『変なしゃべり方をする巨乳美少女』だったらしい。
っと、チズミが言っていた。
さらに、その2年後、大型免許の試験も一発合格したらしい……。
担当した交通センターの人たちは口をそろえてこう言ったらしい。
「あのヤベー2人組、絶対無免許運転で転がしていただろ!!」
……っと。
「……ふむ、懐かしいな。センターの教官共め……無免許運転でテクを磨いて飛び込んだなどという因縁をつけおったな」
――その2人とは、やはり、花梨と日花梨のようだ……!
とにかく、素行が悪い水槽楽部メンバーである。
厄介な事に水槽楽部メンバーは生徒会メンバーでもあるというヤバい高校である。
当然、免許の試験官は当然、ポリスメンである!
警察組織と一戦交わりかけた女子高生である。
付け加えると、世の中意外と狭いことを水槽楽部メンバーは自覚するべきだ。
免許センターを横目に併設されている交通科学博物館公園へと足を向けると見覚えのある制服を着る女子高生が『金魚鉢』を持って入っていくのを見かけた。
彼女を追いかけるようにチズミは彼女に近寄り肩を叩いて挨拶をする。
「奈良さん!こっち側<ファバーダ側>に来てたのね!」
どうやら転移が可能な人物の1人らしいが……。
「あら、チズミさん。ごきげんよう」
誠実・勤勉さがにじみ出るなかなかな文学少女っぽさ溢れる女子だ!
「な!!!!なんで!!水槽楽部の花梨さんがいるのよ!!」
「なんて疫病神!!反社の申し子!」
花梨は冷静に言い返す。
「……ふむ、公僕の犬め!」
――冷静に貶した!
「って!シズクさん!?なんで!?ここにいるの!」
「水槽楽部メンバーなら、異世界どころかセカイの真理に触れて、セカイを数回程滅ぼしてそうだけど……シズクさんは、東高校のエースよ!」
「害悪でしかない、外来魚を川に放流する程の蛮行をする水槽楽部……と!」
奈良的には、『シズクはいい人』で『花梨はアウトロー』らしい。
「……ふむ、水槽楽部の本部長として……いや……頭目として外来種を川に放流など絶対にするわけ無いぞ!ぶった切るぞ!!」
花梨はこの物語で最大級の怒りを見せた!!
当然、アクアリウムを愛する花梨に対しての最大級の冒涜をした奈良も悪いと思われるが。
「どうぞ、その鈍刀で私たちをコッチのセカイで斬れるとでも思ってるのかしら?斬れないから、ここにチズミさんと来たんじゃない?」
まさにドストライク!だった。
「……ふむ、ここはシズクに任せる」
あっさりと花梨は退いた。
「それで?チズミさん。花梨さんはどーでもいいとして、シズクさんがここに居るってことは、『神殺しの裁定』の件?」
感が良すぎる。まるで……。
「どうして、ワタシガ?『神殺し』ナノデスか?」
シズクは心当たりがアリまくりではあるが、すっとぼける。
「ここ、異世界とはいえ、警察組織の建物よ?このセカイの観測所でもあるし。土の神一派の索敵能力は神をも超越しているわ」
「あと、転移者全員マイナカードを持っていて位置情報を常時取得しているわ」
――異世界にはプライバシー保護はなかった!
「まあ、位置情報を観測しておかないと時間とループ状態が観測できなくて記憶が曖昧になるからだけど。ここの住民はある意味全員が転移者でもあるから」
「っと、言うより、貴方の事はずっと観測していたから。『アルハンブラ』のナキサワメとは親戚にあたるのよ……私は」
「まあ、ナキと違って私は『人間』だけど」
まさかの今やアローナのナキペディア……もとい……沢村ナキと知り合いだった!
「よりにもよって、カグツチの所の『ロケット部』にカチコミ入れるとか……」
呆れた表情を見せた奈良に対して、チズミが話を割るように強引
に入ってきた!
「ああ!その事なんですけど、『土の神一派』はシズクさま達と共闘することになりましたので!」
奈良は手に持っていった『金魚鉢』を落としかける……!
「って!危うく『一級品の出来上がりの金魚鉢』落としかけたじゃない!」
――その反応を見た花梨が動揺する!!
「……シズク!これは一大事だ!!金魚のことだと全世界を滅ぼしかねない奈良が金魚鉢を落としかけたぞ!」
――そんなことで!!!!!
「……私の記憶では、災悪の時ですら金魚の心配をしていた奈良だぞ!相当ヤバい状態だと認識した!」
世界が滅ぶより金魚を優先したちょっとヤバい女子だった!
その奈良が金魚鉢を落としかけた。
金魚鉢が落とす=隕石落下クラスの事態らしい。
奈良とチズミの案内で開発室へと進んでいった。